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ハラスメントはなぜ減らないのか?【DEI#27】

こんにちは。中小企業診断士のさとうたろうです。
ダイバーシティに関するトピックを紹介しています。

企業のダイバーシティやインクルージョン施策を検討すると、結果的に突き当たるのが「ハラスメント」です。
最近は、大手企業におけるハラスメント対応への優先順位が下がっているような気がしてなりません。SDGsやESG施策への優先順位はどんどん上がっていますが、ハラスメントへの対応は変わらず残ったままというケースによく出会います。
ハラスメント対応を強化としても、社外にはアピールしようがないことなどが要因の一つかと感じています。

ハラスメントはなぜ減らない?

ハラスメント解消に向けたプランを考えているときに出会ったのが、
ハーバード・ビジネス・レビューの2021年3月号の論文記事、ハーバード大学教授のフランク・ドビン氏、テルアビブ大学准教授のアレクサンドラ・カレフ氏が執筆された「職場のセクハラ対策はなぜ裏目に出るのか」です。
これおすすめです。

研究の結果、見えてきたのは受け入れたくない現実だった。大半の企業が全従業員に課している研修も、導入した苦情処理制度も、職場環境でのセクハラを解決する力とはなっていうなかったのである。それどころか、2つとも従業員の不満と離職率を高めていた
研究によると、セクハラ研修を実施すると男性は被害者をより責めるようになり、「セクハラ訴える女性は話をでっち上げているか、過剰反応を示している」と考える傾向も強まる。
 そのため、ピュー・リサーチセンターが2018年に実施した調査で、男性の30%以上が、セクハラは「虚偽の主張」が大きな問題であると答えたのも驚くに値しない。また、セクハラを受けたことがある58%の女性が「信じてもらえないこと」が大きな問題であると言ったことも当然と考えられる。

冒頭から衝撃的な事実が紹介されています。
企業のハラスメント対策の大半は、ハラスメント事例を伝えるものと、苦情処理制度ではないでしょうか?
それではどのような対応が好ましいのでしょうか?

ハラスメントに効果的な方策は?

本書では具体的な方策として「第三者介入」と「マネジャー限定研修」が推奨されています。

筆者らが見出した中で最も有望な研修は、「第三者介入」(バイスタンダー・インターベンション)だ。(中略)
参加者全員の任務は誤った行動を芽のうちに摘むことである。これはいわば不審なものを見かけたら知らせる(あるいは何かをする)アプローチだ。
マネジャーだけを対象とした研修も非常に効果的だ。(中略)
筆者らの研究では、マネージャー研修の間、男性が集中して取り組むことが分かった。その理由の一つは、これまで対処の仕方を知らなかった問題は解決できる、新しいツールを手にすると感じられたこと。そしてもう一つは 自分たちが悪役ではなく、ヒーローになれると見なされていたことである。

「自分たちが悪役ではなく、ヒーローになれると見なされていたことである。」という言葉はとても印象的でした。
「責任を糾弾するよりも、活躍の機会を与え仲間として組み込むこと」
ハラスメント以外にも通じる考え方と言えそうです。

そしてこれらの延長線として、「ハラスメント・タスクフォース」
紹介されています。意外とやり方はシンプルです。

やり方としては、CEOがタスクフォースの設立を支持し、各部門のリーダーやその代理に参加してもらう。タスクフォースは人事のデータやセクハラに関する訴えを検討し、社内の様々な部門の人たちにその経験談を聞いて、どのような人たちが退職しているかなどについて会社のデータを分析する。タスクフォースのメンバーが、会社のどこに、どのような問題があるか解明できたら、その解決策についてブレインストーミングし、結果を各部門に持ち帰る。

「CEOのコミットメントにより本気度を伝えること」が重要ですね。

先日、あるI&D戦略やLGBTQ対応で先進的な外資コンサル企業が、労働基準法違反で書類送検されるというニュースがありました。Basicなところができていないことが明らかになってしまいました。
ハラスメントも労基法対応といったBasicな取組みも大切にしたいところです。

中小企業のパワハラ防止措置は義務化

令和4年3月31日までは努力義務であった中小企業に対する職場のパワハラ防止措置が、令和4年4月1日から義務化されます。
事業主が講ずるべき措置について、私の解釈は以下の通りです。

1.パワハラ対応方針の明確化
2.就業規則等における対処・処罰等についての言及
3.相談窓口の設置および適切な運営
4.パワハラ発生時の迅速かつ適切な対応
5.相談者・行為者のプライバシー保護
6.相談者に対する解雇その他不利益の排除

罰則はないそうですが、これを機に改めて見直したいところです。

【参考・引用】
職場のセクハラ対策はなぜ裏目に出るのか DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文
著者:フランク・ドビン, アレクサンドラ・カレフ 
出版社 ‏ : ‎ ダイヤモンド社
発売日 ‏ : ‎ 2021/11/3

労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf


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