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マンチェスターシティvsアーセナル 前半

ベジェリンいい選手ですね。ベストは尽くしたと思うから、ダビドルイスをあんまり責めないでほしい。

こんにちは。正しいことに近づくために、正しくないかもとは思いつつも、恐れずに書きます。とりあえず前半まで。

両チームの配置は以下の通り。早々にジャカが負傷でセバージョス投入、20分くらいにマリが負傷でダビドルイス投入。どちらも当該ポジションにそのまま入りました。

スタメン

双方のやり方を確認します。初めに、シティがボールを保持している状況から。シティはセットは4-1-4-1のポジション通りです。そこから相手の出方を見て動きをつけて、大体後ろに4枚ないし5枚が中央よりに残る形でした。アーセナルは、図示した通り、1トップでCBの横パスを閉じて、相手アンカーに入ったらこちらもゲンドゥージもしくはウィロックが寄せます。どちらにしろ4-4-1-1で各役割は変わりません(11:20等混乱はあります。この場面はすぐ絞ったサカのナイスプレーでした)。2枚のIHは対面のIHをマークし、オーバメヤンはガルシアの前に立ったり外を切るように立ったりする一方、サカはメンディに入った時に戻ることが最優先です。それに伴い、ベジェリンはスターリングについていく一方、ティアニーはウォーカーに縦スライド準備をしながらということになります。これに対してシティがどう行動し、アーセナルがそれにまたどう対応しようとしたのかを述べます。意外だったのは、アーセナルがラポルト側にボールを集めるような立ち位置をとったことです。なんでなんでしょう、オーバメヤンだからでしょうか。

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シティとしてまず重要なのは、左であれば特にラポルトの前が空いていること、右であればウォーカーのところにある程度起点が作れそうであるということです。左から見ましょう。ラポルトは前が空いているならどんどん運びたいところですが、相手を引っ張り出すところまで運ぶと(アーセナルはラポルトに出るときは、ウィロックが出てアンカーはヌケティアが隠し、シルバをゲンドゥージが引き取る感じでした)、奪われ、カウンターを受けるリスクが高まります。ある程度運んで相手を押し下げつつも、基本はボールがノープレッシャーであることを利用して、フリーランに対する正確な球出しという形で攻撃したいところです。そこでよく見られたのが、シルバの降り、メンディの大外への上がりです。ボールホルダーがフリーなら、マンツー色の強い相手に対しては一般的に有効な手です。守備よりの相手選手(ボランチ等)を引っ張り出して、守備よりの味方選手(SB等)が、攻撃寄りの相手選手(WG等)を振り切ってそのスペースに侵入。フリーな出し手からそこへ正確に流し込む、というシーンはよくあります。シティはこれにジェズスのライン間へ降りる動きも組み合わせていました。しかし左サイドからはなかなか綺麗にチャンスにはなりません。まずはサカがしっかり戻ったというのが大きいです。これがあるからこそ、大外メンディが持ったときにハーフスペース裏にスターリングが走っていても、そこはベジェリンに任せ、CBはやや降りて横パスを受けようとするジェズスに出ていくことができました。ボールにプレッシャーがかかっていないのについて行けていたという意味で、シティの左サイドでのアーセナルの振る舞いは、結構うまくいっていました。

次に、シティの右サイドを見ます。まず狙い目は、出ているオーバメヤンの背後のウォーカーです。ここに入ったら、アーセナルは、ティアニーを縦に出しつつ、デブルイネを隠しながら横向きにIHが寄せます。DFラインは左にスライドします。これに対して、シティは左と同様にデブルイネを下ろしてウォーカーを上げます。IHの対面マークは絶対なので、これにより、ウォーカーに入った時の寄せは多くがティアニーに期待されます。ただ、オーバメヤンは決して強く寄せているわけではないので、ティアニーが先行して出る=DFラインが早めにスライドすることはできません。オーバメヤンが出ており、ゲンドゥージがアンカーを伺う限り、ティアニーが出るにはCBを動員しなければなりません。これはなかなか勇気がいることで、サカがボールに戻っているサイドとは話は異なります。まだオーバメヤンが縦を切ってくれればまだサイドに出やすいのですが、外切りでしかも半端に寄せると、中に入るマレズへのパスコースが生きるため、どうしてもティアニーは内を優先せざるをえず、外でウォーカーが超フリーになります。19:35のシーンです。ボールがオープンでスライドできることはそうそうないでしょう。ここでマリは負傷しますが、チームとしての構造的な矛盾が引き起こした無理によるものだと言えます。オーバメヤンは弱く出るなら中切りがマストです。外切りならもう少しCBに強めに寄せて利き足を圧迫して縦パスを消し、なおかつSBに出す手間をかけさせないと、縦を防ぎつつ外に逃げてきた相手を追い込むことはできません。これは余談ですが、弱い外切りで許されるのは、同サイドに人数が揃っている時だけだと思います。このように、アーセナルは右サイドに比べ、左サイドの守備には筋の通らない点がありました。

