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『夜にしがみついて、朝で溶かして』 ライナーノーツ



1.料理
来ました、先頭バッターは一番「料理」。はじめに言っておくと、野球好きの尾崎さんのことだから、アルバムの曲順は野球の打順に被せていると個人的には思っている(最近の考えは違うかもしれないけれど)。とくにそう感じさせられたのは、ファーストアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の曲順である。「愛の標識」からはじまり、四番バッターでありクリープハイプの代表曲「オレンジ」までの疾走感、完璧なクリーンナップ。クリープハイプのアルバム構成はこれにつきると思っている。そしてこの曲「料理」。尾崎さんらしい捻くれたラブソングになっていると感じた。「滲んで千切れたレシート」「出来合いでも溺愛で」「ただ駄々をこねるハンバーグ」「こんなに悲しいのに」「眠くなってすぐに 二人で横になった」。おそらく同棲を始めたばかりのカップルを料理して煮詰めたんじゃないかと思う歌詞。喧嘩をすることもあるけれど、その度に仲直りをして布団に横になる様子が、最後の「二人で横になった」の歌詞で想像ができた。


2.ポリコ
二曲目、「ポリコ」。このポリコという言葉をあえて何かに例えるとするならば、私は「自転車」なのかなと思った。原付の免許に落ちている尾崎さん。セカンドアルバムに収録されている「マルコ」が実家の犬のことを歌った尾崎さんなら、自分の愛車(自転車)に名前を付けて歌ってもおかしくないんじゃないかと思った。「ハイパーポジティブよごれモン」というアニメーションもあるけれど、これは「ポリコ」から派生して生まれた作品で、「ハイパーポジティブよごれモン」から派生して生まれた「ポリコ」の楽曲ではない。だとすると、「ポリコは法定速度で いつもの道を走ってた」という歌詞から推測するに何かしらの乗り物であるのことには間違いないだろうと思う。繰り返される「便所の落書き」という歌詞は、自転車に乗って気分転換をしているときに、たまたま立ち寄った公園のトイレに落書きがしてあったんじゃないかと私は思った。私も散歩をしながら公園に立ち寄って用を足すことがあるけれど、公園の便所ってあるよね、落書き。そして何より、尾崎世界観あるある、「最近どう?」って聞きがちあるある〜!『mikita.e.p』に収録されている「猫の手」の歌詞でも「ねえ君は 今何してる?」って聞いてたよね?聞いてたよね?その気持ち、わかるよ。気になってる人が今何してるかってめちゃくちゃ気になるもんね。


3.二人の間
三曲目、お笑いコンビ、ダイアンのために書き下ろされた楽曲「二人の間」。お笑いコンビのために書き下ろされた楽曲だけあって、愛に溢れた楽曲であり、次の曲「四季」にも繋がる優しさが見えた曲になっていると感じた。お笑いコンビならではの間、「言葉にならないそんな感じ」「音以上気持ち未満の ちょうど良いその相槌の」「フラれるの覚悟でツッコむ」「二人の間で そのままで」まさにお笑いコンビならではの「間」を突き詰めて生まれた楽曲で、それでいてクリープハイプらしさが香る楽曲に仕上がっている。ダイアンが歌ったバージョンの曲が良いのはもちろん、クリープハイプが歌えば、メンバー感での「間」や、恋人同士の「間」を歌った曲にも聴こえるから最高だ。


4.四季
来ました、このアルバムの四番バッター、シーズン最多本塁打記録保持者バレンティン、もしくは山田哲人、村上宗隆あたりが当てはまるでしょうか「四季」。文字通り日本の春夏秋冬を歌ったこの楽曲。尾崎さんが原付の免許に落ちて、メンバー全員で自転車に乗ってMVが撮影された楽曲ですね。「少しエロい春の思い出」「いつでも優しい夏の思い出」「それはダサい秋の思い出」。春の思い出が少しエロいという歌詞に尾崎さんらしさを感じずにはいられませんね。こう言われてみると、どうして春は少しエロい感じがするのだろう。新しい季節、新学期、新入社員、様々な出会いがある季節だからエロく聞こえるのでしょうか。不思議とすんなり心に入ってくる歌詞。それでいて少し気になったのが「その時なんか急に無性に生きてて良かったと思って」という歌詞。普段からポジティブで、毎日が楽しいと思えている人には書けない歌詞だなと感じた。つまりはこの歌詞を書いた尾崎さんは、実は「生きてて良かった」と感じることが少ない人間なんじゃないかと思われる。世間で言われている「陰キャ」「陽キャ」という言葉に当てはめると私自身は圧倒的「陰キャ」であり、性格的にもネガティブな方である。そう思うと、尾崎世界感という人物は太宰治的な劣等感や自分で自分の今の状況が客観的にみても、良くも悪くも満足できていないんだろうなと感じさせられた。

