瓦 【詩/現代詩】
この街の瓦は
みな鬼の顔をしているので
フユミは俯いて歩いた
全てが
何かを
いおうとしている
嘘のような沈黙のなか
背中がとても重い
とても寒い
職人たちは
ますます怖い鬼をつくる
屋根に並べておく
フユミはますます怖ろしくなり
職人たちは面白がる
ある日ついに
泣きながら箒をふりまわす
風が茶色くなって
斜めに傾いでいく街
瓦の隙間から
白鳥が飛ぶ
ついに
白鳥になれなかった
醜い白鳥が飛ぶ
職人たちは呆然とし
子どもたちは
いつ果てるともなく
描いている
遠ざかっていくフユミの絵を
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?