梅酒

 
突然目の前にドリンクのメニューが並ぶ。マスターが差し出してくれらしい。
・キール
・スクリュードライバー
・テキーラサンライズ
・サイドカー
・ピニャコラーダ

私はしばらく悩み、他の客の様子をうかがった。店にはメリーウィドウを飲む女性一人が端の席に、もう一人フードをかぶった人が私と女性の間に。
するとマスターが
「あちらの女性からです。」
とブルームーンを受け取った。
考えあぐねていたので気を利かしてくれたのだろうか。フードの客はアイオープナーを頼んだが
「悪いね。今ちょうど切らしているんだ。」
とマスター。代わりにコンクラーベを頼んだ。名前のおかしさに笑いかけた。女性が飲み終わったころを見計らって、私はお返しにシャンディガフを。本当は女性に向けグラスをカウンターの上を滑らせて渡したかったが間に人がいるのでやめておいた。
次を悩んでいるとき左からグラスが流れてきた。ぽかんとしていると
「お二人のやり取りを見て嫉妬したようです。」
とマスターはほほえみながら教えてくれた。顔は見えないけどかわいいところあるじゃないかとにやけた。私だけでなく女性の方にも渡したらしい。なんだかスマートで悔しかった。
私はジントニックを、女性はカミカゼを受け取った。酔ってきたので最後にしようと、カリフォルニアレモネードを頼んだが飲み切れず残してしまった。
その後家に帰ったが寝る気になれず、しばらくしてもう客のいないバーに戻り、ベルベットハンマーを飲んだ。さっきのフードの客についてマスターに尋ねたが私の気のせいだったらしい。あの時点ですでに酔っていたとは、我ながら情けない。マスターとの会話に盛り上がり二時間半が過ぎ、店を出ると朝日が昇ろうとしていた。

*すみませんがカクテル言葉は各自で調べてください。そうするとなるほどの連発でとても面白いです。

 

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