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電車ごっこ 【自由詩】

ぱーん
出発進行

ガタン

ゴトン

ガタン ゴトン

ここにレールを引きます
皆さん どいてください

ガタンゴトン

商店街の皆さん
どいてください

ぱーん ぱーん
ここは通過します
ぱーん ぱーん
白線の内側に下がりなさい
ここは通過します
八百屋さん 通過します

あなたがた
ここは線路です
買い物カゴどけてください
危険です 危険です

肉屋さん
停車します
2分間 停車します
ハムカツ弁当いかが
ハムカツ弁当いかが
買います 買います
急いで買います
急いで 急いで
発車します
ぱーん
発車します

ボロボロこぼさないで
車内を汚さないで
窓からクズを投げないで
ぱーん ぱーん
この先
少し揺れます
吊り革につかまりなさい
大きく揺れます
ぱーん ぱーん

この先は
魚屋さんの長いトンネルに入ります
ぱーん ぱーん
新鮮なカツオが釣れました
アサリが砂を吹きます
タコの脚は何本ですか?
サバは元気にしています
タイも元気にしています
バッサバッサ
さばきます
バッサバッサ
生臭さが身に染み
しみじみと
沁み入ってきて
岩に沁み入る
蝉の声
夏の日のことを思い出しますね
ああ
あれはいつの日のことだったか
みんみんが鳴いていましたね
僕らは風の匂いを追いかけて
虫網を振りまわして
どこまでも行けるような気がした
どこまでも
どこまでも

(おい、おまえら、勝手に入るな。俺ん家だぞ。おい、おい!(◎_◎;))

ここは接収します
新しい路線ができます
土を盛って
橋を架けて
トンネルを掘る

ぱーん ぱーん
ぱーん ぱーん

僕たち
どこまでも行けるような気がした
町も森も他人の家も僕たちの庭だった
真っ赤な夕陽が
どかーんと真っ赤な夕陽が
どかーん どかーんと
圧倒的に巨大な
僕らは夕陽に向かって
レールを引き
電車を走らせ
世界は果てしなかった
ぱーん ぱーん
どこまでも
どこまでも
進んでいけるような気がしたものだった


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