【企画参加】夏の香りに思いを馳せて
こちらの企画に参加します(*'▽')ノ✨💖✨
「嫌や!絶対に嫌!」
「瑠璃、そう言わんと連れてってあげて。
茉奈、可哀想やろ?」
「絶対に嫌!
初めて澄玲ちゃんと浴衣着て夏祭りに行くのに、
茉奈なんてコブ要らん!」
「瑠璃、コブは言いすぎや。
お母さん、盆踊り係やから連れていけん。
茉奈がずっと隣でおとなしく出来る訳ないんやから。
ねぇ、瑠璃。お願い!
その代わりに、お小遣い多めにあげるから。」
「急にそんなん言われても嫌!
友達と行くのに邪魔者がおるんも嫌!
お姉ちゃんやからって何でも押し付けんといて。
お母さん、いつも私に甘えすぎや。
澄玲ちゃんかて気ぃ使って楽しくなくなる。
茉奈はお母さんの隣におればいいやん。
私、知らんよ!
初めて友達同士で行けるのに、酷い!嫌や!
いつも私ばっかり我慢やん。
お姉ちゃんなんて損ばっかりや!
お小遣いなんかで騙されん!
こんな家嫌い!お母さんも嫌い!
茉奈も嫌い!!」
しもた。
言いすぎや、、、と思ったけど、
勢いづいた口は止まらんかった。
黙ってビール飲んで、野球中継見とったお父さんが、
「煩い!」
そう言って私の頬を平手で思いきり叩いた。
凄い怖い目で睨んで、
「瑠璃が連れていけ。」
そして私をもう1回にらんだ後、怖い目は野球中継に戻った。
巨人が負けとるのは私のせいじゃないのに。
お父さんなんて嫌い。
なんも分かっとらん。
いつも怒って、叩くから嫌い。
暴力で言う事聞かせる男なんて嫌いや。
いつも私ばっかりに我慢させて叩くお父さんも、
私に甘えてばっかりのお母さんも嫌い!
涙が止まらないまま、
呆然としとる茉奈の手をひいて、
お母さんの赤い財布から二千円抜いて家を出る。
澄玲ちゃんとの約束まであと15分。
11歳の夏祭りは、全然楽しくなかった。
澄玲ちゃんは、茉奈がおっても大丈夫って言ってくれたし、
お母さんからもろた二千円で豪遊したけど、
全然面白くなかったし、
家に帰りたくなかった。
盆踊り係の仕事しとるお母さんを見んようにして
澄玲ちゃんと茉奈の三人でうろうろして、
「お金もなくなったし帰ろっか」って話になった。
茉奈は私が家で泣いたのを知っとるから、
私に話しかけて来ん。
黙って、ぎゅっと右手を握ってた。
正直、それが一番辛かった。
茉奈、ごめん。
お姉ちゃんは優しいお姉ちゃんになれん。
嫌いじゃないのに、傷つけるような事言ってごめん。
茉奈が悪い訳じゃなくて、親が悪いって思っとるよ。
どれも心の中で思ってるのに、口からはなんも出て来ん。
捻くれて意地悪なお姉ちゃんなんて最低やなって、
心のどっかで私が私を責める。
帰り道、澄玲ちゃんの家まで茉奈といったら、
澄玲ちゃんのママが出てきてくれた。
「楽しかった?」
「うん!茉奈ちゃんも可愛いかったよ💖」
明るい声で澄玲ちゃんが言ってくれる。
私は無言で頷いて、
茉奈はずっと下を向いたままこくんと頷いた。
「茉奈ちゃんの面倒見てて瑠璃ちゃんは偉いなぁ。
ちょっと待っとって。
、、、あ、あったわ。
この前の花火した時の残り。
ちょっとしかないけど、思い出にやろっか。」
澄玲ちゃんのママは優しくて綺麗な人。
私のお母さんも同じ位綺麗で、優しくしてくれたらいいのに。
意地悪な私のまま、心の中で呟いた。
茉奈と私に線香花火を持たせてくれて、
澄玲ちゃんと、澄玲ちゃんのママと四人で小さな花火大会。
「茉奈ちゃん、お姉ちゃんとおそろいの浴衣可愛いね。
お姉ちゃんと澄玲と三人で楽しかった?」
線香花火に見惚れてた茉奈が顔をあげて、
「うん!二人とも優しいから好き!」
って大きな声で言うから、涙が出てしもた。
今日の私、最低最悪なお姉ちゃんやったのに、
茉奈はこんな私でも好きって言ってくれる。
小さな手で必死に手を握ってくれる。
だめな私でも「お姉ちゃん」って呼んでくれる。
泣き出した私と、
貰い泣きしちゃった優しい澄玲ちゃんと澄玲ちゃんのママ。
なんでか三人で泣きながら、茉奈の頭をゆっくり撫でた。
可愛い、可愛い、私の妹。
ダメなお姉ちゃんやけど、ずっと味方やからね。
ポタッと落ちた線香花火の残り香と
情けないお姉ちゃんの懐かしくて切ない思い出話。
🎆
情けない私の夏祭りの話を聞いて、
赤い目になった貴方と、
一緒に楽しむ線香花火。
来年は茉奈も呼んで一緒にできたらいいね。
笑っちゃうほど、目と鼻が私とそっくりなん。
きっと仲良くなれるよ。
✨ おしまい ✨
「夏祭り」で書いてみました(*'▽')ノ
最後まで読んで下さってありがとうございました✨
優しいお気持はありがたく、ちゃっかり頂く方針にしました💖