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【本】読書記録 七月

食わず嫌いならぬ読まず嫌いになりがち。新しい世界に飛び込むのは何でも勇気が要る。角田さんの本から気になった二冊を読んだことで、弾みがついた。いつもなら図書館や夫の実家の本棚で流し見してしまう本。えいや!と思い切って借りてみた。せっかく時間があるのだから、貪欲に軽やかに本との出会いを楽しもうと思う。
目次は読んだ順に。生きづらさを感じながらも目の前の日々に立ち向かう登場人物が多めのラインナップとなりました。

ミルク・アンド・ハニー (角田さんお勧め)

主人公の脚本家、奈津。夫がいるのに複数と関係を結ぶ彼女に対して共感できない所ばかりかと思いきや。自分の中にも「寂しさ」に抗えず人を求めてしまう所や相手の顔色を窺って本音を隠してしまい後の自分を苦しめてしまう所があるじゃないかと過去を反芻させられた。そして、村山さんの逢瀬の表現に心身ともに潤わされてしまう。詰まる所、互いを尊重し思いやれる関係であれば体も心も深く繋がれる気がした。それが出来る相手に巡り合えるのが、至極難しいのだけれど。

虫娘 (角田さんお勧め)

最後の3行のための物語だった。主人公の照(ひかる)が死に、実体を失った彼女が暮らしていた場所や知人のそばを漂う。共にシェアハウスに暮らすルームメイトの謎や生きづらさが徐々に明かされていく度に、照のからりとした存在がなんだか苦しい。結局虫娘とは何かというのはわからなかった。是非どなたか読んでいただき、分かったら教えて欲しい。(他力本願)

ちはやふる 20〜50巻

最後まで爽やかで瑞々しい漫画だった。とにかく主人公、千早のかるたへの愛や仲間への純粋な期待に心が熱くなる。夫婦で八月にもう一度読み直す予定。何度も読み返したい良作!百人一首を理解して読み返せたらより物語の深みに浸れそう。

さらさら流る

梅雨のじめっとした空気が漂うような始まり。息苦しさに耐えながら読み進めていく。最後は呼吸ができた。ラストは柚木さん作品らしい(と私が感じている)爽やかさを纏った夏の風が、主人公たちを優しく攫っていくようだった。主人公がぶつかる壁は、自分の苦々しい記憶との再会となった。恋人のことを「生涯を共にする人」だと疑いもしなかった日々。相手への絶対的な信頼が時の流れによって変わっていくことも分からずに、無邪気だった自分が恨めしい。

破蕾

読みかけの本『月と日の后』の著者の作品。図書館で見つけたときは、朱色の背表紙が目に止まってパラパラと立ち読みをして興味本位で借りてみた。借りたのを後悔するくらい甘美な猥談。猥談なのに露骨さや安っぽさを感じないのが新鮮だった。目の前に着物や表情の色が無数に広がる。目眩く大人世界に魅せられている間に気づいたら読み終えていた。登場人物たちも色香に惑わされ気づけば夢の中に落ちていくが、私もまさにそんな気分だった。

ダレン・シャン I・II

小学生の頃、『ミッケ』との二大人気作品だった。新刊が出る度に予約をして待ち侘びていた事を思い出す。少年ダレン・シャンの純粋な好奇心や欲。彼のほんの出来心が暗闇の世界へと繋がっていくことへ慄きながら、貪るように旅路を読み進めた少女時代。ことが嘘のごとく、中身を全く覚えていなかった自分にショックを受ける。バンパイヤの世界に足を踏み込んでいくダレンと共に幼い頃へ思いを馳せながら読み進めたい。(全12巻)

夜空に泳ぐチョコレートグラミー

すり鉢のような、小さな水槽のような街の中で懸命に息をする魚たちの短編集。とてつもない息苦しさに喘いでも、愛おしいものを守るために前へ進む。そんな健気な登場人物たちに心が締め付けられる。切なくも細やかな希望を期待せずにはいられない。

朝が来る

特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。子供を手放すことになった幼い母。それぞれの葛藤、人生が描かれた一冊。ラストシーンの光が眩しかったことが忘れられない。映画がAmazonプライムで無料配信されるのを心待ちにしている一作。

罪と罰

ドストエフスキーの「罪と罰」が難解すぎて断念。児童書コーナーで見つけた漫画バージョン。原作とは異なる部分が多々のようだが、一歩世界観に近づくために手塚先生の漫画を拝読。ラスト1ページで正しさとは何かを考える。

黄昏綺譚

「黄昏が怖い。」この一文から始まる高橋克彦のエッセイ集。現実は小説より奇なり。怖い、怖すぎる。たった3Pで読み終えるものでも背筋が凍る。挿絵も強烈。夏の怪談に・・とお勧めできないくらい空気がひんやり。勇気がある方は是非。明るい時間に読みましょう。

おしまい。

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