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#32 上海で桜を愛でる日曜日

日曜日、わたしの会社の唯一の社員であるリンさんと上海市内の公園に桜を見に行った。
リンさんは1968年生まれの日本語が話せる上海人のおじさんである。

リンさんは非常に優秀で、なんならわたしの蘇州編集時代のオフィスのトップだったのだが、彼には「満員電車に乗りたくない」という深刻な持病があるのだ。

そして、いろいろな会社から声をかけられて管理職に就いては、結局「満員電車に乗りたくない」と言って仕事を辞めてしまうのである。

結果、「普段は何しててもいいよ」という、自分にも人にも甘いわたしの会社の雑務を手伝いながら、白タクの運転手をしている。

殺人的に混む朝の上海でブレーキを小まめに踏みながら運転をする根気と、満員電車で吊り革につかまって三十分我慢することにどういった違いがあるのかわたしには分からないのだが、本人なりの不快感の尺度というのがあるのだろう。

上海・桂江公園
桜の種類も豊富

リンさん「白丸さん、上海の市の花は白玉蘭(バイユーラン)です。知ってますか?」
わたし「うん、ハクモクレンね。綺麗だよね」
リンさん「ハクモクランは、一本でも見応えがありますが、桜はそうではありません。桜はこうして集合でいないといけないのです」
わたし「モク、レンね。うん、そうなのかな…(六義園のしだれ桜とか一本でもきれいだけど)」
リンさん「ハクラクモン…は、それだけで華やか、派手なのです。だから、中国人はハクレンモクを好むんです」
わたし「(いや、わたしも、もはや何が正解か分からなくなったぞ…)」

その、ハクなんとか…は、街で見かけると確かにハッとする美しさなので、リンさんが言わんとしていることは分からなくもない。

花曇の日曜日

ここ数日、30度近い日が続いた上海では、桜は開花のピークを過ぎている。
この様子だと、今週中には完全に見頃を終えそうだ。
出不精のわたしを引っ張り出して、年に一度の桜を上海の地で拝めさせてくれたリンさんには、「ありがとう」である。

上海の春は短い

中国ではチューリップも人気

上海は緯度的には日本の鹿児島くらいで、気候は東京とほぼ同じと言われているが、東京と比べると、春と秋が短い。
あっという間に「あつっ!」となって、今度は「さむっ!」となる。
ゆえに、春服と秋服の出番がほとんどない。

ちなみに、春と秋が短いのは、わたしの個人的感想ではなく、公にも証明されている。

日本の気象庁は四季を春3-5月、夏6-8月、秋9-11月、冬12-2月で分けていて、中国にも同様の四季区分があるが、それ以外に「候温划分法(5日毎の平均温度区分法)」というのがあるのだ。

この区分法では、日照時間ではなく気温が基準になっていて、5日間の平均温度で10℃以下になると冬、10~22℃になると春または秋、22℃以上で夏という具合で定めている。
そのため、「今年は冬が63日で終わっちゃった!」「春、みじかっ!」とか、毎年大騒ぎになるのが楽しい。

で、これに従えば最近の四季の平均日数は春が69日、夏117日、秋62日、冬115日なのだという。
ちなみに今年は3月19日に春入りしていて、平均の3月13日(1991~2020)よりは5日遅い春の訪れらしい

「ながすぎた春」とか「終わらない夏」が比喩ではなく本当に存在してしまう中国の四季区分法というのも、なかなか面白いなと思う。

満開🌸

おわり


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