 

5.愛す
五曲目、「愛す」。正直この曲をYouTubeのMVで初めて観たときは、ほよ?なんだこの曲は?と思った。「クリエイティブチーム・AC部」が手掛けたこのMVだが、相当攻めたMVだなと思った。曲調もスローテンポで穏やか、そこにあのMV。頭の中は「???」「なんだこれ?」だったが、これにも尾崎世界観の面白さが現れている。まずはタイトルの「愛す」。普通に読めば「あいす」好きな人、気になっている人を現在進行形で愛するという意味のタイトルかと思いきや「愛す」と書いて「ブス」と読ませる辺り、尾崎世界観の言語感覚の豊かさを感じずにはいられない。そして歌詞も「君」と「黄身」を掛けたり、「側」と「蕎麦」を掛けていたりと、歌詞をじっくり読みながら楽しめる良さがこの曲にはある。それでいて「逆にもうブスとしか言えないほど愛しい それも言えなかった」いや、それさえも言えなかったという初々しさ、尾崎さんの感性の若さに驚かされる。おそらく十代、二十代前半の若者の恋愛を歌った曲なのだろう。好きだけどその気持ちをストレートに伝えられない気持ち、好きな子に好きなのにイタズラをしてしまうような幼い感じを表現したんじゃないかと思った。


6.しょうもな
六曲目、「しょうもな」。最初スローテンポなイントロで、落ち着いた曲なのかなと思ったら、途中から一気にペーッスアップ。これは好き!と思った。そして一発目の歌詞!「馬鹿だなってよく使うけど それもう古いって知ってた」。ほんと、尾崎さんってよく「ばーか」って使うよね(笑)。ファーストアルバムの「身も蓋もない水槽」の曲でも「パズルゲームが好きな馬鹿が」って言ったあと、曲の締めが「ばーか ばーか」って(笑)。私自身「馬鹿野郎」っていう言葉自体は好きなんですよね。最近Netflixで観た劇団ひとり監督の映画『浅草キッド』を観ても、ビートたけし自身もよく「馬鹿野郎!」って言葉は使うし、師匠の深見千三郎も弟子のビートたけしに対して「この馬鹿野郎!」ってやっぱり言うんですよね。それを観てると「ばーか」っていう言葉は一種の愛情表現なんじゃないかなとも思える。それでいて歌詞の「今は世間じゃなくてあんたにお前にてめーに用がある」っていう投げかけ。この「おまえ」「てめー」っていう言葉は、恋人、友達同士の本当に中の良い人に投げかけた言葉であり、尾崎さんが心の底からファンに投げかけた言葉であるようにも感じた。


7.一生に一度愛してるよ
七曲目、「一生に一度愛してるよ」。これはもう原点回帰と言ってもいい曲でしょう。明るいポップなイントロから始まる曲であり、歌詞では「だからいつもいつもいつもファーストばかり聴いてる」という尾崎さんの皮肉。この曲は完全に尾崎さんからファンへ向けた嘆きの曲であることがわかる。私自身も物作りなんかをしたり、SNSで発信しているからこそわかる、ファンを維持する難しさ。例えばファーストアルバムを聴いて好きになった学生のファンも、年を重ねて社会人になってライブに行きたくても仕事があって行けない。結婚をして環境が変わってクリープハイプを聴かなくなったファン、新しく出てきたミュージシャンを聴いているファンもいることでしょう。基本的にファンは減り続けるもので、じゃあどうやって人気の維持を保つのかといったら新規のファンを増やしていくしかない。そんな中で出てくるこの曲のカオナシさんパートの「出会ったあの日は103です」という、セカンドアルバムの「ラブホテル」にも出てくる歌詞パート。そして最後の歌詞「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」の歌詞。尾崎さんは今のファンはもちろん、一度離れていってしまったファンの人たちにも、初めて会った「103」号室でいつでも僕たちは待っているよという優しい投げかけになっている。だからこそ、新規ファンの方はもちろん、最近クリープハイプを聴いていなかったファンの人にもこの曲は是非とも聴いてほしい一曲になっている。


