汐月

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汐月と申します!主に小説で活動しております。マガジンにしている連載小説の方は毎週土曜に更新させていただく予定です。よろしくお願いします!

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  • さなぎでいれない私たち

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【設定集】さなぎでいれない私たち

   皆さん、こんにちは、こんばんは。今回、今までとご覧いただきありがとうございます。  今まで長々と物語を書いてきましたが、当然書ききれなかった設定もあり、また拙い文章のため誰が誰だかさっぱり、となっている方も多いかと思います。(私もそうなりました)  なので今回は、この機会に登場人物、向日高校の紹介をしようかと思います! ・瀬戸内瑞穂 ・尾張清武 ・賀屋隼人 ・美裏凌 ・権田瑠偉  ・藤村杏莉  ・白鳥透薫 の順で紹介しますので、どうでもいいキャラ、登場しておらずネ

    • 【最終回】さなぎでいれない私たち −−− 三月⑤ −−−

           大学生になり、県内ではあるが遠いだろう、とお母さんたちは私に車の免許を取らせてくれた。  車通学かバス通学かの違いはあれど、大学までの道中も向日高校の前を通る。  そうすると、無意識に尾張くんの姿を探してしまう。その時には自分があの頃と同じように制服を着ている気さえする。  卒業後、尾張くんが私の前からいなくなってしまったことは、私の胸にぽっかりと穴を開けた。そして私は、それをあまりにもすんなりと切り離してなかったことにしてしまうことができた。けれども、切り離

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      • さなぎでいれない私たち −−− 三月④ −−−

         尾張くんから逃げるように駆け出す。前を見なかったせいで転びそうになって、人にもぶつかって、「ごめんなさい」という声は震えていて。 「瀬戸内……?」  転びそうになった私を支えてくれたのは、賀屋くんだった。

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        • さなぎでいれない私たち −−− 三月③ −−−

           卒業式は、思ったよりも感慨深いものではなかった。最近は卒業証書を筒に入れる学校は少ないように思うが、向日高校は昔ながらのその方式だ。散々地味だとか田舎臭いと言われた制服も、これで終わりだと思えば愛着がわかないこともない。  卒業証書授与、仰げば尊し、送辞。けれどもそんな恭しいものより、最後のHRが一番泣ける。

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        【設定集】さなぎでいれない私たち

        • 【最終回】さなぎでいれない私たち −−− 三月⑤ −−−

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        • さなぎでいれない私たち −−− 三月④ −−−

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        • さなぎでいれない私たち −−− 三月③ −−−

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        • さなぎでいれない私たち
          55本

        記事

          さなぎでいれない私たち −−− 三月② −−−

           「……そういえば、賀屋くんがここにこだわる理由って何なの?」  賀屋くんは驚いたような顔をした後、恥ずかしそうに笑った。 「それは−−−俺ん家、小学校まで転勤族でさ、周りと馴染めなくていじめられてたことも多かったんだ。俺はこんなだし、結構へらへらしてたんだけど、やっぱり辛くてさ……」そこまで言って彼は、天を仰いで顔を手で覆った。 「あぁ、言いたくねぇなぁ。カッコ悪」  私は「そんなことないよ、教えてよ」と賀屋くんのほうを向いて少し見上げる体勢になって笑った。彼がこん

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          さなぎでいれない私たち −−− 三月② −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 三月① −−−

           ** **  三月:青い春は** ** 美裏くんに呼び出されて、卒業式の二日前に学校の校門前に集合した。ここで美裏くんと尾張くんは最後の勝負をする。駅伝と同じコース、一〇キロを同時にスタートして走るのだ。

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          さなぎでいれない私たち −−− 三月① −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月④ −−−

           賀屋くんのスピーチを聞いて、(正確に言えば見てだけれども)彼はやりたいこともなりたいものも決まっているのに自分が何一つ持ち合わせていないことを不甲斐なく思った。  彼はなぜ、この場所にこだわるのだろうと思った。大学だって、(地方活性化について学ぶためとはいえ)他県に行くわけだし、ここでは彼のポテンシャルは発揮しきれない気もした。

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月④ −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月③ −−−

