見出し画像

眠りかけているのかもしれない 【詩/幻想詩】

(霧が濃くなってきたね)

通りを蒼いものが流れている

(この先は急カーブのはず)

スローモーションで進む
どの家も
シルエットが消えかかっている

(瞼が重くなる)

後ろからふいに
墨色の影
斜め前方から
青っぽい影

(注意力がなくなっている)

ケンタッキーフライドチキンが
傾いて見える
カーネル・サンダースの目が
片側に寄っている

(また蒼いものが流れてくる)

何かが首にさわる
ぬるぬると 舌が這うような
電子オルガンの残響

(眠りかけているのかもしれない)

舌は頸筋にそって動いた
ハンドルを不安定にゆらす

(ここはどこなの?)

砂利のうえを進むと
道がとぎれ
前方を柵が塞ぐ

(間違えたの?)

猫の顔をした
ドローンが飛んでいる
眼で追っていくと
霧の隙間から
サンダースが見え
車体を揺らした

(早く行かないと)

蒼いものが流れている
その向こうを薄っすらと
サンダースの
幻が 現れては消え
いろいろなかたちの鼻が
窓に触っていく
小さな枝がはみ出している

(早く車を出して)

窓の向こうで髭が揺れる
ハンドルを握る指に力が入らない
霧のにおいがきつくなる
電子オルガンの低い方の音で
サンダースが何かいっている

この記事が参加している募集

私の作品紹介

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?