また、オーバメヤンはCBまで出ず、縦を絞ったところから相手SBに戻るような立ち位置を取ることもありました。それ自体は別に問題なくて、できればアンカーを出さずに相手アンカーはヌケティアで見て撤退したいところですが、まあそうでなくても、右サイドと同様に頑張って対面について行けば成立します。ただ、ここで述べたいのはシティの鋭さです。開始早々、1:40の時点で、すでにジェズス降りて背後にデブルイネをやろうとしています。マンツーとボールオープンに対する解を即座にチームとして実行するというのが、すごいなあと思いました。このシーンでは、オーバメヤンが自分の担当であるウォーカーを隠すことでディフェンスが成立しているため、頑張ってついていったアーセナルの勝ちですが、開始直後ですでにそのやりとりがなされていることに驚きです。まあ2:05のエデルソンのキックとメンディのオーバーラップもそうなんですが。ところで、シティはこれらのやや硬めの人の移動に加え、サイドを越えた人の移動も効きました。28:05では、左サイドでデブルイネとシルバのIH2段構えを作り、スターリングが引っ張ったDFラインの前で受けます。32:10から33:20のスターリングのシュートに至るまで再びこの立ち位置を取りますが、どちらも、自分がイレギュラーな位置にいることで出てきた相手の背後でフリーになった味方に、ものすごくメカニックにパスを出します。この時間帯結構デブルイネはフラフラしますが、その分のケアとしてウォーカーが絞ってボランチ化しているところも注目です。右サイドにおいても、デブルイネが下がる一方でウォーカーも低めに残り、大外にマレズが立ち、その分空いた右サイドのHSの裏のところでスターリングが受けるシーンが2回ありました(38:00、45:00+1:00)。後者は得点シーンです。通常逆サイドのSB(メンディ)が行うリスク管理を、同サイドで2人残ることで請負い、その分メンディが大外進出、スターリングを同サイドへ押し出した、という見方もできるんでしょうか。

いろいろあって30分くらいにはヌケティアがアンカー隠しを常時やるようになり、アーセナルは押し込まれていきました。意図の内か外かは知りませんが。ただ29:55で早くも、ヌケティアが離れたところを突いて、ラポルト→シルバ→ギュンドアン、運んで絞らせてサイド裏へ、とかやってるので、恐ろしいもんです。

続いて、アーセナルの攻撃、シティの守備です。アーセナルははっきりとした4-1-5で選手を配置します。対するシティ、まずはジェズスがアンカーを隠します。隠しながらCBに寄せた場合でも、角度が変わってパスが入りそうになると、ダッシュでアンカー隠しに戻ります。ここはめちゃくちゃ頑張ってました。また、GKに出た時などはアンカーのマークをギュンドアンが引き継いでいました。2列目の4枚はゾーン的に横並びになります。そこからWGが外切りでCBに強く寄せていきます。後述しますがこのWGのプレスが素晴らしいんです。

アース攻撃

これに対するアーセナル、GKやCBからまずは外でフリーのSBを狙います。ここにはシティのIHが、ライン間の相手のIHを隠しながら寄せます。ただ、この守備はかなりリスキーです。なんせアンカーは相手アンカーをマークするため、もしくはその準備のため意識も立ち位置も前です。サイドに出たIHの背後、中盤で待つ相手IHを捕まえるのは非常に難しいです。逆IHのスライドもまあ間に合わんので、DFラインから出すしかないですが、IHのSBに対するアプローチ自体なかなか距離があるので、覚悟が入ります。ただ、実際の試合ではここにはほぼボールは出ず、DFラインから対応に出てくることもありませんでした。アーセナルとしてはここは使うべきスペースでした。例えば10:00のシーンでは、セバージョスの立ち位置が低すぎて隠されてしまい、時間がかかる間に相手の撤退とスライドが完了してしまいました。12:00のシーンではこのスペースでヌケティアが受けていますが、ここをセバージョスが使えれば、もしくはその先に走るといった形でプレーに絡めれば、もっと人数を有効に使えたと思います(この場面はシティDFが来なかった分ヌケティアがターンして時間を作れましたが)。他にも31:45では、せっかくIHが隠されずにプレスを外したのに、そこから運んで裏を狙えるチャンスをみすみす逃しています。また、同サイドのサイド裏を狙う選手は大概ヌケティアでしたが(例えば40:00)、それだとボールサイドの相手CBは結構躊躇いなくついて来れます。せっかくWGが大外で相手SBを釣ってるわけなので、HSを縦にIHが突っ走ることで1枚相手CBを削り、それと入れ替わるように近寄るトップに斜めにつけるとか、そこからフリックorターンで逆IHへとか、そういう工夫が欲しかったです。もちろんサイド裏をトップが狙って、中央には同サイドのIHが走り込む、ある種のスイッチのような展開があれば面白かったんですが、それはありませんでした。まずはポジションに近いところで、次のステップでは入れ替わりを絡めつつ、という感じでどんどん強力になっていくものだとすると、さもありなんという感じでしょうか。スペースがあるのは確かなので、ある程度人がいて、意図を持って流し込めれば、なんだかんだこっちの有利なようにボールがこぼれうる状況だったので、かなりもったいなく感じました。ちなみに一応12:00と14:50に続けて2回それなりにうまくいきます。どちらもちょっと正面から回答したわけではないですが。後者については、ウォーカーの中切りからの外への寄せのスピードがえげつなくてシティは助かりました。というかこの力を見込んで、ある程度ライン間は甘めでもOKってことなのかもですね。ただ一応シティはこれを受けてかわかりませんが、17:00にはジェズスがGKに出るのを控える場面が見られます。アンカーに出たくないギュンドアンがストップかけた可能性があります。まあもともと15分で一区切りという方針だった可能性もありますが。

