いいかお前ら_とりあえずヤフーでググっておけ

【速報】「ヤバイ!あの3人が帰ってきた!!」浅生鴨×田中泰延×燃え殻「いいかお前ら、とりあえずヤフーでググっておけ」

どうも、砂糖 塩です。

またお会いしましたね!?

初めましての方、はじめまして。
どうぞよろしくお願いします。

まずはいつも通り言われてもいないのにご紹介預からせて頂きますで候。

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砂糖 塩(別名:アメコミ大臣)
Netflix在住。映画、書籍、音楽など作品の中で、自分が心から感動したものをどこかしらの誰かに届けるべく、主にTwitterとperiscope(LIVE配信アプリ/現在世界中にギークで愉快なフォロワー2k突破あざす!!)から楽しく優しくアドレナリン全開で強めに世に輝きをもたらす活動をしています。宇宙規模の任務です、ええ。現在、アメコミ系periscoperとしての任務はお休み中ですが次回、『オールナイト砂糖0』より再始動予定(お楽しみに!)。

シンプルに、「伝えること」が大好きでライターなるものとしてもそよ風のように活動しています。
本個人ブログでは下記のような記事を書いていたりします(ちな、全部趣味!全無料公開!読めば読むほど目が痛くなる!!

 ◆『サイボウズ式、チームに息を吹き込む「方法のない方法」』
社会人、組織やチームで働く人、全人類の必読記事!砂糖の原点となった記事!!
自分の道を切り開く「魔法のかけ算」
SHOWROOM代表 前田裕二社長の講演をリアル体験型記事でお届け!これまで話してこなかったストーリー、分析、戦略、マーケティング、思考の完全版!!note定番カテゴリに殿堂入り...oh...メニメニ読者...あざす!!
最高の女、「田中泰延」を口説いた男、今野良介。
発売2.5ヶ月で15万部突破!『読みたいことを、書けばいい。』の著者田中泰延氏と編集者今野良介氏の著書ができるまでを綴った笑って泣けるおっさん2人の恋愛長編記事!現在、砂糖noteで総合1位!何故か1番読まれているラブストーリー!!why?(読めばわかる)
『読みたいことを、書けばいい。』の真髄。
最新記事、1個前の続編とちゃいます...もう、これを読めばあなたも関西人!!書籍を買っていない方も楽しめる内容になってます。あと、カレーを作ってから読むことを強く強くおすすめします。

「1人でも多くの人の心のどこか(どこや)に刺さり、それが長くも短くもはたまた長い...人生のシーンにおいて一部分のヒント、面白さを感じるきっかけになればええな!」が本心です!

ちょっっっ、おま!イベントレポート書こうという時に毎回どんだけ自己紹介すんねん!?削れや!?!!

そう、思ったでしょうね...

「削らへんわい!全部おもしろいんやワレェ!!」ということで、今回のゲストをご紹介。

鳥と、酔っ払いと、松坂桃李

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浅生 鴨(あ、そうかも)
1971年神戸市生まれ。大学在学中に、IT、イベント、広告、デザイン、放送など様々な業種を経て、NHKで番組を制作。NHK在籍時に同放送局の広報局Twitterを担当していたNHK_PR1号として知られる。2014年7月末にNHK を退職後、小説、エッセイなどの執筆活動をおこなう。
著書に『中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?』『アグニオン』(新潮社)『猫たちの色メガネ』(KADOKAWA)『伴走者』(講談社)『どこでもない場所』(左右社)がある。
現在『だから僕は、ググらない。』(大和出版)発売中。

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燃え殻
1973年神奈川県横浜市生まれ。都内のテレビ美術製作会社で企画デザインを担当。2017年、ウェブサイト「cakes」での連載をまとめた『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)で小説デビュー。
現在『すべて忘れてしまうから』(週刊SPA!)雑誌『yom yom』(新潮社)にて『これはただの夏』連載中。

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田中泰延(本名:松坂桃李)
1969年大阪生まれ。早稲田大学第二文学部卒。1993年株式会社電通入社。24年間コピーライター・CMプランナーとして活動。2016年に退職、「青年失業家」と自称しフリーランスとしてインターネット上で執筆活動を開始。webサイト『街角のクリエイティブ』に連載する映画評「田中泰延のエンタメ新党」「ひろのぶ雑記」が累計330万PVの人気コラムになる。その他、奈良県・滋賀県・福島県など地方自治体と提携したPRコラム、写真メディア『SEIN』連載記事を執筆。映画・文学・音楽・美術・写真・就職など硬軟幅広いテーマの文章で読者の熱狂的な支持を得る。
初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)発売中。

鳥と酔っ払いと松坂桃李という今を謎めくスーパーゲストイベント。

1月26日(日)の夜18時。会場は大阪の中の大阪、ミナミ。夜になると周りはマジヤバ門外の変。連なるスモークガラスの車にホストクラブ、無料案内所、数メートル毎に撃安の殿堂ドン・キホーテが並ぶ。その一角にあるロフトプラスワンウエストにてイベントは開催された。

こちらのイベントは先日発売された浅生鴨著『だから僕は、ググらない。』(大和出版)を中心に、浅生鴨さんご本人の頭の中を燃え殻さんと田中泰延さんの御二方(いや、結果的にあちこちへ話がふらふらと歩き出すので御三方)と一緒に覗いていきます。

と、その前に、「砂糖、いつもの勢いが足りねえじゃねえか...」なんて思ってる方もいらっしゃるのでしょうね。今回はレイディな記事に仕上げるため黙れなさい。

「では、本の内容について」と言いたいところだが、今回も田中泰延氏が渾身のオープニングを飾ってくださったのでほんの少しだけ味わって頂きましょう!!まずはこちらのムービーをご覧、アレ!?(所用時間:17秒)

はい。どうもご視聴ありがとうございました。

『仁義なき戦い 広島死闘篇』の1シーンを汁なしver.でお送りしました(会場では汁ありver.ググれば(1:48の箇所)出てきます)。

「何故、会場のお客さんはオープニングでこの映像を見せられたのか。」

それは田中泰延氏がたまたま『仁義なき戦い』を観返しており、ご自身のTwitter上もこれ一色だったからです(それ以上でも以下でもない)。

「今日は時間の都合上、仮想通貨と骨伝導のお話はありません。」と、hironobu tanakaは言い放った。

会場からは、「ええええええええええ!」と叫び、悲しみ、途方に暮れ、凍てつく人が続出。「しょうがない...」そう言って今回もまたもや骨伝導のお話をしてくださった田中先生であった。

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(ベストショット撮影:砂糖 塩)

ここからゲストの登場!

