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小説

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#掌編

【小説】飛来する夜

 わたしが目を覚ますときは、いつも夕陽が隣にいる。
 今日も保健室。重い瞼の下で目を動かすと、わたしの手を握る夕陽と目があった。
 外は薄暗い。彼女は電気もつけずに、わたしの目覚めを待っていた。
「おはよう明衣」
 彼女はわたしの名前を呼ぶ。きっと両親よりも彼女のおはようを聞いている。
 重い体を起こし、夕陽の肩にもたれかかる。セーラー服の襟の、少しごわごわとした感触に顔を埋める。夕陽の柔らかなボ

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ほんものの星

ほんものの星

 きみに憧れたことを許してほしい。

 夜の、強すぎる街灯の光に照らされたつまさきを見つめながら、わたしはそう思った。
 急に立ち止まってしまったことに、きみは気づかないで進んでいる。足音でわかる。でも、歩みはゆっくりで、たぶん今気づいたのだ。でも戻ってこようとしない。わたしは顔をあげない。
 なんだか、どうしてか、顔をあげたら泣いてしまいそうな気がする。
 きみに出会ってからいつ

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てぶくろ

「もう一回言って。ひと」
 彼女は編み物をしながら言う。なかなか答えないでいると、ちらりと視線だけを寄越される。むっとつぐんだ口を動かし、ため息をつく。
「しと」
 ふふ、と彼女は笑う。
「江戸っ子ってほんとうにひ、がし、になるのね」
「もういい? 満足した?」
 うんざりした声に、彼女はますます上機嫌になった。もう編み物の手は止まりつつある。膝に編みかけの赤い手袋を置き、ぱっと顔を上げる。
「コ

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