見出し画像

my History


最近仲良くなった人とLINEを交換した時に、アイコンの写真がちょうど一年前に撮った写真なのだけれど「別人みたいだ」と言われた。

最近顔が変わったと言われることが何度かあって
(整形してません)
えー?そんなことないよ、髪型の違いでしょと思っていたけれど
自分でも見たら一年前の写真とは雰囲気が変わったと感じた。

やっぱり看護師時代のわたしは、今とは違う。
だって気を抜いてばかりではやれない仕事だから。
顔が変わったと思うほど、人生の在り方が変わったのだ。


それはそうとしても、自分のための人生を生きようと決めて、コーチや講師として歩き始めたけれど、PCのスキルや企業で働いていた頃の人脈をたくさん持って独立していく人たちを見ると羨ましく思う。
注射や採血がうまくても何にも活かせないよ… 病院以外のフィールドで資格が活かせることが無くて本当に残念だと心の底から感じていた。

先日、憧れの生き方をされている方とお食事をさせていただく機会があり、その方からあなたの人生の棚卸しをちゃんとやった方が良いとアドバイスを頂いた。
看護の世界しか知らないわたしだけれど、そうだよね、これから新しい生き方でいくためにもちゃんと振り返ろうと思えた。



看護師のわたしが見てきたこと

看護師として得た情報は口外無用だから、今までの経験を外で話すことはなかったけれど、看護師の仕事ってこんなことがあるよっていうのは知りたい人もいるだろうと思うので強烈に記憶に残っていることを記そうと思う。

わたしは国立国際医療センターの付属看護学校を卒業して、そのまま医療センターの小児病棟に就職した。
小児病棟時代は、白血病の子供たちがほとんどだったけれど、他にもいろいろなケースがあった。

「父親と娘の性交渉で生まれた知的障害児」のケースにかかわったことがある。
その家庭環境やお母さんになった娘さんの気持ちは、当時のわたしにはかみ砕けないものだった。
わたしがかかわったのは、知的障害を持って生まれて来た子どもが病気になって入院してきた一定期間だったけれど、面会に来るのは父親であり祖父でもある人。お母さんは一度もお会いすることがなかった。
ニュースでは流れない事件にならないこと。やりきれない悲しさ。国の制度だけではどうにもならない現実になんとも言葉にできないものを感じた。

もう一つ忘れられないのが「代理ミュンヒハウゼン症候群」のお母さんのこと。
代理ミュンヒハウゼン症候群とは精神疾患なのだが、そうと気付くまでに相当の時間を無駄に使ってしまった。この精神疾患は子供をあえて傷つけて、献身的に看病するお母さんとして同情や賞賛を集めるという病気。
生後数か月の赤ちゃんを連れて入院してきたお母さんに何か違和感を感じてはいたけれど、わからないまま赤ちゃんの検査を重ねるだけで、その赤ちゃんの命を守ることができなかった。
そのほんの数か月後に、亡くなった赤ちゃんのお姉ちゃん(たしか4歳だった)を連れてまた同じお母さんが入院してきた。
その時はお母さんの付き添いで個室に入院したのだが、4歳の女の子が何も食べない、ジュースを飲ませたら吐いた、採尿カップにおしっこをさせたら血が混じっている…など、一日のうちに何十回もナースコールをしてくる。
わたしたちナースがコールの度に訪室するのに、その現場を見た人が一人もいないことにおかしいと気付き、お母さんの精神疾患に結びついた。
お母さんを子供から離す時間をとって、子供に飲ませようとしている薬がないか、危険なものを持っていないか、こっそり探偵まがいのこともやった(笑)
悲しいことに、4歳の女子の子はお母さんを守るために、本当のことは言わないのだ。どんなにお腹がすいていても、医療スタッフとお母さんの前では何も食べないし、何も言わない。たったの4歳児が、どんなにお腹がすいてもお母さんの幸せが自分の幸せなのだということを知って打ちひしがれた。
行政に介入してもらって、お母さんから子供を引き離すという措置が取られたけれど、あの時も後味が悪かった。
悲しい経験。

小児科から成人に移っても、あえて自分を病気に仕立てる人は結構多かった。もちろん、自分らしく生きていなかったり、ストレスフルな状態だと身体が壊れるという人が多い(というか、ほとんど病気ってそれ)けれど、
そういう意味ではなく、病気であることで何かの利益を得ようとする人は、きっと皆さんが想像するより多い。
病気の自分でいることで守りたい何かがある人たち。
そのことに自分で気付いていない人もいれば、わかっていて病気になりたい人もいる。
「できるだけ重い病気になりたいの!」とニヤッと笑った女性の顔が薄ら怖かった事が忘れられない。

