2021年に読んで好きだった本
うっかり年を越してしまいそうになって大慌て。今年読んだ本の中で好きだった作品、印象に残った作品を振り返るのは恒例行事にしていきたいのでなんとか今年中に!
毎年言っていますが2021年に出版された本に限らず、あくまで私が2021年に読んだ本です。
「清少納言を求めて、フィンランドから京都へ」
ミア・カンキマキ 著 /末延弘子 訳
「枕草子」に魅せられてフィンランドから京都に研究のためにやってきた著者のエッセイ。
1ページ目でこれは私の物語かもしれないと思ってしまったこの作品が印象に残っているかなあ。
日本のこと、平安時代のこと、京都のことを知らなすぎることを痛感しつつ、京都に住みながらこれを読めて良かったともしみじみ思った。
宮廷女官たちがSATCの主人公たちと同じだなんていう視点は持ったこともなかったもの!そして東日本大震災を日本で体験していたというのは、どれだけ大変だっただろうかと思う。その時期に私も京都にいたけれど、海外から日本に来ていた方々のことなんて少しも考えられなかった。情報に踊らされることも多かったここ数年とも重ね合わせてしまった。
なによりも「セイ」と語りかける口調と深い洞察に感動した。
「枕草子」自体を読まなければと思うけれどなかなか手が伸びず、でもその後読んだこれも面白かったし
「平安女子は、みんな紹介必死で恋してた」で紹介されていた三島由紀夫の「古典文学読本」も読みたいと思っている。
「海と山のオムレツ」
カルミネ・アバーテ/著 、関口英子/訳
節目ごとの出来事と、それに深く結びついた郷土料理の思い出を綴った短篇集。
目で読んでいるのに、美味しいものを口から食べて栄養が身体中に満ちるみたいな感覚があった作品。びっくりした。熱量があってとにかく美味しそうな表現がたまらない!
「急に具合が悪くなる」
宮野真生子・磯野真穂 著
癌闘病中だった哲学者の宮野真生子さんと、人類学者の磯野真穂さんの往復書簡。
知ってはいたけど手に取っていなかったこちら。これは今ももちろん面白かったけれど、きっといつか今よりもっと必要になるタイミングが来てまた読み直すと思う。
「愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年」
著/大貫智子
戦争によって韓国と日本に引き裂かれてしまった韓国の国民的画家イ・ジュンソプさんとその妻山本方子さんについてのノンフィクション。
イ・ジュンソプさんのことはこれまで知らなかったのだけれど、済州島の美術館はいつか絶対に行ってみたいと思う。丁寧な取材をされたことがよくわかる内容で素晴らしかった。
「肉体のジェンダーを笑うな」
著者:山崎 ナオコーラ
父の胸から「父乳」が出る、といったジェンダーを超えた設定がとても面白い小説集。
男女の非対称性が特に会話部分で生々しく描かれていて、SFのようなユーモアのある設定によって男性も女性も変化していく様子がとても面白かった。本当にこんな風に性差がなくなったらいいのに。。。男性にも女性にもお勧めしたい作品。
語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 「獄中シェイクスピア劇団」
著者:マーガレット・アトウッド 訳者:鴻巣 友季子
シェイクスピアの名作を、世界のベストセラー作家たちが語りなおすシリーズ。
こちらはマーガレット・アトウッドが「テンペスト」を語り直したもの。
入子のようになっている構造がとても面白くて、テンペストを知っていても知らなくても楽しめると思う!(「テンペスト」の概要はちゃんと入っているのでご安心を)この語りなおしシェイクスピアシリーズはどれもお勧めです。次はどんな作品なのか、とても楽しみ。
「あの本は読まれているか」
ラーラ・プレスコット 吉澤康子 訳
冷戦下のアメリカでCIAにタイピストとして雇われた女性が、共産圏で禁書となっている小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連の人に手渡すという作戦にかかわることになっていく物語。
文学の力で世界を変えようとする女性たちの話だなんて、もうそれだけで惹かれてしまう。ハラハラドキドキもするし、シスターフッドの話でもあるし、面白かった。
「フライデー・ブラック」
ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー 著 押野素子 訳
短編集なのですが、どう説明したらよいのだろう。決して楽しいお話ではない、でもなんだろうこのユーモアセンスというか、想像力というか、素晴らしいとしか言えない。。。
「シブヤで目覚めて」
アンナ・ツィマ 著 阿部 賢一 訳 須藤 輝彦 訳
チェコで日本文学を研究している大学生が主人公なのだけれど、その主人公の魂?のような存在のみが渋谷に存在して。。。という不思議な物語。主人公が研究している日本人作家は本当に実在したのではないかと思ってしまうほどで、物語が幾重にもなっていて、すごく面白かった。日本が舞台の作品が翻訳作品であるというのもまたすごい。
「パチンコ 」上下
ミン・ジン・リー 池田真紀子
1910年の朝鮮半島から、大阪、横浜へと移り変わる四世代にわたる在日コリアン一家の物語。
ぐわっと物語に引き込まれて、夢中でぐいぐい読んでしまうという、めちゃくちゃ好きな読書体験が出来た作品。読んでいる間幸せだったー。読みながら遠藤周作作品を思い出した。
「もう死んでいる十二人の女たちと」
パク・ソルメ 著 斎藤真理子 訳
今年は韓国の作家さんの作品をたくさん読んだけれど、これは特に好きだったかもしれない。短編映画を見ているような、不思議な美しさがあった。
「生きるのに疲れすぎて面倒くさくて何もしたくないんです」というワンフレーズにめちゃくちゃ惹かれる。
「大都会の愛し方」
パク・サンヨン 著 オ・ヨンア 訳
ヒリヒリするすごく良い作品だった。
著者の方が、推しと出身地が一緒というのも推せるポイント。。。
(BTSのSUGAも大邱出身)
「外は夏」
キム・エラン 著 古川 綾子 訳
確かBTSのRMが読んだ本として紹介していたのがきっかけで知ったんだと思うけれど、読んで良かったなと思った作品。様々な形の喪失。
「保健室のアン・ウニョン先生」
チョン・セラン 著 斎藤 真理子 訳
すごくユーモラスで楽しい作品!著者が「ただ快感のために書きました」っておっしゃっている作品だと知って納得。
「少年が来る」
ハン・ガン著 井手俊作 訳
これはちゃんともっと勉強して改めて読み直したい作品。
どの作品も本当にお勧めです。
また来年もたくさん本が読めますように。
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