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身近な人がうつになったときの対応?

みなさんこんにちは。白目みさえです。
公認心理師/臨床心理士として精神科で働きながら漫画家としても活動しております。
漫画家としての活動はこちらからご覧くださいませ。

私は今Twitterにて白目相談室を開設しております。

こんな感じで140字以内でゆるっと答えられるものがメインですので、ガチの質問はお答えしていなかったのですが。

「身近な人がうつになったときの対応」についてご質問をたくさんいただきました。

140字じゃ無理やて。

と思いましたので、こちらで回答させていただこうと思います。


ちなみに相談はこちらからどうぞ。

質問箱


身近な人がうつになった場合どうしたらいいですか?

大変申し訳ないのですが、ググってくださったらたくさん出て参ります。

それこそこんなところで白目に聞くよりも有益かつコンパクトでわかりやすい情報が巷には溢れています。

むしろなんで白目に聞こうと思ったん?って感じです。

白目やで?一応心理士やけど…白目やで?

みなさんがこんな白目に期待してくださったところ申し訳ないんですけど
「こうしたら一発よ!」みたいな助言は持ち合わせておりません。

ってゆーか考えたらわかるやん。白目やで?(何回言うねん)

でもそれでも一応白目に期待してくださったわけですからお答えさせていただこうと思います。

うつ病の定義

まずうつ病の定義です。

いやいやそんなんええから助言くれって思うかもしれんけど。
伏線張ってなかったら回収もなんもないやんか。
まずはプロローグやからきちんと読んでください。

いわゆる「うつ病」は気分障害のひとつで、DSM(精神障害の診断・統計マニュアル)-Ⅴの中には「抑うつ障害群」というカテゴリの中に入っています。

今回は「うつ病(大うつ病性障害)」を紹介しておきますね。

うつ病(大うつ病性障害)の診断基準(DSM-5)
以下のA~Cをすべて満たす必要がある。
A: 以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起している; これらの症状のうち少なくとも1つは、1 抑うつ気分または 2 興味または喜びの喪失である。 注: 明らかに身体疾患による症状は含まない。

1. その人自身の明言 (例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察 (例えば、涙を流しているように見える) によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。注: 小児や青年ではいらいらした気分もありうる。
2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退 (その人の言明、または観察によって示される)。
3. 食事療法中ではない著しい体重減少、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月に5%以上の体重変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。 (注: 小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ)
4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。
5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 (ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではなく、他者によって観察可能なもの)。
6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。
7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感 (妄想的であることもある) がほとんど毎日存在(単に自分をとがめる気持ちや、病気になったことに対する罪の意識ではない)。
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日存在 (その人自身の言明、あるいは他者による観察による)。
9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はない反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。
B: 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
C: エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない。
精神疾患の診断・統計のマニュアル アメリカ精神医学会 Washington,D. C.,2013(訳:日本精神神経学会)

という風に細かく決まっています。
皆様のイメージだともしかしたら「元気ない」=「うつ病」みたいな感じかもしれませんが、実際には他の症状もいくつか見られていないと「うつ病」と診断されることはありません。

特にAの基準は1か2が必ず入った上で、5つの症状が2週間見られた場合に満たしたことになります。

BはさらにAによって何か問題が起きている場合。
つまりAは満たしていても困ってなければうつ病ではないということになります。

そしてC。その症状が変な薬飲んでるとか、別の病気のせいとかじゃないよってことです。

という3つの条件を満たした時に初めて「うつ病」と診断されます。

なぜこんなに条件があるのかというと、「うつ病」は病気だからです。

「熱がある」だけではなんの病気なのかが特定できないように。

「元気がない」だけでは「うつ病」かどうかはわからないのです。

「うつ病」の人に現れやすい症状がちゃんと揃っているかどうか確認して初めて「うつ病」と診断されます。

対策1「知ってください」

なぜこんなことをグダグダ話しているのかというと。

まずうつ病は「病気」であるということを理解していただきたいからです。

「うん。わかってるよ」と思うかもしれませんが。


例えば「糖尿病」と診断された人がいて。

何も知らなければ「そっか。糖尿病なんだ。なんかよくわかんないけど甘いもん食べちゃダメなんでしょ?」って言いながら普通にカップ麺とか渡すかもしれません。いやあかんねんで。カップ麺もあかんから。

もし身近な人が糖尿病になって、その人を支えたいと思うのであれば。

糖尿病というのはどんな病気で、何が起こると危険で、どういう対応が良しとされていて、なにがNGかを知らないと、何も対応できませんよね。


そこで「身近な人がうつ病になったらどうしたらいい?」という問いへの答えです。

とにかく調べまくってください。

どのサイトにも大体同じような対応策書いてます。

「頑張ってって言っちゃいけないんでしょ☆」みたいな断片的な情報じゃなくて。

「なぜ頑張ってがいけないのか」まできちんとご理解ください。

そうすると「頑張って」と言っていいい場面があることや、「絶対に言わない方が良い場面」が必ず見えてきます。

今「うつ病」の人の体の中には何が起こっていて。
治療にはどういう意味があって。
なぜ今この人はこうなっているんだろう…ということを。

とにかく調べてみてください。

人は「わからない」ととにかく不安になります。
そして表面的な対応だけ知っていても、それだけでは対応できない場面が必ず出てきます。

だからこそ「うつ病とはなにか」ということをとにかく知ってください。
うつ病は病気です。
でも未知の病原体によるものではありません。
ある程度治療法や原因も特定されつつあります。

