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書評:坂部恵『ヨーロッパ精神史入門ーカロリング・ルネサンスの残光』


ヨーロッパの精神的遍歴の淵源としてのカロリング・ルネサンス

今回ご紹介するのは、坂部恵『ヨーロッパ精神史入門ーカロリング・ルネサンスの残光』という著作。

実は今回の選書は少し変わった観点で、私がこれまでに読んだ本の中から「全く歯が立たなかった思い出の書」というものをご紹介してみようと思った次第である。

その記念すべき第1作は故・坂部恵先生による本著であった。

一般に「ルネサンス」という言葉でまず念頭に浮かぶのは、14世紀にイタリアで始まりやがて西欧各国に広まった古典の復興運動ではないかと思われる。

そしてその連想で思い浮かぶものとして、フランク王国のカール大帝時代(8世紀〜9世紀)に起こった古典の復興運動を指す「カロリング・ルネサンス」が来るのではないだろうか。

この連想プロセスの前提には、言わば「カロリング・ルネサンス」は「イタリア・ルネサンス」の小規模版というイメージがあるのではと予想している。

事実、世界史の文化史レベルや西洋哲学の入門レベルでは、「カロリング・ルネサンス」という事象の存在を学ぶことはあっても、そこで活躍した思想家・哲学者等に触れられることはあまりない。

規模が小さいことがもちろんその理由の1つであるが、歴史を大局的に見た場合、西欧の中世という時代は文化的に「暗黒時代」と評されるほど、その時代に生産された人文的成果が近・現代の人文に対してそれ程大きな影響を残していない、という理解が学術的にも一般的となっていることも理由として挙げられるだろう。

本著は、そうした一定の学術的見解に対し、「それでもカロリング・ルネサンス期の人文的成果は近・現代の文化に対し残り香のような影響は認められるはず」というスタンスから、一般的にはかなりマイナーな当時の人文的成果を探索する、というテーマで著された著作となっている。

言わば、西欧の精神的遍歴の淵源をカロリング・ルネサンスに見るという視点から、9世紀から現代に至る西欧の思想・哲学を俯瞰する内容だ。

さてここからが本題の「歯が立たない話」。

まず、登場する思想家・哲学者の名前が半分以上聞いたことがない。
そして、坂部先生による解説の内容に全くついていけない。

西欧哲学に関しては一通りの教科書的教養は持っているつもりであったが、そんな俄か知識では本書には全く通用せず。深い挫折感を覚えた。

切り口も、焦点を当てる思想家も、一般的なものとは全然違うと言って良いかと思う。本気でヨーロッパの精神史を研究するということがどういうことなのか、その一端を感じさせてくれた著作となった。

KING王もまだまだ精進して学び続けねばならない。

この著作は再読決定!と読んだ当時(20代後半?)決意したが、未だに躊躇しており、再読の見通しは立っていない。

読了難易度:★★★★☆
必要前提知識マイナー度:★★★★★
論旨難解度:★★★★★
トータルオススメ度:★☆☆☆☆

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