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起伏 【詩/現代詩】

夕べから
君の背中を
ゼンマイ仕掛けの列車が走っている

町と町を結ぶ軌道が
くり返される起伏をさまよいながら
頸部にまでとどく

半分とけかかった
夢を見ているので
遮断機は降りたままだった

カン カン カン カン

(もうしばらく待ってみよう
この温かみが消えるまでは)

その駅舎には
蜘蛛の巣が絡まっていて
甘酸っぱい匂いがする

(やがて)

蒸気を吐きながら
眼窩を通り抜けていく
黒い塊り
鉄の匂いをさせながら
血は渓流のように
夜を貫いていく

その先は
行き止まり
ではなく
無限ループ

覗き込んでいると
何ともいえない懐かしさが
込み上げてくる
深い深い洞窟のように

むすうの鉄塔が林立していた
低い空 低い翼
遮断機が鳴りつづけ
音が膨れ
風につかまっている小さな羽
カゲロウの見ている幻覚のように
揺れている

病院は
薄闇の中にあった
半島は崩れかけていた

もうだいぶ前に
首が取り外されている
手術室では
工員たちがメスを仕舞い
帰り支度を始めている

急勾配に差しかかった列車は
紅く点滅した

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