8.ニガツノナミダ
八曲目、「ニガツノナミダ」。この曲は個人的には今回のアルバムの中でもかなり好きな曲なんですが、発表されたのは約三年前のソフトバンクが展開する「SoftBank Music Project」の新テレビCM「バレンタイン」篇に書き下ろされた曲なんですね。たぶん初めて聴いたファーストインパクトもすごく良かったと思うのですが、約三年ぶりに発売された今回のアルバムに満を持しての登場ですね。最初の歌詞「チョコ渡せなくて忘れたくて 動画見る」という歌詞の通り、二月と言えば十四日のバレンタイン、でも、そのバレンタインを超えるスケール感の曲だと思います。タイアップ曲ともあって、「速度制限」「Wi-Fiスポット」「使い放題」などの歌詞も入ってくるのですが、『「しばられるな」にしばられてる』という部分に尾崎さんの言葉の使い方の面白さが含まれていると思う。最後の「逆ギレしながら あてもなく走った」「結局欲しいのは 他人の評価で」「締切に抱きしめられて」という部分に、社会人になったからこそ強く共感する部分があるのだろう。


9.ナイトオンザプラネット
九曲目、「ナイトオンザプラネット」。この曲については語り尽くせないかもしれない。今回のアルバムのタイトルにもなる歌詞が一発目で出てきて、「ジャームッシュは一体何本撮った」「今もあの花のとなりでウィノナライダーはタバコをくわえてる」という歌詞にもある通り、アメリカ人映画監督、ジム・ジャームッシュの作品「ナイト・オン・ザ・プラネット」という作品がベースにあることは間違いない。でも悲しいかな、映画好きの私でもジム・ジャームッシュ監督の作品は「コーヒー&シガレッツ」と「パターソン」しか観ていない現状、、、、この曲に関しては深堀ができないなと思いました。。。今度TSUTAYAで借りて観ます(泣)。ただあらすじを見るかぎり、全5話で構成されるオムニバスドラマの映画で、5つの都市を舞台に、それぞれの市のタクシードライバーたちのストーリーが展開していく物語だということはわかりました、なるほど。。だからクリープハイプの「ナイトオンザプラネット」のMVも夜のタクシーでの撮影だったのですね、納得です。個人的には来年公開、松居大悟監督の『ちょっと思い出しただけ』も観ようと思いました。尾崎さんの音楽や本への愛だけではなく、映画への愛もたっぷり伝わってくる楽曲。


10.しらす
十曲目、「しらす」。ファーストアルバム「火まつり」から続く、クリープハイプのアルバムといえば一曲は収録されている長谷川カオナシさん作詞作曲の楽曲。このカオナシさんの楽曲がまたアルバムにひと味もふた味もスパイスを効かせてくる。ただ率直な感想、歌詞の冒頭「ぺこぺこお腹空かせて」「帰り道 空 お星様」「頂きます」「しらすのお目目は天の川」、、、どゆこと(笑)??もう長谷川世界観爆発じゃないですか!!正直歌詞の深堀やらなんやらできるレベルじゃない、カオナシさんだから作詞できたであろうこの歌詞。でも「今日も食べるんだ美味しいごはん」という歌詞からも、今作のアルバムの一曲目「料理」という曲に少し寄せているのかなとも思った。クリープハイプの世界観を崩さず、それでいてカオナシさんの世界観も存分に出ている曲だと思う。


11.なんか出てきちゃってる
十一曲目、「なんか出てきちゃってる」。基本的には「偶然ネジが 偶然ネジが 偶然ネジがゆるんじゃって」の歌詞に跡付けの尾崎さんの言葉が添えられた楽曲。この楽曲はファーストアルバムの「身も蓋もない水槽」サードアルバムの「社会の窓と同じ構成」に近い、尾崎さんが本当に自由に作った遊び心のある楽曲なんじゃないかと思った。尾崎さんの性格、捻くれた感じがバックにつく歌詞に表れていて、それでいて今までにはない曲の構成で、聞き込みがいのある曲に仕上がっている。もしも自分がこんな曲を作ったら、部屋で一人どんな感想がくるんだろうという感じでずっとニヤニヤしてしまうだろう。