今回は曲とムービーと共に盛大に出映えして登場するはずが、まあ皆さん自由なこと。会場に着くなり鴨さんは会場の客席をうろうろしているし、田中さんは業務連絡をしに既に舞台上にいる。唯一、燃え殻さんだけが控え室で待機しているようだと思ったのも束の間。既に酔っ払いであった。「あの(自由な)3人が帰ってきてしまった」イベントの開幕。

(※会場の雰囲気を味わって頂くためにゲスト御三方のひろのぶセレクト登場ムービーを挟みます。)


タイタニックの壮大なるテーマ。若干違和感を感じざるを得ない繊細すぎるリコーダーの音色と共に...「浅生鴨さんの登場です!!」田中泰延氏が勢いよく紹介!(ご本人はうろうろしていた足で客席からご登場)

「被れって言われたから被ったんですけど...」と何やら耳当て付きの帽子を被っている鴨さん。

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この帽子は横でにんまり笑っている田中さんが、「鴨さんしか似合わないだろうと思って、今日GAPで買ってきたんですよ!」と当日買い付けてきたのだ。

「こんばんは、浅生鴨です。」とナチュラルに自己紹介。「こんな、"こんばんは、浅生鴨です。"なんて言う人やった!?」と驚く田中さん。「こんばんは、浅生鴨です。」もう一度、鴨さんは繰り返す。

「これがわけのわからないポメラニアンです。」と田中さんは鴨さんの御召し物にもきちんとご紹介預かっていた。そう、鴨さんが着ていたのはどこから見てもポメラニアンと目が合う服

ここでようやく浅生鴨さんの紹介に至る。

小説家『アグニオン』『猫たちの色メガネ』『伴走者』、NHKPR1号としてまったく正体のわからない人としてTwitterで発信。小説『伴走者』はこの3月にドラマ化が決定している。主演は吉沢悠・市原隼人という私の世代では懐かしいが色褪せるどころか年齢を重ねるごとにカッコ良さが増していく俳優。本を読んだ田中さんは、「主演の2人のイメージがぴったり!」と言う。

鴨さん:すごい練習してますよ、2人。

田中さん:あ〜そう!(と、ご本人もサプライズ登場を控えているかのように胸を熱くさせている様子)

鴨さん:知らんけど。インスタ見てるとすごいやってるなって。

田中さん:知らんのかい!!

(※2人の会話は以後こんな感じだがこちらの責任ではない。)

田中さん:そしてエッセイ集。『どこでもない場所』『だから僕は、ググらない。』

鴨さん:ビジネス書です。

そしてここでもう1人、足元が怪しい。

鴨さん:こんなの流されたら出づらいわ。
田中さん:最高に出づらいですね、燃え殻さん!!

「和製ジュリー」こと燃え殻さんの登場!!

田中さん:会社員、辞めてないよね?

燃え殻:辞めてないです。すごい久しぶりにこういう感じの...

田中さん:このウザい感じね!

燃え殻さんは公式イベントでお会いするのが久しぶりだそう。田中さんはご自身の著書『読みたいことを、書けばいい。』を出版してから40本を越えるトークイベントをしており、本イベントの翌週も既に3つのイベントを控えていた。M-1王者になったかのような怒涛のスケジュール。

そんな話をしている間にも、燃え殻さんがおかしな行動に出ているではないか!田中さんは様子がおかしい燃え殻さんに気づき、「あ、酒がなくなったのね!!」
待て待て。人の話を聞こうって小さい頃に習わなかったか!?燃え殻さんはレモンサワーを水のように飲み着実にお代わりをしていた。会場のお客さんも「はやっ!」と声を漏らす。こちらは燃え殻さんのおしっこが漏れないか心配だ。

そんな燃え殻さんの紹介に移る。

「関西に現れるのは稀。」ということもあり、この日は東京から「そこはミナミ」と言わんばかりにTHE★大阪の街に来て下さった燃え殻さん。

小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』、『SPA!』では血反吐を吐きながら毎週エッセイを書いている。昨年1月にこの会場でこの3人で同イベントをした時に彼は、「この連載、俺まだ8本くらいネタのストックありますよ。」と言っていたそう。それから1年...

鴨さん:今、ストックは?

燃え殻:ないですよ!
(嬉しそうに田中さんが「ゼロ。笑」と笑みを浮かべている。)

燃え殻:この間、鴨さんに会ってご自身の話をしてくれて。その翌週に鴨さんの話が『SPA!』に載ってましたからね。

田中さん:鮮度が良い状態で...

燃え殻さんは雑誌『yom yom』でも連載を書いている。田中さんは、「とにかく僕らはプライベートの連絡では"しんどい"、"血反吐を吐いている"という話をいつもお互いにやってます。」と言う。「書くのはしんどい」ということについても田中さんより御二方にお話を伺っていく。

「脱いでいい?」と突如脱皮欲求を開示したポメラニアンを纏う鴨さん。
素材はナイロンで通気性が悪く、体にはバンテリンを塗ってきたそうで100人以上が密集する会場で1人大変な思いをしていたのだ(だから何だ)。

燃え殻さんは、「久しぶりにこういう人達に会えて嬉しいんですよ。」と何度だって言いたいというくらい嬉しそうに言う。他流試合が多く、誰も何もいじってくれないのだと言う。

燃え殻:「本当に、バカにされる人たちに会えて嬉しいよ、本当嬉しいわ。いや、本当に、大阪に来た甲斐がありました。」

「どれだけ嬉しいんや、燃え殻さん。」と優しい声で関東弁を話す人を見てこちらまで嬉しくなってきた(これが燃え殻さんの身体目当てと言われるイベントか...)。

「だってさ、何か持ち上げられてさ。"燃え殻さんの秘密をお伺いしたいんですけど"とか司会者が言ったりしてね。辛いよね、そんなんばっかり。」と田中さんは燃え殻さんに声をかけるが、想像するに田中泰延という人間にこの台詞を言い放つ質問者が私にはもはや辛い。

