ショート 3 誇りある君へ
プロポーズをした。
約4年前、共通の知人からの紹介で出会った彼女にプロポーズをした。
「私がこういうプロポーズ、憧れてたって知ってたの?」
と目に涙を浮かべながら彼女は喜んでくれた。
こういうプロポーズ。
つまり、僕がしたプロポーズとは、行きつけの居酒屋の帰り道、毎回必ず寄る公園で、歩きながら手を繋ぎながら「結婚しよう」と言った。
そんなプロポーズ。
「まぁそんなとこかな」
なんてクールに言葉を返したけど、彼女が憧れてたプロポーズなんて知らなかった。
ただ僕にとって、ドラマとかでよく見る、夜景の見える高級レストランで高級なスーツを着て高級な指輪を渡す、そんな一丁前なイケてることは、遠いおとぎ話のようで、そんなカッコつけたことできなかっただけの話だ。
それでも、こんな僕のいけ好かない一世一代のシチュエーションを、キラキラした目で喜んでくれる彼女と出会えて、これからも共にしていけることは、僕にとって誰にも負けない誇れることなんだと改めて思う。
プロポーズから数日経ち、結婚の挨拶へ行った。
幸いドラマのように厳しく反対されることもなく、お互いの両親に結婚を祝われた。
「あの子は、ああ見えて弱いところもあるから」
と彼女のおかあさんに言われ、より一層強く彼女を守り、大事に幸せにしていこうと自分の中で誓う。
しかし、自分の中で違うだけでは、少しばかり無責任なのではと感じ、その日の夜に、家でそうめんを食べながら彼女に誓った。
僕が守る、君を大事に、幸せにする。
そういうと君は、こう言った。
「それなら、私も、あなたを守るし大事にする。
あ、だけど、幸せはしようと思ってしなくてもいいからね。私、あなたが思っている以上にあなたからたくさんの幸せをもらっているし、だから無理する必要はないから。
幸せにしなきゃなんて特別に思わなくてもいいんだからね。」
君に言われてハッとした。幸せはしようと思ってするものではない、と。
いつも君には、負けてしまうなとつくづく思う。
それから、いろいろ公的な届出を出したり、僕たちが以前から好きだった指輪のショートフィルムを作っている、ブルーが印象的なブランドに指輪を買いに行ったりした。
帰りには、ショートフィルムの曲を二人で鼻歌で歌いながら帰った。
そして、同じ住まいに住む準備を始めた。
不動産屋に行き、物件を見た。
夕日が寝室に顔を覗かせるアパートの2階の角部屋に決めた。
引っ越しの準備はどんどん進み、最後の日。
1人で暮らしていた僕の部屋には、少しの家具や家電が残るだけ。
トースターの底に落ちたパンくずとこげた後が。
壁に貼っていた大好きな映画のポスターの日焼けの跡が。
冷蔵庫の裏に溜まった埃が。
僕が1人でここに住んでいた証が、明日にはなくなる。
そして、パンくずもこげも、大量の綿埃も、少し潔癖な君と一緒になれば、もう今後見ることは無くなる。
1人ではなく、2人に。
たとえ、悩みが埃のように次々に湧いてきても、彼女といれば、どんなものでもさっとぬぐいさって綺麗に元通りになれるはずだ。
どんなに埃をかぶって汚れたとしても、2人で拭けばきっと大丈夫だ。
——————————————————
とっても久しぶりにショートストーリーを書いてみました。
すごく殴り書きです。笑
ただこういう雰囲気の、お互いを尊敬しあったパートナーのお話を書きたくて。
最近、言葉の勉強したいなぁって思うことが増えていて、広告コピーとかにも少し興味があり(それはおいおいお話ししますね)辞書ってすごくいいものなのでは?と再発見したんです。
それで、今回のショートストーリーでは、パッと開いたページの「はっ!」とした単語に交わるお話を書こうかなと思い、数年ぶりに辞書を開きました。
開いたページは「け」のページ。
【潔癖】なんとなくピンときて、なんとなくこれにしよう。そう思いました。
そこから、そういえば今日、お昼ごはんを作る時にトースターを開けたらパンのクズがたくさんトースターの中に落ちてたなということを思い出し、イメージを広げ、、今回のショートストーリーができました。
プロポーズのシチュエーションは、back numberの依与吏さんの妄想プロポーズシチュエーションを参考にしました。(アルバム「あとのまつり」シークレットトラック2より)
どうでもいいですが、わたしの憧れプロポーズシチュエーションも同じような感じです。飾らない感じがとても魅力的だなぁと思います。笑
久しぶりなショートストーリー楽しんでいただけたら嬉しいです◡̈
また辞書を引いてはっ!っときたワードで書きたいと思います。
では!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?