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睡眠負債・・・体験エッセイ②

 〝睡眠負債〟という語が最近注目されている。
 睡眠不足が積み重なると、自律神経のバランスがくずれ免疫機能が低下。うつ病やガンなどの疾患をまねき、認知症にもなりやすいという。
 私は自律神経の失調と、時々おこる免疫力低下を実感している。うつっぽい時もあったかな。「えーと、あの人の名前……」これは認知症の入り口だろうか?

 睡眠は、休息と心身のメンテナンスに重要な時間。眠っている間にでる成長ホルモンが細胞の修復をし、脳内では記憶の整理が行われる。それなのに私は、時間がもったいない気がして、かなり睡眠をないがしろにしてきた。今さらながら反省している。

 ただ、寝る間を惜しんで仕事や勉強に取り組むのが〝美徳〟とこれまでされてきた。残業なんて当たり前、仕事の後は飲みニュケーション。栄養ドリンクのCM「24時間戦えますか!」の、まさにあの世代に私も入るのだ。
 今は、働き方改革が叫ばれ、残業を強要するものなら、ブラック企業だ! パワハラだ! とすぐに世間からたたかれることだろう。

 私の場合は、働く主婦ではあったが、教育や文化に関するボランティア的な役割をこなすために、睡眠時間を削ってきた。文字校正の仕事に加え、都城文化誌『霧』の編集校正という、これまた目を使う作業を家でしていた。そこに、都城市民会館の保存運動が2005年から加わる。
 家事を終えた夜に、調べ物や守る会のメンバーらとメールでやりとりなどしていた。睡眠時間を3つに分けてやり過ごしていた時期もある。

 会社から帰宅するのが夕方4時半、疲れているため1時間半眠ってから炊事にとりかかる。夕食後は満腹感と疲れで家事がはかどらないため、またいったん眠る。深夜に起きだし、片づけや入浴を済ませパソコンに向かう。
 眠気がおそう明け方に寝て、起きたら朝食と弁当を作り、出勤前に下書きしておいたメールを送信するという日々が続いた。
起きている間は目を使う。睡眠不足で抵抗力は落ちる。よって角膜潰瘍といった眼の不調で、眼科に通う事がひんぱんだった。朝ベッドから起き上がれず、会社を休んだこともある。

 2007年は、商業高校PTA副会長と、市子ども会育成連協副会長の役目も加わる。やることが増えたが義務ではなく、こうした方が良かろう、皆さんの役に立つだろうと自ら取り組んだことの方が多い。

 ある時、PTAの規約を読んでいて、役員が3人多く選出されていることに気づいた。改善は翌年、会長は留任で、私の後任もPTA新聞仲間から見出していたので、次年度役員は1度の会議でみな決まった。
「こんなこと初めてだ!」
と教頭先生が感激されていた。
 副会長を1年間しただけの私を表彰して下さる話も出たという。規約上それは無理と承知、お気持ちだけで十分である。
 また、私が作成したPTA新聞係りへの文書が、ひな形として翌年も活用され、嬉しかった。参加したくなる、仲間意識が高まる文章に……との苦心が報われたと思う。

 都城市民会館は2007年に南九州大学への無償貸与という形で保存が決定し、翌年はPTA活動からも解放された。が、2011年からは、宮崎県社会教育委員に。
 ありがたいことに、研究大会などで発表や講演の機会もいただいた。その資料作成にも熱が入りすぎる私。母から「その作業はいくらになるのか?」と非難されるのが嫌で、深夜にこっそり作業をしていた。

 夜間作業といえば、夫が入院中の3ヶ月間、文房具店の在庫整理とレイアウト替えを、夕食後の3、3時間をあてて行なった。
 また、私の事務所の壁を白ペンキで塗るのも、文句を言う母が寝た夜にやっていた。この時は血尿が出て、さすがにこれはまずいと心配したものだ。

 そうした作業や寝る前に考えを巡らすこともあり、睡眠時間は短くなるが、熟睡できていれば大丈夫と思っていた。若さゆえだろう、今の私ならまったくお手上げである。
 〝頑張る〟は良いことだが、過労で健康を害す、命を縮めるなどあってはいけない。
 「睡眠は能力を生かすためにも大切。私は8時間眠るようにしている」
と、台湾のIT担当大臣の天才、オードリー・タン氏は言う。睡眠や健康の管理ができてこそだ、とつくづく思う。

 私ももう無理はきかない。心身のSOSには素直に従い、睡眠時間の確保にも努めたい。〝睡眠負債〟は完済すれば、病気の予防、体の動きが楽、ストレスに強くなり集中力も高まるなど期待できるという。
 これまでの〝睡眠負債〟を徐々に返済していけたらと思う。
      2022年5月記

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