「〜♫」「猪木ボンバイエ!猪木ボンバイエ!」

突如流れる猪木ボンバイエで登場、ではなく既にそこにいたのは田中泰延氏であった。こうして3人全員の華麗なる(!?!!)無茶苦茶なオープニングが揃う。

田中さん:田中泰延でございます。本名は、松坂桃李。著書『読みたいことを、書けばいい。』これが!これが!!鴨さんから突然届いたライター!!凄いです。鴨さんに...って聞いてないやん!
(スマホをいじる鴨さん)

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こちらのライター、田中泰延氏と編集者である今野良介氏それぞれの自宅に突然届いたのだ。装丁をそのまんま細部までコピーしているかつ、愛煙家である御二方にこちらの「ライター」が届いたのは想像するだけでも目頭が熱くなる。

鴨さん:金属にレーザー加工するっていうのを、なんかやってみたかったんですよね。で、何かないかなあと思って。あ、これあるわって。

そ、そんな鴨さんの粋なひらめきでこちらのライターが誕生した。田中さんは、「燃え殻さんなんて、幡野さんとイベントした時に花を届けてくれてたんだよ。なんだかんだね、僕ら気遣いあって生きてるんですよ。」とらしくない台詞を言い放ち会場に笑いの渦を巻き起こした。

同人誌仲間のお話

「あれは何?10分くらい使って、これテレビだったら怒られてるよ?」鴨さんは、イベント冒頭に流れていた『仁義なき戦い 広島死闘篇』の映像が気になっているようだ。しかし、田中さんは「僕らのイベントは無駄に使った分後ろに延びますから大丈夫です。」と尺が理にかなっていることを告げる。

ちょっと何言ってるかわからないが、ここで御三方全員が執筆した同人誌『異人と同人』の話へ。

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同人誌仲間でもある御三方、現在『異人と同人』は某Amazonで2万円くらいで売買されている...この日会場でも数冊販売されており田中さんはこう宣伝した。「今日買って、明日すぐ出品すればボロ儲け。2月になると増刷分が届いちゃうから今のうちです!よろしくお願いします!!」と、何がよろしくなのかわからないが、執筆した人たちが言い放つ言葉とは思えないことをおもしろ愉しく紹介するのもこの同人誌メンバーの醍醐味である(※違う)。

ちなみに、先日某Amazonより増刷分が販売されたが1週間経たずして完売している。現在購入できる手段はこちらのページを書店に見せることで発注が完了する。

本書では『熱源』を執筆した直木賞作家の川越宗一さんも、「ヤキニク・タヴェタイネン」という名前で執筆されている。訳がわからない。しかし、こうしたペンネームさえ楽しませてくれるのが『異人と同人』なのだ。私はおもしろさ故に本棚から何度も手に取ってはその時の気分でそれぞれの作家の好きな箇所を読んでいる。

鴨さん:元々知り合いなんですけど、『熱源』とその前の作品を読んですごいの書いたなと思って。川越くんに「『熱源』すごい良かった!」っていうメールをして少しやり取りがあって。その中でちょうどこの『異人と同人』を作ろうと思ってたタイミングだったから、「せっかくだから何か書かない?」って言ったんです。「今、小説終わったばかりで手空いてるでしょ」って言って書いてもらった。

田中さん:はーん...僕も原稿書くのかなり苦労しましたけど。

会場はまたもや爆笑の嵐だ。
その理由については、『異人と同人』の「ひろのぶさん」という方が執筆されている『うちゅうじん さぶろうさん』を一度読んで頂くことをおすすめする。ご本人が言うくらいには書くのも苦労しただけに、読解するにも苦労する。

田中さんは、「川越さんとは九州の文学フリマでお会いして、だから僕が育てたようなもんですよね。」と自信満々に言い放った。「俺が育てた直木賞作家」(自称)。

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こちらの同人誌、『ブンガクフリマ 28ヨウ』は燃え殻さんと田中さんにとっても大きなきっかけとなった1冊だと言う。現在はKindleでのみ扱いがある。鴨さんはたくさんの人から「(本書を)欲しい」と言われているそうで、いずれ何かのかたちで...と考えているようだ。期待大だが、『異人と同人』を読んでしまった身からすると形式が何であれ読まない選択肢はない。

田中さん:これはね、燃え殻さん。ちゃんと小説書いてるんです。ガチで。

燃え殻:いや、書かなきゃいけないと思ったんですよ。鴨さんに頼まれたから。でもなんか...

田中さん:何、もごもご言うてるの!?

鴨さん:この人(田中さん)以外、みんな書いてるよ。

田中さん:違う違う!これもね〜色々あんのよ!言い訳は〜!言い訳というか、事情があるんだけど。
(「この言葉、どこかで聞いたことあるぞ...」と幾度か田中泰延氏の記事を執筆している砂糖は思った。)

燃え殻:鴨さんに言われて女の人を主役に書いたんですよ。それが、たまたま今書いてる『yom yom』(連載)の中に風俗やってる女の人が出てくるんですけど、その女の人のことを女目線で書いたんで。参加させてもらってすごく良かったなって思います。

鴨さん:習作になった。これおもしろかったね。全員、お互いにゲラを公開しながらどんどん修正箇所が全部見えたから。

田中さん:僕はここに書いたものを自分の本に入れようと思って、この後に自分の本の章にしたから学びがあったんですよ。

「ここにいる人たちはみんな昆布。」

そんな著者たちにとっても学びのある本を発行する浅生鴨さんの新刊『だから僕は、ググらない。』のお話へ。

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田中さん:この辺りのお話を伺って行きたいんですが、金も時間も手間も書けないって本当そうなんですけど、常に妄想してるんですか?

鴨さん:今だと、ここにいる人たちはみんな昆布。

一同:昆布!?!!