12.キケンナアソビ
十二曲目、「キケンナアソビ」。タイトルの文字通り、YouTubeに最初にあがったMVは年齢制限がつくくらいアダルトな楽曲。二回目にYouTubeに上がった同曲でこそ可愛らしい動物が出てきてマイルドになっているけれど、歌詞がなんてったってワンナイトの経験を想像させる刺激的な歌詞に仕上がっている。そして大事なところで出てくる「嘘だよ」の歌詞。この曲は出だしの歌詞で男性目線の曲とも捉えられたけれど、最後のほうの「馬鹿みたいだあたし」の歌詞で、これまで何曲も女性目線の曲を作ってきた尾崎さんらしい女性の気持ちが表れている。つまりこの曲も女性目線の曲として聴くことができる。「心がすり切れて揺らぐから」「体で繋ぎ止めて揺れる夜」「それだけで良いのにな」この割り切った気持ちも、最後の「って嘘だよ」の歌詞で一気に未練が感じられる。相手のことをもっと知りたい、これからも定期的に会いたい。それでもやはり「馬鹿みたいだあたし」「ぜんぶ夢みたいだな」の歌詞で現実に戻され、一晩限りの関係に気持ちを整理させようとする心の様子が頭に浮かぶ。また「馬鹿みたいだあたし」だけの歌詞を聴くと女性の後悔が感じられるけれど、そのあとの「ぜんぶ夢みたいだな」この歌詞で、女性は後悔もしているけれど、あの日、あのとき会ったあなたと過ごした時間を冷静に思い起こしているようにも感じられる。これはとある男女の一晩限りの関係を描いた物語、だからよい子は早く家に帰りましょ。


13.モノマネ
十三曲目、「モノマネ」。アニメ映画『どうにかなる日々』の主題歌であり、mikita.e.p、そしてサードアルバムに収録された「ボーイズENDガールズ」の続編、アンサーソングと言われているこの楽曲。昔に作られた「ボーイズENDガールズ」の続編の曲がこの「モノマネ」というのは、尾崎さんがどこかの媒体で言ったのか、私のリサーチ不足で確証はない。でもたしかにこの二曲には「シャンプー」「匂い」「おんなじ空」「同じキーホルダー」と、共通する歌詞がある。もしもこの「モノマネ」が「ボーイズENDガールズ」の続編、アンサーソングだとすれば、結論、この二人のカップルは別れてしまったんだろうなと思う。まず始めに「ボーイズENDガールズ」という曲のタイトル。どうして「ボーイズ"AND"ガールズ」ではなく「ボーイズ"END"ガールズ」なのかという点。これはANDをENDにすることで、二人はいつか別れる運命にあるんじゃないかと推測できる。そこからのこの「モノマネ」。冒頭の「シャンプーの泡 頭に乗せてふざけるから」という歌詞から、二人が一緒にお風呂に入ってふざけるくらい、いかに親密な関係かということがわかる。そして同じ道を歩き、同じ空を見て、同じキーホルダーをつけた鍵、「何から何までそっくりだった」というように、この二人はかなり親密で、それなりに長い年月は同棲して付き合ったのだろう。しかし「何から何までそっくりだった」の歌詞、「何から何までそっくり"だ"」と断言すれば現在進行形に伝わるけれど「何から何までそっくり"だった"」という点において、すでに過去の思い出になっていることがわかる。「何も知らないあたしはただ笑ってた」「今更泣いても酷いモノマネだな」という歌詞からも、彼女の未練が伝わってくる。また彼女はきっと振られてしまったのだろう。「ひょっとしたらひょっとした」彼が自分のことを段々見なくなっていることに薄々感じていながら、彼女は「ただ笑ってた」。繰り返される「今更泣いても酷いモノマネだな」という歌詞からも、今でも彼を思い出し、別れたことを後悔していることが伝わってくる、そんな切ない曲だと感じた。


