多様性と自由の対価として、私たちは対話を義務づけられた。
「これからは多様性の時代です」
待ち望んだ週末。生ぬるい空気が流れる午後のリビングで、テレビから生真面目なコメンテーターの声が耳に入る。そちらにチラリとひと目をやってから、また私は手元のスマートフォンで読みかけの小説に意識を戻そうとする。するのだけれど、どうにも一度耳に入り込んだ「たようせい」という言葉が妙に頭に引っかかってしまい、もう私はどうにも活字の世界に出戻ることができなくなってしまったようだ。
こうなると、私の頭はもう考えることにガコンとスイッチが入って戻ることは