鴨さん:揺れてる感じが昆布っぽいなと。
田中さん:僕はおカネに見えますけどね。
鴨さん:人としても見ているんだけど、昆布としても見ていて、釘としても見てて。
田中さん:人としても見てる?
鴨さん:そう。
田中さん:俺、それはないわ。
(会場:笑)

鴨さん:でも、考えるだけでいいなら、こんなラクなことはない。

田中さん:うん。人がしゃべってる時に、(燃え殻さん)酒を頼むことしか考えてない。水じゃないんだよ、それ!アルコール入ってんすよ!!3人の中で俺は創作に興味ないというか、所謂、空想をして創る物語を紡ぐということはしない人なんで、2人には特に聞きたいんですけど。燃え殻さんも妄想と小説の関係、頭の中で妄想する癖というか。どうですか?

燃え殻:妄想しないと、生きていかれなかったことがたくさんあって。鴨さんは陽気な想像する。ググらないでいいことが鴨さんの中には文章だったり想像みたいなもの、たくさんあるんですけど。僕は無茶苦茶ないじめに遭ってたんで、想像しないと死ぬって時があったんですよ。良いように想像しておかないとやべえって思って。今でも思い返そうと思っても思い返せないことがあって。それは、『SPA!』で書いた言葉なんですけど...俺、悲しい話とかしていいですか?

鴨さんは「ここにいる人たちはみんな昆布。」と話していたが、一方、燃え殻さんはお酒を飲むと悲しい話をしてしまうらしい。

燃え殻:掃除用具入れに、閉じ込められたことがあったんです。その時にね、タイムマシンがないことくらいわかりましたよ。中学校、1年生くらいだったかな。

でもね、「早く未来に行きたいな。」って思ってたんです。掃除用具入れの中で。ガッコンガッコン殴られるわけ。それで、タイムスリップしないかなとか思ったの。そうしたら、ああなってこうなってっていう風にずっと思ってた。その後、掃除用具入れの中から出て、自分がどうしたかっていうのを思い出せないんですよ。俺。

タイムスリップはできないかもしれないけど、あの時にガチャガチャと魘されてた時に、「その先に鴨さんが居たりひろのぶさんが居て、こうして皆さんとお話ができたりとかっていう未来があるんだよ」ってことを言ってあげたくなりました。だから僕は、妄想することによって生きながらえたことっていうのが何度かある。

鴨さんが皆さんのことを昆布だとか、俺、それ本にして読みたいくらい面白いのね。で、前に鴨さんの事務所に行ったら、「燃え殻さん、みんなが忍者の会社ってどう思う?」って言うわけ。そこには2人しかいないんですよ。逃げ場がないんです。ずっと小さくジャズが流れてましたけど、鴨さんはずっと変わらず妄想してる。ところが、僕は違うくて。それが羨ましいんです。鴨さんのように、いろんなことを妄想してて、忍者の話とか笑っちゃうし。

田中さん:俺、ネパールで2人で飯食ってたら、「田中さん!」って鴨さんが言うから、「何ですか?」って。「ゴルゴ13って、採算合ってないと思いません?」って...何!?その流れが全然わかんない!だから、鴨さんの頭の中では、俺と飯食ってるようでもゴルゴのことしかなかったわけですよ。その間は。

鴨さん:ネパールのレストラン、僕、そこに行くのに地元の人が乗るバスに乗ったんですよ。で、そのバスって日本円で4円。ところが、レストランは2人で1万円くらいなんですよ。物凄い貧富の差があって、通りにはさっき僕がバスに乗ってた人たちは絶対に来たこともない。一緒のバスに乗ってるのに降りていくから、そのバスの中でスマホを取られたり色々あるんですけど。高級店で凄い値段が高いの。高いと言えばゴルゴも謝礼高いなと思って。

田中さん:そういう繋がりやったんか。笑

鴨さん:それで、ゴルゴ採算合ってないよなって。だって飛行機丸ごと買っちゃったなんて人もいる。

田中さん:射撃のためにちょうど良い島を買うとかね。

鴨さん:ゴルゴの話はいいよ。

田中さん:いいの!?何なの!?!!

燃え殻:俺、何も言ってないのに「すみません」って言いそうになった。

「本当は何も見えてないんです。それは書き出してみるとわかる。」

田中さん:この本の中には、「何でそんなことを急に言い出すの!?」ってことのタネと仕掛けが書いてあるよね。何をもって連想して、最後に口からポロっと出るかっていうメカニズムの歯車が全部書いてある。すごいもんやなって思いましたね。

そしてもう1つ、この本の中でもすごく大切なことで。僕ら広告をずっとやってきたけどここでもそうで、「俺にはアイデアがある。」ってよくみんな言うのよね。鴨さんがこの本で強調して言っているのはこれ。

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これ、凄く大事で本の中でも繰り返し言ってますね。

鴨さん:水増しのために...

田中さん:メモでも、メモ取って初めて考えの一部であって、考えながら歩いててもそれは寝たら忘れてるし、どうしようもない。

鴨さん:自分の頭の中で考えたことが存在している状態って、実は考えてないんですよ。実際、書き出してみればわかるんですけど、実は全然考えていないってことなので、「イメージだけはある」状態なんですよ。

イメージは記憶が勝手に重なって、まるでちゃんとイメージしているように思ってる。思い込んでるだけで、本当はイメージさえできてないんです。
でも、脳の構造上、物凄いものが見えているようにみえて本当は何も見えてないんです。それは書き出してみるとわかる。だって、小説もそうじゃないですか。書き始めたら思っていたのとは全然話が変わる。

燃え殻さんは、鴨さんに出会ってからメモをするようになったと言う。それまでは「忘れて残ったもので良いんじゃないか」と思っていたのも、鴨さんに、「そういうのはメモった方がいいよ」と言われたのだ。

田中さん:それで『SPA!』の連載も続いたのかな?
燃え殻:そうです。
田中さん:8回しかなかったもんね。
燃え殻:危なかった。もう1年6ヶ月くらい。
田中さん:あれも単行本になるの楽しみなんだけど!
燃え殻:あ、はい。(気さくな笑顔でスルー)
鴨さん:でもさ、あれ何枚?原稿用紙4.5枚くらいでしょ?本になるにはだいぶ...
田中さん:いやいや!文字、大きくすればいいんですよ!!
(会場:田中泰延著『読みたいことを、書けばいい。』を読んでいるが故に笑いが止まらない)

燃え殻:鴨さんはね、書きすぎなんですよ。本当に書いちゃうから、この人。ほぼ日のTOBICHIで、レジのアルバイト?
鴨さん:1日店長みたいな。

燃え殻:鴨さんに、「やってるから、来る?」って言われて行ったんですよ。そしたら本当にレジやってて。で、レジの合間に原稿書いてるんですよ。そんなこと僕絶対できないから、それは鴨さんの毎日のそういうものを色々書き留めるっていうか...コラージュなんだよね。

(確かに机の上を見ればどの写真にも原稿が置いてある鴨店長...)