             「賀屋くんが県内のスピーチコンテストで優秀賞を取りました」と、いう話を聞いたのはいつだったか。  今まで振り返る間もなく時が過ぎていって、そのせいで時の流れが早いとも思わなかったけれど、思い返せばもうずいぶん前なことな気もする。

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月③ −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月② −−−

           「努力しなかったら自分には何が残るんだろう、そう思うから」  なんだか、その言葉はすとんと胸に降りてきた。きっと、あまりにもあっさりと腑に落ちたせいだろう。  優秀な成績も、インターハイの出場経験も、将来彼を守ってはくれない。  彼に残るのは、努力し続ける力を得た自分のみなのだ。けれどそれさえあれば、彼はきっと歩みを止めずに進んでいける。欲しいのは、たったそれだけなのだ。

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月② −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月① −−−

           二月:家庭研修  過呼吸で倒れてから私が学校に行くことはなかった。(もちろんセンター試験は受けたがそれは外部会場だったのでカウントしないでおく)しかし、それが欠席日数に特別影響を与えるわけでもなかった。あれからすぐに学校は家庭研修期間に入り、自由登校になったからだった。  私は休みの間にカウンセラーに相談に行き、体調や当時の心情などを話した。思い出せばまた胸が苦しくなる気がしたから、何回にも分けてゆっくりと自分の中でももう時の心情を整理して。  カウンセラーの先生は、

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          さなぎでいれない私たち −−− 二月① −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月⑤ −−−

             頬を撫でる空気は柔らかく、暖かかった。 「起きたのね」と、保健室の先生が言った。天井は、よく小説で表現されるほど白くはなかった。どちらかと言えば薄橙色っぽくて、ほくろみたいな黒いしみがぽつぽつとついていた。  頭が真っ白で、何を言えばいいのかもわからなかった。ただこの暖かさに包まれて、ぼぉ、っとしていたい気分だった。 「職員室の前で過呼吸で倒れたのよ、あなた」

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月⑤ −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月④ −−−

           なんで私がこんな苦しい思いをしなくちゃいけないんだ。  その思いだけが、ぐるぐると回った。  職員室に行ってどうしよう。ノックをして、先生の席は入り口のすぐ近くだから「先生、お話があって参りました」と直接言えば素直に話を聞いてくれるだろうか。  心臓がバクバクしていた。もし怒られたら、酷く傷ついてしまう自信があった。

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月④ −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月③ −−−

            権田くんが出て行くのを止めるように道を塞ぎ、先生は「座れ」ともう一度言った。  それによって権田くんは動かなくなったけれど、同時に座りもしなかった。 「こっちはアンタと違って受験前で苦しぃんだよ。適当な規則で縛んな、社会勉強とか言い訳して不必要なことでかき乱すな」  彼は相手をけなすことから、自分を正当化する方法に変えた。担任がそれを聞いて、顔を不機嫌そうに歪めるのが見えた。

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月③ −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月② −−−

               新学期が始まり、また校長の長々しい話を聞いた。  受験は団体戦です。なんちゃらかんちゃら。  申し訳ないけれど、単語帳をしたいから黙ってくれ、と言いたかった。それでもこっちの事情なんて知ったこっちゃない、というように集会は当初の予定より長引き、、次の授業時間は削られて残り二五分しかなかった。  担任は、「時間ないから早く授業準備して―」と言った。それに権田くんが、「自習じゃないんですか、次、『参考』の範囲ですよね」  といつもみたいなケンカ腰で言った。もう、

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月② −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月① −−−

          **  一月:学級崩壊**  駅伝大会の後、私の周りはいつもより寒々としていた。  何も知らない杏莉ちゃんたちが、今まで通り仲良くしてくれたけれど、賀屋くんや尾張くんとは口を利かなかった。美裏くんに至っては、顔を合わせすらしなかった。  そのまま冬休みに入り、私たちの関係は修復されることなく、亀裂だけが広がっていく気がした。

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          さなぎでいれない私たち −−− 一月① −−−

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          さなぎでいれない私たち −−− 十二月⑧ −−−

           彼はあくまでも冷静だった。言葉が強くなってもそこには何の熱もなくて、ただ淡々と私を批判しているように思えた。 「君はキヨに、ただ願望を押し付けているだけだ」

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          さなぎでいれない私たち −−− 十二月⑧ −−−

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