ひとまずSB経由のビルドアップを考えましたが、よく考えれば、CBからの縦パスももっとチャンス創出のきっかけになりえたのでは?と思いました。盤面で考えると、なるほどCBから相手IH背後のIHへ、という縦パスがあってもよろしい気がします。ただ、実際そんな場面はありませんでした。これはひとへにシティのプレッシングの上手さで説明できます。とにかくマレズとスターリングの寄せるスピード、タイミング、切り方が凄すぎて、とても縦パスという状況ではありませんでした。ここがアーセナルとシティの違いだったと考えています。確かにアーセナルも悪い守備ではなかったと思いますが、後ろに人がいない状況で中途半端な外切りをした結果、旋回してフリーになったSBに大外を完全に崩されました。そのプレーでマリは負傷しました。一方でシティも、後ろに人がいないのは同じです。アンカーを出しておいて外切り、そして同時に中盤の選手のサイドへの投入をやろうって言うのだから、相当です。リバプールのようにすぐに戻って埋めてくれるアンカーや逆IHはいません。ただ、とにかく両WGの外切りプレス、それが完璧でした。ボールの移動中に寄せることで一気に距離を詰め、CBからの縦パスを防ぎ、SBへの展開も時間をかけさせることで、IHも上手に背後の相手を消しながらSBに寄せられました。

ただ、歪みのある守備であることは確かなので、アーセナル側に解がないわけではありません。例えば、IHがCBの脇に落ちるタイミングでSBが大胆に上がり、大外なりハーフスペースをとる。これが作れれば、相手SBに対して2対1を作れます。いわばこれまではこっちのCB、SB、IHの3枚を相手のWGとIHの2枚で守られていたわけで、ならば一番隠されていたIHで少なくとも1人を食いつかせ、2対2を後ろで作れれば、前に1人送ることができます。CBからボール入れるのは依然きつそうなので、GKあたりから蹴るのが良いと思います。実際セバージョスが降りるシーンはあったんですが、ティアニーの上がりが不十分でふいになってる感じがありました(例えば18:50)。もったいなかったです。また、これは別にSBを上げなくても、もともと前にいて隠されっぱなしのIHでもいいんですよね。直接ライン間のIHに蹴れれば言うことなし、そうでなくてもGKからアンカー背後やサイド奥に蹴ってこぼれを拾うでも良いわけです。ヌケティアの空中戦に期待はしづらいですが、GKがフリーのタイミングで主体的にWG、トップ、IHがスイッチしながらボールを要求することはできたはずです。9:30とか27:40とか43:40とかはスペース作りが不十分ですが、理屈としてはいい感じです。一方で、26:20や30:20のシーンに見られるように、前に入ってもこぼれ拾う組の到着が遅れる場面もありました。これではいけません。また、逆にSBの位置をぐっと下げるという手もあります。こうなるとシティのWGは外切りを果たそうとすればかなり回り道をしなければならず、時間的にも角度的にもCBに縦パスを出す余裕が生まれます。シティWGが妥協すれば、SBにボールを渡せます。立ち位置下げてる分、自らライン間に侵入するのは難しいです。多分IHが立ちはだかります。ただそれでも、SBには時間が与えられ、IHがライン間で受けられるポジションどりをする余裕、あるいは裏に向かって走る余裕ができます。結果論だから好き勝手言えるわけですが、結果論だからって無価値なわけではありません。いろいろ可能性がありえたことがわかります。なんとかこの結果論に基づく修正を、試合終了までに間に合わせたかったところでした。実際は間に合っていて、いざ修正しようというところで退場者が出たってことかもしれませんが。

以上です。後半は書きません。もし読んでいただいた方がいたならありがとうございました。お疲れ様でした。


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