14.幽霊失格
十四曲目、「幽霊失格」。この「幽霊失格」という曲が「モノマネ」のあとに続いているというところに、さすが尾崎さん、、と感じた。尾崎さんが曲順にもしっかり意味を持たせたのだとすれば、この「幽霊失格」は、「モノマネ」にも繋がる曲になるんじゃないかと思った。万が一、関連がなかったとしても「幽霊失格」については、歌詞をしっかり読むことで推察できる部分が大いにある。いろいろ言いたいことはあるけれど、最初に言いたいのは、何と言っても「幽霊失格」というタイトルが痛快、そして抜群に良いということ。こんなタイトルが浮かぶのは尾崎さんの言葉のセンスであり、才能だなと思う。では本題に入るが、この「幽霊失格」の幽霊とは、元カノのことであり、この曲は元カレである男性目線の曲なんじゃないかと思った。まずは序盤の「夜の道を猫背で歩いてる」「まるで飼い主を探す犬みたいだな」この歌詞の夜の道を歩いている、飼い主を探す犬は、イコール恋人と別れた男性のことであり、 「ガラスに映るのは君の幽霊」の"君"は、別れた彼女のことであると推察する。そんな別れた彼女が「化けて」出てくる。別れた彼女の顔色は悪いし、寝る前に繋いだ手のこと、寝起きで開けただるい目も「思い出させてばかり」、だから「"君"は幽霊失格」。この君というのが別れた彼女のことなんじゃないかと思う。「懐かしいとはしゃぎながら部屋のドアを通り抜ける」という歌詞からは、別れを切り出した彼もまた、彼女と別れたことにまだ未練を感じているのではないか。「写真にだけ写る美しさ」あの懐かしい思い出、「成仏して消えるくらいなら いつまでも恨んでて」「なんて言わせる 君は幽霊失格」忘れたくても忘れさせてくれなくて、亡霊のように付きまとう君は、本当に幽霊失格だな、そんな彼の未練が浮かんでくる。


15.こんなに悲しいのに腹が鳴る
十五曲目、「こんなに悲しいのに腹が鳴る」。これまでに発表されたアムバムの中でも最多収録曲の本作『夜にしがみついて、朝で溶かして』、ラストを飾る「こんなに悲しいのに腹が鳴る」。はじめに正直な話しをすると、原点回帰ではないけれど、ファーストアルバムの最後を飾った「exダーリン」のように、最後は尾崎さん自身の新しい弾き語り曲を聴きたい!と思っていた自分がいました。それでも「こんなに悲しいのに腹が鳴る」を聴いた瞬間、これはこれで今回のアルバムの集大成を飾ってもいい曲だなと思いました。前曲の「幽霊失格」や「モノマネ」の男女間を描いた曲の、本当に最後の最後の曲がこの曲なんだなと思えた。「二度漬け禁止の秘伝のクソッタレ」、秘伝の"タレ"と、クソッ"タレ"が掛かっている面白さ、戻りたくても戻れない、やり直したくてもやり直せない"君"との思い出。「夕暮れ 伸びる影 逃げてもついてくる」、楽しかった思い出に向き合おうと思えば「逆に逃げられる」、もう切り替えて忘れようと思えば「立ち止まって じっとにらみ合う」。「こんなに悲しいのに腹が鳴る」どんなに悲しい過去を思い出してもお腹は減る。そして「生きたい生きたい死ぬほど生きたい」、この最後の歌詞に救われないわけがない。フラワーカンパニーズの「深夜高速」をも思わせる歌詞、もう涙しかありません。そんな涙もこの4分半のクリープハイプの曲に詰め込まれています。最高の曲を、最高のアルバムをありがとうございました。



※このライナーノーツは個人の主観が大いに入っており、クリープハイプOfficialチャンネルに投稿されている歌詞解説の動画もあえて見ずに記事を書いております。間違った主観があってもお許しくださいませ。また、間違った情報、誤字脱字があれば気軽におっしゃってください。



きみのために風は吹いている そう思えるのはきみのかけがえのない生活が、日々が、 言葉となって浮かんでくるからだと思う きみが今生きていること、それを不器用でも表現していることが わたしの言葉になる 大丈夫、きみはきみのままで素敵だよ 読んでいただきありがとうございます。 夜野