「知らない」は一番危険です。ただただ不安ばかりが募ります。
白目に「どうしたらいい?」と聞いてくれたのも本当にありがとうございます。
でも白目が言えるようなことは調べたら出てきますので。
とにかく「知ってください」


対策2「専門家と協力して」

たとえば「熱が三日下がらなかったら」とか「顔色が紫色になったら」とか「危険な兆候」ってありますよね。

「うつ」にも危険な兆候はあります。

一般的には落ち込みきって動けない時よりも、「自殺」するだけのエネルギーが出てきた時こそ危ないなんて言われています。

そこで病院には出来るだけ付き添って、危険の兆候や対応策を聞いてください。
「どうしたらいいですか?」という質問は正直広すぎます。
うつ病の症状や段階は人によって違いますし、一言で言えるものではありません。

「どういう兆候が見えたらすぐに病院に連絡したらいいですか?」
「こういう発言が増えてきた気がしますがこういう返しで良いですか?」
「寝てばかりいますが、逆に何時間以上になると気をつけることとかありますか?」
など、普段の様子を観察して出来るだけ具体的な質問をまとめて診察に訪れてください。


支えるご家族や身内の方が大変なことは私も理解しています。
それでもどうしてこんなにたくさんタスクを課すかと言うと。

「冷静な目」を持って欲しいのです。

人でなしのような言い方になりますが。

目の前の「うつ病の方」の「データを集める」くらいの感覚で接するのが実はちょうどいい心の距離なのです。

つらい気持ちを考える、共感する、うつ病の方の行動に逐一不安になる、自分が支えなければと思う、原因を探す、腫れ物に触るように気を遣って生活をする。

それはとてもとても苦しい作業です。

だからこそ傍にいる方には「観察」に徹して欲しいのです。
(ただ見てるだけってのは違いますよ)

心理士だからこそ言えますが。
ちょっとした言葉かけや気分転換をさせたことで劇的に改善することはまあありません。
そんなことができるのだと思っているのだとしたらハッキリ言って「おこがましい」です。

でも逆に「ちょっとした一言」が状態を悪くすることはあります。
そこは慎重になる必要があるのですが、実はこういう「その時その人が望んでいない一言」というのは、「何かしてあげなきゃ」と思った時にこそ出てしまいやすいのです。

良かれと思って言ったのに応じてくれなかった…
あなたのためを思って言ったのに…
などなど。

「相手のために何か」と思うからこそ出た言葉が傷つけてしまうなんてこんなにつらいことはありませんよね。

自分が何かしなければという思いは、裏を返せば「自分にはなにかできる」と思っているという意味でもあります。
大切な人だからこそ気負ってしまう、頑張りすぎてしまう、それはとても素敵なことです。

でもそうじゃないんです。
大それたことはしなくてもいい。
身近にいるからこそできることだけをやってくださればそれでいいんです。

そのひとつが「観察」です。

無理に元気付けようとか、眠り方をコントロールしなければとか、仕事の復帰時期を考えなければとか、そういうことは医師や専門家と一緒にやってくださればいいのです。
傍にいて「観察」して「報告」することは身近にいる人でないとできないのです。

正直なところ、心理士としで「なにかができる」という思いは年々薄れてきています。
最終的にはご家族だったり、環境だったり、転機だったり、時間だったり、そういうものでみなさん回復していかれます。
もちろん患者様自身のお力でもあります。

「身近な人にどう接したらいいのか」

そう相談くださる方は本当に優しい方なんだと思います。
きっとあなたのお力が目の前のうつの方を救ってくれるだろうという思いも抱きます。

でもだからこそ「あなたが心を病まないように」して欲しいのです。

頑張ったことが報われないと人は傷つきます。
なんとかしてあげたいと思いながら自分の気持ちを飲み込み続けているとだんだんと苦しくなります。
変化がない毎日に耐えることは並大抵のことではありません。

でも本当に。
医療従事者として実感していますが。
傍にいてくれる人が存在するだけで本当に十分なのです。

それはきっとうつの方の支えになっていると思います。

一番大切なことは

そしてこれが一番大切なことです。


ご自分も「しんどいな」と思ったら。
必ずご相談ください。

共倒れにはならないでください。
気負いすぎないでください。
自分だけが支えなければと思わないでください。

「どう対応したらいいですか?」というご質問の裏には「わからなくて不安」だけではなく「正直疲れている」というお気持ちもあるのではないかと思っています。

結婚して障害を共にしようと誓った方でも、対応に疲弊してお別れすることはあります。
でも私はそれを「冷たい決断だ」とは思いません。
間近でこれまで見てきたからこそそう思うのです。
共倒れになるよりもよっぽど冷静な決断だったと思います。

それほどうつ病の方の治療は容易なことではありません。
根気と時間が必要です。
ひとりの人間が無条件に支えられるものではないのです。
「自分ならできる」とご自分の力量を見誤ることの方がよっぽど怖いと思います。

今回寄せられた質問の中には「彼氏」や「彼女」というご相談もありました。
「別れなさい」と助言するつもりはありません。

ただ、一生支えていく覚悟があっても心が折れる人がいるほどの大変な道が待っているということは一度考えてみてください。

自分がどこまでできるのか、どれだけの人に助けてもらえそうか、よくよく考えた上で、「うつ病」についてお調べいただければと思います。

お役に立てましたらこちらよりサポートいただければ、白目をむいて喜びます♡