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書評:山内昌之編著『中東とISの地政学』

各界の中東専門家が集いし小論説集

今回ご紹介するのは、山内昌之編著『中東とISの地政学』という著作。

中央アジア、中東研究の大家である山内昌之先生のもとに集いし執筆陣が、各々がテーマを設定し小論説を展開するという構成の著作である。

中東は恐らく多くの一般日本人にとって捉え難いエリアではないだろうか。当然私にとっても然りである。

しかしながら21世紀に入って以降、中東が世界の火薬庫としての存在感が益々たかまっているというのは過言ではないだろう。

私としては、少しでも勉強しておきたいエリアだ。

さて本著であるが、基本的にはIS(イスラム国)の起源を辿る辺りからが時間軸上のスコープとなっている。つまり、多くの執筆者において2003年からのイラク戦争以降というスコープが設定されている。

※因みに、アルカイーダなどを含む広義のイスラム過激派・戦闘集団を対象とした場合だと旧ソ連によるアフガン侵攻辺りからを、更に広く現代の中東情勢の不安定さの淵源を辿る場合なら100年前のサイクス・ピコ協定辺りからをスコープと設定されるのが一般的である。

時間軸上のスコープが比較的短い分、多くの執筆者において議論は詳細だ。正直、全部頭に入れるのは私にとっても甚だ難しいものであった。

こういう時私の場合は、何について語られていたかテーマだけをピックアップしてインプットしておき、ディテールは都度著作を辞書のようにリファレンスすればよいと、割り切って読むようにしている。全部頭に入れようとするとパンクして読了できないからだ。

そして、ピックアップ・インプットしたテーマはざっと以下のようなものである。

◯イスラム過激派組織の大枠の分類と、そこにおけるISの位置付けについて(大分類としては、「外向きジハード系」と「内向きジハード系」あり。ISは「内向き系」)
◯イスラム過激派組織の離合集散の過程について
◯中東各国における政治的空洞化の歴史的過程について
◯欧州からISに参加する若者達について
◯テロが起こっていないモロッコの分析を通した封じ込め方策のヒントについて
◯中東情勢と日本のエネルギー政策について
◯中東ビジネスのチャンスとリスクについて

繰り返しになるが、頭に残しておいたのはこの程度。あとはそれぞれの内容については、大体著作のどこら辺に書いてあったかくらいなもので、内容を語る段になると、該当箇所を読み返しながらとなる。それでいいと思っている。

なんだか私のの読書法みたいな話を強調してしまったが、本著は日本人の中でもかなり中東に精通した研究者・ビジネスマンが執筆しているため、2003年以降の中東を知るにはオススメである。

読了難易度:★★☆☆☆
広角的言説度:★★★★☆
情報詳細過ぎ度:★★★★☆
トータルオススメ度:★★★★☆

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