さなぎでいれない私たち −−− 三月② −−−

 「……そういえば、賀屋くんがここにこだわる理由って何なの?」

 賀屋くんは驚いたような顔をした後、恥ずかしそうに笑った。

「それは−−−俺ん家、小学校まで転勤族でさ、周りと馴染めなくていじめられてたことも多かったんだ。俺はこんなだし、結構へらへらしてたんだけど、やっぱり辛くてさ……」そこまで言って彼は、天を仰いで顔を手で覆った。

「あぁ、言いたくねぇなぁ。カッコ悪」

 私は「そんなことないよ、教えてよ」と賀屋くんのほうを向いて少し見上げる体勢になって笑った。彼がこんな顔をするのも、昔の話をするのも初めてで、それがまた私に何か変化をもたらす気がした。

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