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書評:ジョヴァンニ・ピコ・デラ・ミランドラ『人間の尊厳について』

イタリア・ルネサンス期の人間解放思想の騎手

本日ご紹介するのは、イタリア・ルネサンス期を代表する大思想家である、ジョヴァンニ・ピコ・デラ・ミランドラ『人間の尊厳について』という著作。

本著は、必ずしもピコの代表作ではないが、最も有名な著作だと言えよう。

元々はピコが企図した討論会の演説文として書かれたものであったとのことだが、討論会自体が実現しなかったようで、著作として残されたのだ言われている。

本著では、ピコの重要な思想的テーマと思われる、以下の2つのトピックが提示されている。

①人間は不定の本性を持ち、自由意志に基づいて自己の本性を決定することができる存在である
②あらゆる思想・哲学・宗教は真理へと向かう限りにおいて互いに補いあうものであり、根本的に一致するものである

なるほど、その主張の意図や是非はともかく、これらを論証するにあたってのピコの古代思想に関する博学と、自由な発想と構想力には目を見張るものがあった。

さながらピコ自身が自由意志の体現者であるかのようであり、非常に魅力に富んだ、ルネサンス期の人文主義を牽引するにふさわしい著作であると感じられた。

しかしながら、彼自身が若くして亡くなったこともあり、残念ながら彼の思想は体系化されるに至らず、その思想に対する後学の見解には諸説が生まれる結果となっている。

殊に議論を呼ぶのは、②の諸思想の根本的統一の理念を所謂ミクロコスモス(人間は宇宙のすべての部分を共有する、小世界を内包する存在であるという考え方)的な主張と見るか否かという問題だという。
この点について、本著のみから結論を導き出すことは困難だと思われる。

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さて、ピコの著作は日本ではそう簡単に読めるものではないのだが、本著では、これらピコを巡る数多の議論が非常に丁寧に解説として纏められている。

本書は、およそ350ページのうち何と約5分の4までもが訳者の注と解説によって占められているという力作なのだ。

本書の訳者である、大出哲、阿部包、伊藤博明の三氏には脱帽である。

読了難易度:★★☆☆☆
ルネサンス期の人間復興度:★★★☆☆
トータルオススメ度:★★★☆☆

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