田中さん:飛行機で北海道行った時も、行きの飛行機の中で書いてて。「はあ〜飛行機の中でも書くんだな〜」と思って飛行機降りて来たらゲートのところで、「書けなかった!寝ちゃった!!」って。「普通そうやろ!!」と思う。せやから、時間があったら絶対書くんやね。それは俺、無理。

鴨さん:だってそれは、締め切り過ぎてから書き始めてるから...

田中さん:締め切り、それは相手の都合ですからね!!
(会場:名フレーズを聞けたと言わんばかりの爆笑の疾風が巻き起こる)

田中さん:特に、月刊とかの連載だとヤバイんじゃない?

燃え殻:はい。でも、締め切りは過ぎてからが本番だって言うひろのぶさんとか諸先輩の、本当に勉強になりました。

鴨さん:言ってないよ!言ってないよ!!締め切りはちゃんと守らないといけない。
(田中さん:締め切りは相手の都合。

燃え殻:鴨さんはね、季節が変わったりするんですよ。本当は夏が締め切りだったんだけど、もう秋の仕事が終わった頃に、「俺さ、やろうと思うんだよね。」って。何も季節ごと間に合っていないじゃないですか!!
(会場:爆笑)

「"書く=考える"ってことだから」

田中さんは、「月刊」「週刊」と言われるものは全て断っていると言う。

鴨さん:今日持って来た『猫たちの色メガネ』が月刊の連載だったんだけど、あれは本当にしんどかった。
田中さん:何編載ってましたっけ?
鴨さん:26か7くらい。
田中さん:でも短編を、130か140書いた言うてましたもんね。

燃え殻:そんなことあり得ないですよ、普通。
鴨さん:でもそれを送ったら編集者から、「今日のはちょっと連載のレベルじゃない。」って。
燃え殻:え〜!!
鴨さん:もう1回違う話をゼロから書き直したりとか。

燃え殻:でも鴨さんは最終的にすごい真面目なんですよ。『SPA!』の連載は何人かの編集者がいて、原稿に「ふつう」とか「つまらない」とかあゆみ(小学生の通信簿)みたいに書かれるんですよ
田中さん:あゆみ!!
(会場:きつ〜...と騒めく)

燃え殻:今はPV数とか全部出るじゃないですか。だから、全部自分がどれくらいのランキングかってわかるんです。でもこれ、毎週普通に仕事してると病んでしまう。

それで1回締め切りがあったら、次は2日後くらいにプロットっていう。これを毎週ずっとやってるでしょ。それでも全然気持ちがね、収まらないの。熟睡とかできない。で、その間に鴨さんが20枚とか書いてるんですよ。そんなこと普通できない。人としてできないです。

流石、鳥類は違う(いや、それも違う)それも鴨さん、全て手書きで書いていると言う。

鴨さん:手書きの方が速い。

田中さん:俺、手書きでも遅いわ。
(会場:笑)

鴨さん:でも結局、僕は"書く=考える"っていうことだから、20枚書いてるっていうのは考えてる状態なの

燃え殻:書いてるっていうのは、考えが転写されてると。

鴨さん:そうです。頭の中でずっとこねくり回しても、結局考えてないと思ってるから。だから、どんどん書き出して書き出して、どんどんボツにしていく。今日も和歌山から電車の中で7枚くらい書いたけど、全部ボツですよ。

田中さん:南海電車で原稿書いてる人、見たことある!?

燃え殻:スマホいじってる人しか見たことない!

「体は脳に直結している」

田中さん:でも、鴨さんのこの本に何回も、「アウトプットして初めて考えになる」っていうのがあって。

「最悪、四角とか三角だけでも書きましょう」
って。それは俺、これ読んでから実行してますね。だから最近の手帳は四角とか三角ばっかり。全然わかんないけど、書く。手を動かす。でも、手を動かしたらちょっと変わりますよね。

鴨さん:人間って、動物なんですよ。フィジカルなものから頭の中で何かが起きて体が動くっていうのと同じように、体の動きは脳にフィードバックされるので。だからちゃんと体を動かしてあげるっていうのはすごく大事。散歩するとか。

田中さん:鴨さん、今日も散歩してたよね。それね、本当やめて!「時間より早く着いたけど、時間があるので散歩します。」って物凄い不安になるよね!!

鴨さん:でも、散歩してるとやっぱりなんか出てくる。あの魚、死んだ魚が。
(会場:くすくすと笑い声が聞こえてくる)

田中さん:急にまた来たね。

燃え殻:聞くよ、鴨さん。

鴨さん:死んだ魚に水が流れてると、死んだ魚が生きてるのと同じように動くんですよ。それは体が反応して、フィジカルの作りがそうなるんです。
笑顔もそうで。震災の時に言われたのが、「笑顔を形だけまず作りましょう」って。やっぱり体は脳に直結していると思うんですよね。

燃え殻:でもさ、鴨さん。すごく子どもみたいなこと言うけど、笑えないぐらい辛い時に「笑え」って言われたらどうやって笑うの?ジョーカーみたいな感じに笑い顔作るの?そしたらちょっと、気分変わんのかなぁ。

鴨さん:時間はかかるかもしれないけど、やっぱり反応はあると思うよ。なんでかって言うと、筋肉(表情)を動かすと嬉しいっていう脳が繋がってるわけだから。そう思ってる。演出として、悲しい時に笑うとすごい泣けるっていうのがある。

田中さん:チャップリンの『Smile』って曲がそうですよね。

鴨さん:何だろう。あの、宇宙から...宇宙からやってきてさ!でかいのが!!
(会場:笑)

田中さん:そんなんいっぱいあるやん!
燃え殻:あー!アルマゲドン!!
鴨さん:あれなんてもうさよならのシーンとかお互い笑顔になるんですね。悲しい時に、ああやって笑って見せると泣けるっていう。

田中さん:アルマゲドン!『インデペンデンス・デイ』じゃないんや!イン・デ・ペンデンスデエ。

突然、ガチ関西人が発音する生の「イン・デ・ペンデンスデエ」を会場のお客さんはこの日聞くことになった。会場に響き渡るこのフレーズを私は忘れない。そこから話題はマヨネーズは関西弁でどう発音するんだとか訳の分からない話が続く。鴨さんは19歳まで神戸に住んでいたが、関西弁は殆ど忘れているようだ。

燃え殻:19歳くらいの時のことって、31歳とか27歳の時より衝撃だったりしない?