病院にいると、本当にいろいろな人を見る。
その人が得たいものって、その人にしか解りえないものだ、ということがわたしが学んだことの一つなのだろう。

長年の看護師の経験があることで、世の中は広い、価値観も無限大に広いということを知っている。


技術や知識以外に身に付けた処世術

外来にいたことがある。
外来ナースの大事な役割のひとつが、待たせている患者さんのクレーム処理。
予約診療なのに、必ず待たせてしまう。
待っている患者さんは健康な人ではなく、待つのも大変、イライラもする。
何時間待たせるんだ!どういうつもりだ!と大声を出す人もいる。
診察室の医師が遊んでいるわけではなく、次々と想定外のことが起きるし、病棟に入院中の患者さんの主治医が外来診療中だと電話で連絡が来て診療が止まるなんていうのはザラ。

イライラしている人のイライラを爆発前に取り除いておいた方が楽なのを習得し、菩薩スマイルでその方の前にしゃがんで話しかける、なんていうことをしていた。
爆発前の地雷撤去。
笑顔で何とかできることが結構ある。
こういうタイプの男性にはこれが有効、この言い回しが効く、女性にはこれが有効、それもマダムタイプと下町母ちゃんでは対応も変える。

本気で体調がすぐれないのに、何も言わずに我慢していそうな人は見逃さない。

そうそう、何日もお風呂に入っていないような不潔な男性を診察台に寝かせたら、レースのブラジャーとレースのパンツを付けているのを見たことも。
それだって表情も変えずに流すことができる。
(心の中では、え~~~~~~!!と叫ぶけれど)(笑)

エロ話をしたくてたまらないおじさんもたくさんいて、その人のタイプに合わせて適当に付き合ってやることもあれば、いなすこともある。

パッとみてその人がどんなタイプでどんな状態かを見極めるって、看護師ならではの特技かもしれない。
今これを書きながら、こんなことをしていたんだな〜と思うと、わたしがいつもまわりの空気を察知しようとセンサーを働かせていたのも当然の事かなと思えた。

今は前ほどのセンサーは働かない。
なぜかといえば、必要がなくなったしやっぱり疲れるから。



集大成としての仕事

25年の看護師歴の中で、わたしは透析看護が一番長い。
自分の生活スタイルや住居に合わせて病院を移りながら、通算で19年も透析畑にいた。

透析とは、週に3回、透析前後の処置を合わせると一回に5〜6時間もの時間を一緒に過ごす特殊な世界。
治って退院することがない、死ぬまで続く関係。どんなに濃厚か想像がつくでしょうか?
濃い関係性ゆえに、寄り添うこと、勇気付けること、あらゆる手を尽くしてたくさんやった。喜びもたくさんあったし、その方の生い立ちから始まる病歴や人生の経験や家族環境にまで深く知ることができた。
看護師としてのやりがいが大きかったのは間違いない。

ひとりの人を長期にわたって観察するということを19年もしてきたので、わたしの中にかなりの情報がデータとしてたまっている。

腎臓が悪くなった時に選べる治療法がいくつかあるのだけれど、その患者さんの価値観を聴きながらどの治療法を選ぶのかを相談しながらサポートしていくのは、わたしがまさにやりたかった仕事であり、看護師としての集大成であったように思います。



病気というものについて

たくさんの人を見て思うのは、みんなその人らしい病気になるということ。
病気には病気の顔(性質といいますか)があって、
患者さんの性質によく似ている。
だから、同じ病気の人はなんとなく似た性質。

言いたいことが言えない人は身体の中に塊ができるし、自分を責める人は自分を攻撃するタイプの病気になる。

神経質な病気、自堕落な病気、甘えん坊の病気
そんな感じ。

それから病気って人生の中ではプレゼントになっていることが多い。
もちろん病気になりたい人なんていない。なったら困るし辛いし大変。
もし病気になってしまったら落ち着いて、自分の事を振り返るチャンスだととらえてほしい。
結果的に、病気になることで生き方を変えざるを得なくなって、その後の人生が豊かになる人がたくさんいる。

これは病院にいたら見えない部分で、わたしが仕事以外の場所で多くの人に出会い、話を聴いて知ったこと。

職場関係の人の中でしか生きていない医療従事者はこれを知らない。
医療関係者はもっと外の世界につながった方がいい。
価値観が凝り固まっていたら目の前の患者さんを理解するなんて無理だから。

みんなに言いたいことは、健康は大事ですという当たり前のこと。
病院が何とかしてくれると考えている人は、考えを改めた方がいい。

病院は万能じゃないし、医師は神様ではない。


さあ、どうする?

ここまで振り返ってみて、やっぱりやりたいことは対人支援なんだなという確認。かかわった患者さんの数はのべ60万人以上だ。
経験が活かせる特技として、技術や知識以外にもなんとなくありそうだなと思うことはできた。

わたしならではのやり方でもっとやれることがあるはず。

整理したからこれからどう使っていくかを考えよう。
今のところはここまで。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?