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この曲の名前を教えてくれ -齋藤飛鳥卒業発表 2022.11.4- ほとんど走り書きに近い備忘録。落ち着いて書けるようになるのはずっと先だと思うから。

1988年10月19日は俗に「ニュースの特異日」と呼ばれることがある。神奈川県の川崎球場で行われた近鉄×ロッテのダブルヘッダー、それをテレビ中継したテレビ朝日は番組編成を大幅に変更し、看板番組の一つ「ニュースステーション」本編枠まで使って中継を続行。モンスター級の視聴率をたたき出す。他方でその日は阪急ブレーブスの身売り問題、リクルート事件の続報、貨物列車の脱線事故など通常のトップニュースネタが乱立していたため、キャスターの久米宏さんは悲鳴をあげた。「誰か助けてください!」---それはアドレナリンの過剰分泌による叫びにも、心からの本音にも、キャスター冥利に尽きるというある種の満足感にも思えた。


■「誰か助けてください!」

2022年11月4日、アイドル界隈の「特異日」とでもいうのか、語呂合わせで「いい推しの日」なのに、界隈には衝撃が二度、三度走った。

体調が心配されていた中居正広さんが1カ月の休業を発表。

乃木坂46・齋藤飛鳥が卒業を発表。

夜にはKing & Princeの平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太の3人がグループ脱退・事務所退社の意向を発表。

「いい推しの日」なのに、ファンにとっては曲がり角を曲がったら突然、頭を思い切り殴られたような致命的な一日となってしまった。

■飛鳥ちゃんのこと

まだ頭がぼんやりとしていて、理解が追い付かない。祝日明けの金曜日はとても忙しくて、対応しなければならないメールや連絡もたくさん来る。一息ついたところで、飛鳥ちゃん卒業の発表を聞いて、何かがガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

忙しさのピークを過ぎて、心身ともに疲れているはずなのに、眠気も感じているはずなのに、到底眠れる気がしないので、ほとんど勢いに任せて書いている。書かずにはいられないのに、何から書いたらいいのか分からない。気持ちばかり焦って、何一つまとまらない。挙句に、ニュースの特異日などという例えまで出してきて、僕は、何が言いたいのか。


飛鳥ちゃん、どうして?


でも、いいんだよ。


まず、ありがとう。


でも、とてもショックだ。


ずいぶん前から予期していた気がする。それもかなり前から。


すんなり受け入れられたら、いいのだろうな。


でも、とてもできそうにもない。


やりきれない。


ねぎらいたい気持ちと、引き止めたい気持ちと。


同じところを、行ったり来たりしていて、考えが少しもまとまらない。ずっとは続かないと分かっていたはずなのに、いざ現実が目の前に現れると、決心はこんなにも脆く、はかないものなのか。目の前がにじんでいく。

何か書いていないと、崩れ落ちてしまいそうな気がする。

6年前(もう6年も前!)、2016年の10月20日、ななみん(橋本奈々未)の卒業を聞いたとき以来の、心にぽっかり穴が開いたような、虚無感と喪失感。まもなく自分は大切な何かを失うことになるんだという、未来への茫漠とした不安。さざ波が押し寄せるように、寂寥感がどこからともなくやってきて、必死に逃げようとするのに、逃げられないと自分で分かっている。もう何も手につかない。

待て待て、落ち着いて考えれば、まだ先のことだと言い聞かせる。永遠に姿を見られなくなるわけじゃない、別の道に舵を切るだけのことだ。落ち着いて考えればそうなのだ。

なのに、心が落ち着かない。落ち着きようもない。何度経験しても、これだけは心と体が慣れてくれない。

何かに例えていないと、そして気を紛らわせていないと耐えられそうにもない。

いつの間にか、そんな存在にまでなっていた。笑ってくれ。

いるのが当たり前と思ってはいけないわけだな。

■この曲の名前を教えてくれ

いつも行くコンビニに入ると、何かの拍子に「この曲」が流れている。オーケストラが奏でる、優しい旋律はきっとどこかの流行り歌なのだけれど、どうしても曲名が分からない。

いつも、こちらが無警戒なときに限って、その曲は流れてくる。そして、たちどころに心を奪っていく。

なのに、曲名が分からない。


レコード針が盤面に落ちる音は、きっと聞こえていたはずなのだ。ともすれば、誰かの手が、レコード針に触れるのも見えていたはずなのだ。

「この曲」を、これまでにももう何度も耳にしてきたのだ。たちどころに心が奪われ、思考が停止するほど僕を芯から揺さぶることも知っていたはずなのだ。

なのに、どうして、いつも僕の警戒が緩むその瞬間を正確に見定めてくるのだろう?

心に起こる変化を、僕は上手く言い表せない。一言で言い表す言葉の奇跡が僕は欲しい。

この曲の名前を教えてくれ。

この曲の名前を教えてくれ。


2022年11月4日(金)


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