鴨さん:俺、そんなことよく覚えてない。

こういった具合で会場は拍手が湧き、皆、何度笑かせられるのだろうと笑いが途絶えない化学反応が幾度も起きる。

「一人称って実は、その当事者ではなくなるんですよ。」

鴨さん:覚えてる限りのことは、『どこでもない場所』に書いてる。

田中さん:あれ、エッセイ集だけど私小説なんだよね。あれすごく好きで。方法としては、一人称を多用するっていう。「僕は」って。

鴨さん:そうすると客観性が増す。

「彼女からプレゼントをもらった。」

って言うと、言ってる話者ともらってる当事者とが同一なんだけど、そこに「僕は」を付けて

僕は彼女からプレゼントをもらった。」

って言うと、「僕は」の一言の瞬間に1人の人間の像が浮かぶんですよ。

「僕は」を付けずに「彼女からプレゼントをもらった。」って言うと直接読み手が書き手と距離が一致した状態になる。だからわざと『どこでもない場所』には、「僕は」っていうのを普通より多めに入れて、読み手が登場人物と一致しないように客観的にさせてます。

田中さん:そう、逆なんだよね。「僕は」とか「私は」とか"I"っていう一人称を付けると書いてる人が言ってるように見えるけど、違うんだよね。「僕は」「私は」"I"って付けると、実は客観的な文章になる。

燃え殻:それ意識してなかったです。

鴨さん:僕もあんまり意識してなかったんだけど、『どこでもない場所』を書きながらなんとかあれをエッセイなのか小説なのかわからないようにしてもらったの。客観性はエッセイの方が強いと思って、「どっち?」みたいなことにしたくて。色々トライしたら、この文体が一番ぴったり来るなってわかったの。一人称って実は、その当事者ではなくなるんですよ。

これには会場の反応も「まさか」の一色であった。こんな話を数千円で聞いてしまっていいのだろうかとさえ思う。むしろこの話を無料で読んでいるあなたはおカネを払った方が良い。読む側としても、小説を読み終えた後にチェックしてみようと砂糖は思った。

「結局正解はないんですよ。」

田中さん:鴨さんは本の中で仰っておられます。結局、アウトプットして企画なり文章なりを最後は作らなくちゃいけないんだけれども、この中では結局のところ、「正解はどこにもない」
だから、タイトルにも関係する話で、「何かを探して、これが正解だからこれを書いて行こう。」ということはあり得ないと。

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鴨さん:まあ、そのままです。
(田中さん:そらそうやけど、加えてよ!これ、トークイベントやから!!)

燃え殻:すごい良いことです。僕はお酒を頼みます。

鴨さん:あの、何だろうな。答え合わせするみたいなやり方をする若い子が多くて。「これって合ってますか!?」みたいな。そんなの知らないじゃないですか。正しいかどうか。

問題集の後ろに正解が載ってて、わかんない時はそれ見て、みたいな感じでネット上に今回のこの答えが載ってるみたいな。誰もやったことがないとかこれから新しいことをやるっていう時に、そんな正解がどこにでもあるわけがないのに、それを一生懸命に探してちょっと近しいものを持ってきて合ってる間違ってるってやってるのがなんか馬鹿っぽいなと思って。

田中さん:これは僕の本の中でも通ずるところがあるなと思っていて。僕も調べる以外に能がないので調べるんですよね。図書館に行ったりして調べるんだけど、結局正解はないんですよ。

全部仮説に過ぎないから。本に書いてあることは。この世にこれは間違いないってものは1つもなくて。例えば、真剣に調べたら聖徳太子だっているかいないかわからないんですよ。「この人って実は居たのか!?」「いや、これは複数の人間の当時のエピソードを聖徳太子って名前に統合して日本書紀に書いておこう...」っていう可能性もあるんですよ。だから本当に正解はない。

鴨さん:数学でも化学でもそうで、今、たまたま全ての理屈が成立しているってだけなので。仮説がうまくいってるだけで、1個違う現象があったらまた全部ひっくり返してまた新たに考えて行かなきゃいけないから。たまたま全部がハマってるっていうだけなので。

怒られたとしてもやりたいなって思うことなんだと。

田中さん:で、こちらの本の中から...!!

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鴨さん:僕、こんなの書いてないと思う。

何を言おう。読み終えほやほやの砂糖もこの言葉には心当たりがなかった。鴨さんはこんなことを書くことは...

田中さん:まあ、でもこういうことを?

鴨さん:こういうことを言ってます!!

田中さん:これはでも本当にめっちゃ言いたい。Twitterとかさ、「めっちゃ認められたい人」多くない?何なんそれ?お金なんの?お金なるんだったら、俺、やるよ!?

燃え殻:でもね、コインゲームってあるじゃないですか。コインをシャーってやって、ガラガラーって出てくるじゃないですか。でもあれ1円にもならないじゃないですか。1円にもならないけれど、俺、横浜のよくわかんないゲーセンで2万枚くらい集めてたことがあるんですよ。でもそれ、換金できないじゃない。でも何となく満足だったの。

多分、読モライターの人とかはそういう気持ちですごいわかる。わかるんだけど、自分が本書く時に思ったのは鴨さんが書いていることと一緒で麻薬。「あ、これ書いたら多分色んな人たちからお叱りを受けるな。」っていうか父からもお叱りを受けるなって。実際、怒られたんですけどね。

でも、怒られたとしてもやりたいなって思うことなんだと。そういう熱量がないと途中で萎えちゃうよね、絶対。だから、それが鴨さんの今回出した本、僕が中学生か高校生の時くらいにこの本を読みたかったなって。俺、本当に思う。

