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王 【詩/現代詩】

足の裏から
畳の目 よく見えて
いとおかし

額の穴から
天井裏 よく見えて
いとおかし

尾骶骨の割れ目から
プレアデス よく見えて
おかし
イバラードの都 見わたして
おもしろし

五年ぶり
羅漢さま 詣でました
みな
タテヤマの方 見ておりまして
片眼つぶったり
脚 上げたりして
あかときのほう 見ていましたら

うましあしかびひこぢのかみ
とりのいわすくふねのかみ
いもはやあきつひめのかみ
ひなてりぬかたびちをいこちにのかみ
あめにきしくににきしあまつひたかひこほのににぎのみこと

つぎつぎと
生まれ出づる 神様の
またたく間に
亡骸なきがらとなりまして
いとかなし

山肌から朝日
昇ってゆくときでした
紫色の鬼どもが
集まって 来ましてね
三々五々
切り抜いているのは
千枚田 なんまいだ
いとおもろし

(丑三つ時の環状道路に
 幾千万のエレキテルのひびき
 笑い止まらぬ
 おもろ おもろ)

「われは道長の生まれ変わり
 摂政関白である
 何もかも
 思いどおり
 桜を咲かすこと
 雪を降らすことも
 山を崩すこと
 海を干上がらすことも
 できまする お手のもの
 山海の珍味うずたかくして
 百万の天女はべらすことも
 エブリデイ
 この世は我がもの
 わては世界の王である」

そんなん
かまして
我が世の春 謳歌しても
心は慰さまぬのじゃ
いら いら いら いら と
慰さむことがないのじゃ
いとあわれ
あわれなり

いっそのこと
いっそのこと
いちはやくに 出家すべきかと
思うことありますが
それもまた虚しいのです
さびしいのです

鬼が跳んでおるな
この世は鬼ばかりじゃに
さあ もう ひとおもいに
やっておくれ
鬼がくるまえに
さあ もうよいから
はやく
やっておくれでないか
よろし よろし
思い残すことなきにしもあらず

(なんか
 血圧下がってきて
 ひた ひた ひた
 とても気持ちがよいよ
 ああ)

竹林が
さわわ さわわ さわわ

あな おかし

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