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読書メモ ファンベース

お客さまと一緒に会社のサービス・価値を高めていくにあたって、とても大事な考え方で、今の私が読むのにとてもいい本だったのでまとめます。

今回はファンベースの概要と今の仕事をする上での思ったことをまとめますが、実際の成功事例の話が面白く、これがあることでこんなことができたらいいなとわくわくできる&臨場感を感じるかと思うので、ぜひ気になる方は本を読んでみていただきたいなと思います。


ファンベースとは/マーケティングにおけるファンベースの位置付け

ファンベースとは
ファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売上や価値を上げていく考え方

ファンとは
企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人

ファンベースのポイントは、単純にファンを神様のように扱い喜ばせる施策・サービスをやろうというわけではないということ。お客さまに対して謙ることはせず、価値を共感する仲間として扱い、その価値を磨きこむことで売上を高めるという考え。

これは新規顧客よりも既存顧客を優先する考え方ではあるが、既存のキャンペーンを否定するものでもない。
売上を中長期的に支える「土台(ベース)」であり、短期・単発施策の縁の下を支えているという位置づけ。

ファンベースとキャンペーンの関係性


短期と中長期施策は分けて考えてしまいがちだが、上記のように組み合わせができるという整理の仕方は体感的にもとてもわかりやすかった。

また、ファンベース施策は顧客維持だけでなく、新規顧客の獲得にも効果があるという点はマーケティング的に押さえておきたいポイントだと思った。

ただし、
①ファンは全体の20%程度の少数。その少数派である20%を大切にし、作り育てるのがファンベースの考え方。全員にファンになってもらいたいと望んではいけない。
②ファンの行動はコントロールしきれるものではない。
という点は押さえて取り組みたい。

ファンがオーガニックに周りの類友にオススメしてくれるサイクルは自走式だ。勝手に広がっていくし、企業が無理に言わせることはできない。コントロールできるものではない。 ただ、第三章で書いていくように、 この自走式サイクルが回るきっかけや状況や環境を作ることはできる。 ファンがオーガニックなオススメをするきっかけを作れば作るほど、言いたくなるような状況を作れば作るほど、言いやすくなるような環境を作れば作るほど、彼ら彼女らは類友にオーガニックなオススメを言ってくれるようになるだろう。

第2章 ファンベースが必然な3つの理由

コントロールできるものではないが、おすすめするきっかけ・状況・環境はつくれるというのは、取り組む意義を後押ししてくれるものだなと感じた。

ファンの支持を強くするアプローチ(共感・愛着・信頼)

では、具体的にファンの支持を強くするには何をすべきか?という点で論じられているのが、共感・愛着・信頼だ。

まず、自らが大切にしている価値のうち、「支持されているポイント」「共感されているポイント」「愛されているポイント」をちゃんと知る。
それによりファン本位での価値を明確にした上で、価値をアップさせる/価値を他に代え難い物にする/価値の提供元の評価をアップさせる取り組みで地道に強くしていくことが大事。

第3章 ファンの支持を強くするアプローチ〜共感・愛着・信頼〜


中でも目から鱗な考え方だったのが「ファンであることに自信を持ってもらう」という点。

「この商品が好きな自分ってイケテルのか」「この商品のファンって言って笑われないか」「この商品を友人に薦めても大丈夫か」など、意外と自信がないのである。

そのための打ち手としては「他のファンのオーガニックの言葉を読むこと」。UGCなどのマーケティングの考え方は今までも持っていたが、この切り口で捉えていなかったので一段理解が深まった気がする。


ファンの支持をより強くするアプローチ(熱狂・無二・応援)

ファンベース施策として前述の「共感・愛着・信頼」をやることをベースとして、さらにステップアップするなら?という観点で、「熱狂・無二・応援」のアプローチが挙げられている。

これは下記のような定義をされる「コアファン」を増やす施策なのでかなりオプショナルなものという位置付けだ。

コアファンとは?
• 全体のうち2~8%程度のボリューム
• 「自己中心的な偏愛」ではなく、「企業の事業や方向性を分かった上での偏愛」な人
• コアファンとはお客様というより、大切にする価値を共有し喜び合う「仲間」であり、「身内」とも言える人

数としては多くないが、身内として率先して盛り上げたいと思ってくれている、このコアファンの存在をつくるポイントの要点が下記で押さえられている。

第4章 ファンの支持をより強くするアプローチ〜熱狂・無二・応援〜


印象的だった箇所1:プロダクトの独自性は追従され陳腐化する

USPはすぐ追随され、陳腐化するほとんどの商品が揃っている超成熟市場において、企業はどうすればいいのだろう。
たいていの企業が他の商品との違いを前面に打ち出して差別化しようとするだろう。つまり「USP〔※〕の明確化」だ。でも、それすら有効打になりにくいのが今なのである。
※USPとは「UniqueSellingProposition」の略で、「商品固有(ユニーク)の売り込み(セリング)提案(プロポジション)」のことである。日本ではシンプルに「差別化ポイント」的に使われることも多い