今のインターネットだったりとか、ビジネス書とか、朝活みたいなやつとかって、「朝何時に起きろ!」とか「このぐらい友達を作れ!」とかフォロワーはどうしたとかいるじゃないですか。でも、鴨さんは北行っても南行ってもそんなに変わらないんですよ。

鴨さんに、僕の知ってる人が癌で亡くなるかもしれないってことに僕がまた怖がっちゃって。「怖いんだよね」って話をしたら鴨さんが、「昨日さ、俺のトークイベントで言おうと思ったんだけど忘れちゃったな。」って。

その場で言うことを忘れて2人でてくてく大阪歩いてる時に、鴨さんがいきなり、「俺これが一番言いたかったんだよね」。「生きてることと死んでることってそんな変わんないと思うんだよ」って。「ある人たちは"わかる"ってすぐ言うけど、"わかる"って"分ける"だよな。」って。

「だから、あんまり"わかる"って言わなくていいような気がするんだよ。だから、あんまり言い切らなくていい。」「漂ってればいいんじゃない。」って、そう言ってくれたの。僕はそれがすごい腑に落ちてラクになったんですよ。

田中さん:わかる!!

燃え殻:こういう人が俺は大好きなんですよ。

お前の前髪がこっちだろうがこっちだろうがどっちでもいいじゃん。

結局、鴨さんは自分の言うことを全く覚えていなかったのだ。ここから話の展開は、「鴨さんが何も覚えていないこと」に繋がる。ご本人は雑誌社からインタビューの文字起こしを渡されても、「僕、そういうの見ないから。」と言うのだと。

燃え殻:それって、結構できないですよ。後から見たら、「自分ではこれ直したかったわ」とかあるじゃないですか。

田中さん:俺、写真とか差し替えるもん。松阪桃李の写真に。

鴨さん:そういうのまったく気にしないんですよ。どうせ誰も見ていない。
アノ、ワカモノ、ビルノ、マエニ...

燃え殻・田中さん:何の話してるんですか!?
(会場:爆笑)

鴨さん:ガラスのビルの前に立ってる若者が前髪を直しているのに近いなと思っていて。お前の前髪がこっちだろうがこっちだろうがどっちでもいいじゃん。

燃え殻:どうでもいい人が着るパーカー着てますけどね。

田中さん:人に見られてないと思ってるんでしょ!これは見られるわ!

鴨さん:どこかでね、他人の評価を捨てたの。

燃え殻:どこかっていうのはどこ?事故とか?

鴨さん:事故のような気はする。事故の前は、どっちかって言うと物凄く神経質だったから。コンマ、数ミリの違いを全部直さないと...

燃え殻:その背景はすごい感じてて。鴨さん事故前に会ってたら、本当に許してくれない人だったような気がする。そのくらいきっちり仕事をする人だと思うんです。それが事故で色んな人たちに会ったりだとか、自分の体がとか、「全てが言うことを聞かなくなった時に、人に対しても同じくらい寛容になったのかな。」って勝手に僕は思ってた。

鴨さん:それはあるかも。31歳で事故に遭って、それまでは社会人チームでラグビーやってたから全然普通の人より体力もあった。

「当時の鴨さんはマークパンサーのようだった」と田中さんはしばらくその頃の鴨さんの写真を携帯の壁紙にしてたと言う(多分途中から嘘)。

鴨さん:だから最初は、完全に寝たきり状態から始まって、それで「一生車椅子だ」って言われてずっと車椅子で暮らしてたんだけど。リハビリをやっていくうちに段々、医者からやっちゃダメって言われてた療法を試しにやっちゃったっていう。

ただそれが上手く行って。先生も無茶な先生で、教授からこうしろって言われた指示を、「僕は絶対違うと思うんだよ。別の手術をしたい。」って言われて。で、僕はそっちの若手の先生の方がなんか納得できたから、「先生の言う通りに手術した方がいい」って言うんだけど教授が認めない。

で、何と、「教授が明日からゴルフに行くから明日手術しましょう」って。本当に、前日に言われてその教授がゴルフに行ってる間に、全身麻酔して手術したの。教授が戻ってきて激怒して、その先生はどっかに飛ばされた。

でも、その先生とアホな理学療法士のお陰で、車椅子から自分の脚でまた歩くようになった。それでも、できないことはいっぱいあるからその時に、「人って、できないことが実はいっぱいあるんだな」ってようやくそこでわかるというか。30歳になってようやく気づいたわけで、だいぶ遅かったんですよね。

田中さん:それが『伴走者』にも繋がって。

鴨さん:そうですね。結果としては。

「書いてないのに、話さなきゃいけなかったんですよ。」

田中さん:あの小説も、自分も障害を持ちながら取材の期間も長かったわけでしょう。

鴨さん:まあ、サボってたからですけど。マラソン書くのに2年取材して、書きますって言ってから最初放置してて。で、編集者が「適当に書け」って言ったの。「もう、リオデジャネイロオリンピックが始まるじゃないか」って言われて、とにかくリオのタイミングで書かなきゃと思って書いて。

で、書き終わって一作だと本にするには量が少なめだから「じゃあもう1本続きを書け」って言われたけど、「続きを書くくらいだったら、皆、冬の話って知らないから次の『伴走者』の話を書こう」って。それで、「好きにします」って言ってそこから2年くらい放置してて。

取材はちょこちょこやってたんですけど、「取材やってる。」って言えば書かずに済むじゃないですか。「まだですか?」って言われた時に、「いやちょっとまだ山形県のスキー場に行かなきゃいけなくて...」とか色々言い訳ができるので。そうして引き延ばしてたら、「もう、平昌始まるじゃないか!!」って。

燃え殻さんは「5年くらいか。」と漏らしていたが、先日書けない話を延々としていた名前にも"延"という字が入っている田中泰延氏の話を聞いている身としては、「オリンピックの周期を越えてくる人もいるのか」とそれはもはや感動の域に達した。

鴨さん:4年かな。で、「平昌までは本にして出すな。」って言われて次の試合、一昨々年の10月15日。雑誌社に呼ばれて、「新作発表会」があったの。「2月の末に『伴走者』っていう新刊が出ます。」「その著者を今日は連れて来たので、その著者から内容を説明してもらいます。」って。

