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書評:高橋哲哉『逆光のロゴス』

若き日の高橋哲哉先生が読み解く「ロゴスの裏側」とは?

今回ご紹介するのは、高橋哲哉『逆光のロゴス」という著作。

本著は、20世紀の西欧哲学関係の言論界に一石を投じんとした若き日の高橋哲哉先生の力作である。

さて、一石投じとは何のことか。

「ロゴス」は西欧哲学的において、広く理性及びそれに係る諸々の概念を表現する用語であるが、歴史的に長く受け入れられてきた「ロゴス」なる概念の別の側面を捉えることに挑んだ著作となっている。

※物理的に物を見る場合、通常は対象に光を当てて見るわけだが、光の当たってない側から対象を見る=逆光の状態で対象を見る、というのが本著のタイトルの持つイメージである。月の裏側には何がある?に近い感覚で、(普段見えないような)「ロゴスの裏側」には何がある?という問題設定と言ったところか。

フッサール哲学が孕む歴史的「他者性」の問題提起を切り口に、ハイデガー哲学の内包する理性の「他者」の問題の指摘を経て、広く「ロゴス」の外部性というテーマにアプローチする。

そこにあるのは、(当時大流行だった)ジャック・デリダを論客の筆頭とする「脱構築」という概念の核心部分である。

「脱構築」という概念は、その知名度とは裏腹にその内容は中々にして捉え難いものであるが、本著はそれに対する一つの理解のあり方を示すものとなっている。

「脱構築」という概念の外堀から埋めていくアプローチを取る本著は、逆にその概念の領野の広さを示す形になっているとも言えるだろう。

裾野の広がり故に余計に「脱構築」の内容の核心がわかり辛くなってしまうのではないか、との懸念もあるかもしれないが、この点については本著の最終章でカバーされるので問題ないだろう。

20世紀の西洋哲学、就中「脱構築」という概念を読み解く1つの座標軸として、十分に読み応えのある著作である。

とは言え正直、10代の私にはあまりに難解だったため、ほぼ根性だけで死に体で読破したという青春のほろ苦い思い出の著作でもある。

読了難易度:★★★☆☆(←やや難解)
脱構築概念理解補助度:★★★★☆
脱構築概念の裾野の広がり描写度:★★★☆☆
トータルオススメ度:★★★☆☆

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