プロダクトを作ることをメインの業務とするものとして刺さったのはここ。 ユニークな価値を提供しようとしているが、良いものであれば真似されてしまう&安価化されてしまうのは実体験としてもわかる。 顧客起点マーケティングで登場した「プロダクトアイデア」の磨き込みは向き合うべきだし、確かにやっていくのだが、それが長くは続かないほど成熟している社会になっているというのも体感している。

価値観をプロダクトで表現するというところは大事にしているからこそ、プロダクトでの体験で価値観を共有すること、そしてそれを通してファンにしていくことも含めて設計していきたいと思った。

印象的だった箇所2: Don't Sell to the Community / Sell Through the Community

ネット上のファン・コミュニティや、リアルな会員組織の場合、「Don't Sell to the Community / Sell Through the Community」という考え方を意識したほうがいい。つまり、ファンには売るな、ファンを通して外に売れ、ということだ。

コミュニティに喜んでもらって、コミュニティの外にその喜びがオーガニックに染み出していくようにする、ということだ。そう心がけると、もちろんファンは喜んでいるのだから自然とLTVが上がっていく。ファンとつながっている類友も、その喜びの影響を受けて、購入したりファンになったりする、ということである。  
これを「Sell to the Community」にすると、双方を失う。そのあからさまな「囲い込み」と「刈り取り」に、ファンは引くし、ファン以外への広がりもなくなってしまう。

ビジネス成果を求めるものとして、これは1番耳が痛かった。これまでいやらしい感じにしたくないなーと思いつつ、いやらしくない売り方を考えようとしてしまっていたと思う。
この考えでやりぬきたいと思いつつ、この位置付けにするとやっぱり会社として取り組む意思決定の難易度が上がる。

だからこそ、小さくはじめる/時間がかかるのではなく時間をかけたい、と言ったスタンスの部分が大事になるのだろうと感じた。そして一担当者レベルでやるのだとしたら、この取り組みを楽しみ続けることを行っていきたい。


クラウドファンディング×ファンベース

ここからは本の要約というよりも読んで思考を深めたことを語ってみます。

この本を読む中で、ファンベースの考え方でクラウドファンディングの活用事例を見つめなおすと、ファンベース施策の実行ツールとしてのクラウドファンディングを使っていただいていることの多さ、相性の良さを痛感しました。

CAMPFIREにおけるクラウドファンディングの事例をみると、
 ・大切にしている価値を言語化したり、すでにいるファンの声を掲載して共感できるようにする
 ・商品開発やイベント企画のストーリーを語ったり、クラファン限定の体験を用意して、愛着をうみやすくする
 ・これまで起案者の方が築いてきたであろう信頼から、応援コメントや支援が伸びているのを見て、新しいお客さんが支援を産んでいる
という場面にたくさん出逢います。

また、上記のようなファンをつくる、ファンを巻き込んでいくというケースだけでなく、
 ・お店が火事などトラブルにあってしまった時、コアファンが率先してクラウドファンディングを実行する
 ・アーティストの誕生日にハッピーバースデー広告を街中に出す
など、応援される存在であるからこそ、対象の身内としてクラウドファンディングを活用してくださるケースも存在します。

私はCAMPFIREのPdM/PMMとして、クラウドファンディングの後の話を聞かせてもらったことがあります。お客様やファンとの関係性が強くなったことを、嬉しそうに語ってくださったのは、プロダクト・サービス開発者としてとても有難く強く印象に残っています。

クラウドファンディングは、リスクなく小さく始めることができるツールとしても、言語化するための機会としても相性が良いため、多く使っていただいているのだと思いますが、この文脈で使いやすいプロダクトになっているかどうかを考えて、プロダクト改善をしていきたいと思いました。

この本を読んで、クラウドファンディングについて改めて考えたとき、昔から感じていたことが明確になり、納得感を得ることができました。

CAMPFIRE×ファンベース

CAMPFIREは大事にしている価値観「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる」を会社のミッションとして掲げ、それを中心に置きながらプロダクト・サービス開発をおこなっています。

これは会社として大事にしているところであるのと同時に、お客様からも好ましい反応をいただいているところだと実感する機会もあるものでした。
価値そのものを磨き込んでいくのと同時に、価値観を十分に伝えられているのか?と自問すると至らないところも多いと思うので、頑張っていきたいなと思います。

また、この本の定義の「コアファン」とは少しずれるかもしれないのですが、CAMPFIREを支えてくれる「身内の存在」を感じることがありました。
CAMPFIREのパートナーというかたちで、クラウドファンディングをやりたい方のご紹介/クラウドファンディング実施のサポートをしていただいている皆様です。

2月にパートナーさん向けのイベントを実施したのですが「CAMPFIREが目指しているとことを目指すなら、XXをやったほうがいいのでは?Xは改善ポイントだと思う」など、CAMPFIREの視点に立った熱心な声をいただき、CAMPFIREにとって本当に大切なことを考えるきっかけとなりました。

こうした方々と一緒にサービスを良くしていきたいということと、CAMPFIREのことをよく思ってくださっている方との接点がまだまだ少ないなと思っているので、今年はそういった接点をつくっていければと思いました。


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