書店の方とか、新聞記者とか、200人くらい集まってる場で説明しないといけない。その日は3人、僕の前に赤川次郎。前に発表する方々は慣れてらっしゃるからパフォーマンスたっぷりで自分の小説の見所とか言うわけですよ。僕の番になって、僕まだ何も書いてなかった。書いてない。書いてないのに、話さなきゃいけなかったんですよ。

「聞いたことある。聞いたことあるぞこのフレーズ...!!」と砂糖は身構えた。

鴨さん:「すごい良い話です。」って、乗り切るしかなかった。

ある編集者は以前、こんなことを言って自身の社内会議を3回も突破していた。

「私は、ないものをあるかのように、
誰にもないと思わせないように、
私はあると思って、プレゼンしてきます。」
『最高の女、「田中泰延」を口説いた男、今野良介。』〜episode Ⅴ〜 祝!今野良介、想像だけで社内会議を3回突破!!「今野良介からの手紙」より)

鴨さん:でもね、そこから必死ですよ。記者発表をしちゃったから、書くしかないなって。

田中さん:むしろマラソン編よりスキー編の方が長いもんね。
鴨さん:そうなの。マラソン編の倍以上書いてて7作くらい。スキー編は250枚くらい書いて、「ちょっと長すぎる」って言われて50枚ほどに削ったのかな。
燃え殻:書けないっすよ...
鴨さん:マラソン編は120枚くらいだった。

「書き切るっていうのが一番大変。」

燃え殻:いや、書けないんですよ。何かアイデアがあって、「こうやったら面白いじゃん。」って。糸井さんと知ってる人たちと飲んだんですけど、皆ね、小説家志望みたいな人だったの。

田中さん:大体ね、アイデアなんかを口にするんでしょ。

燃え殻:もう、すごいするの。で、その人は「こういう風にする」って言うんですけど、この人がね、書けないんですよ。最後まで。

田中さん:書き始めとかアイデアはある。筋はこうしようと思ってちょっと書き始めるけど、途中で終わるのね。書き切るっていうのが一番大変。
燃え殻:だから鴨さんがそこまで書くっていうのが本当に凄いことだと僕は思います。

田中さん(生意気を演じながら)「俺は小説家になりたいんすよ〜」っていう奴がぁ〜

鴨さん:どうしてそんなチンピラ風に言うの!?もっと普通でもいいじゃん。もっと普通にいるよ。
(会場:またもや2人の会話に巻き込まれ爆笑)

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燃え殻:鴨さんなんかは、ナメられないと思うけど、俺なんかはナメの中から来られるからね。

田中さん:ナメの対象として。

僕は評価を気にしないから、書いたら送っちゃうんもん。

燃え殻:「俺さ、今度小説書くから読んでよ。」って言われるの。普通の小説も読まないのに、「わかりました」って言うんだけど。来ない!送ってこないんですよ!!メールアドレスまで教えたのに!

鴨さん:言われたのに来ないの?

燃え殻:俺、鴨さんだったら怖いもん。鴨さんに送れないっすよ。ひろのぶさんには送っちゃったんですけど。
(会場:またもや笑い声が響き渡る)

田中さん:ある夜、全部来たからね。横書きの原稿が。笑
燃え殻:原稿160枚送ったんですよ。
田中さん:そうだよね、鴨さんは怖い。
燃え殻:怖い!本当に怖い!!

鴨さん:優しいのに...

燃え殻:優しくない、全然。

田中さん:凄い力を入れて書いた原稿が全部変なのに差し替えられてたもん。『異人と同人』で変な顔写真に。

燃え殻:あれは鴨さんじゃなくて、俺でも叱りますよ。

書いたら鴨さんは褒めるんですよ。僕は、今新潮社で書いてるものも怖くて。担当編集者に送信できなかったんですよ。これが良いものなのか悪いものなのかわかんなくて。で、鴨さんに送っちゃったんですよ。

「これ読んでください。」って。そしたら鴨さんが、「部屋に来なさい。」って。それで事務所に行ったら、褒めてくれるの。「もう凄い!偉い!書いたってことが偉い!」「それをね、発表しようとしてることが尚偉い。」と。普通そんな恥ずかしいことできないじゃないですか。でも、それで少し自分の中で「送信」ってボタンを押せましたよ。それぐらい怖いっすよ。確信を持って、「これは絶対に認められる」なんて思って推す人は最後まで書けない人たちだから。

鴨さん:だからやっぱり、評価を気にするとそうなる。僕は評価を気にしないから、書いたら送っちゃうんもん。で、編集者から「全然レベルに達してません。」って戻ってくるわけ。それで、「あー、そうだったのか!」って思ってまた書いて。

でも、『猫たちの色メガネ』で凄い鍛えられた。本当にあの作品はショートショートなんです。大体パターンがあって、普通に始まったお話が途中で捩れて行って、変なことになるんですけど。「今日、面白いのができたんじゃないか。」って思って送ったら、編集者から「これって物語の序盤ですよね?」って来る。オチまで書いてるのに、「これが物語の入り口ですよね?」って来るから、そのオチを出発点にして書くしかなかった。それを2年半ずっと毎月やってたんで。

田中さん:やっぱね、プロの物書きになるとか思ったらあかんよ。しんどいよ。
燃え殻:全然儲からないしね。
田中さん:儲からないね。本当、儲からない。だから、今日は皆さんの飲食代が頼りで...

と、この会場ではお客さんが食べれば食べるほど、飲めば飲むほどにゲストへお金が入るシステムとなっていた。

「プロ」「作家」「小説家」「ライター」と言われる人たちの頭の中を、目論見を、初めて目の当たりにした人も多いのではないか。少なくとも私はそうだった。こうして目の前にして生のお話を聞いていると、余計に書けない苦しみと怠惰(!?!!)との葛藤を感じざるを得なかった。

今回はここまで。

「えっ」

「えっ!?!!」

「あの話は?もっとあったよね??」

ありました。ありました。

途中まで読んでくださった方、ありがとうございました!!

それでは次回、『かもさんにきいてみようのコーナー』

また、ここで、お会いしましょう。

「サポート」とは神社のお賽銭箱のようなもので、意気込みを念じておカネを投げるともれなく砂糖におカネが入るシステムです。