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マーケター育成論:真因遡及で真の課題を見つける

Web担の「デジマはつらいよ」原作者の中澤です。シリーズで書いていくマーケター育成論、今回は「真因遡及」というテーマです。ロジカルシンキングと抽象化スキルをわかりやすく解説します。

はじめに

こんにちは、Repro株式会社CMOの中澤です。(自己紹介はコチラ→)

シリーズで書いていく「マーケター育成論(教育論)」、今回のテーマは、「真因遡及で真の課題を見つける!」です。(なんか難しそう)

正直、このテーマは説明がかなり難しく、自分も完全には体系化できて無かったりするので、うまく解説できなかったらすいません。エッセンスだけでも伝えられたらと思います。

ちなみに育成論シリーズの他の記事はこちらでございます。
・PDCAは質より量、ABテストは顧客との対話
・右目・左目分析で仮説を見つける

Yotubeの動画でより詳しく解説していますので、お時間がある方はそちらもどうぞ。


真因遡及とは何か?

真因遡及とは超簡単に説明すると「観測された事象の背景にある、真の原因を見つける事」です。

ビジネスの現場で発生する課題の多くは、その背景に「真の課題」が隠れているモノで、その「真の課題」を原因としつつ、他にも同時多発的に「見かけ上の課題」が発生しているモノです。

真の課題を解決しないかぎり、見かけ上の課題への対策は「対症療法」にしかならず、また姿を変えて別の課題が発生します。

例えば、「最近やたらと身体が疲れるから、今日はレッドブル飲もう」と、エナジードリンクを飲んだとしても、翌日にはまた疲れ果てている事と思います。身体を鍛えるとか、ストレスを減らす生活をする、など根本的な対策を行わないかぎり問題は解消されません。

真因遡及を阻む3つの敵

しかしこの真因遡及がきちんとできてないケースがよくあります。なぜ真因遡及が失敗しがちなのでしょうか? そこには3つの敵が潜んでいます。

・手段の目的化
・論理の飛躍
・対症療法

こいつらが、あなたの適切な真因遡及を阻むのです。

例えば、あなたの部下が以下のような事を提案してきたとします。

部下「部長、店舗ブログの検索順位が落ちているので、検索順位をあげるために、以前やった時も効果のあった、投稿本数の増加を店舗に依頼しようと思うのですが、よろしいでしょうか?」
部長「ところで、なんで検索順位を上げなきゃいけないの?」
部下「店舗の来店客数が減っているからです!」
部長「・・・」

いかがでしょう、あなたはこの部下の申請を承認するでしょうか?

いろいろとツッコミどころ満載なので、まさか承認しないとは思いますが、一応、何が問題なのかを説明したいと思います。

手段の目的化と対症療法

この部下は課題の設定を「検索順位の低下」においています。しかし、真に解決したいのは「店舗来店客数の低下」です。

店舗来店客数の低下を課題として設定し直した場合、他にも様々な手段が考えられるはずです。ブログの検索順位向上は一つの手段でしかありません。

このように、本来の目的を達成するための手段だったものが目的化してしまうということはよくあります。それに対して、「ブログの投稿本数を増やす」といった、見かけ上の現象にのみ対処する「対症療法」を行ってしまうと、どんどん迷子になってしまいます。

論理の飛躍

店舗ブログの検索順位の低下が、直接的に店舗の来店客数に影響を与えるとは言い切れません。

事前の分析で大きな相関関係が認められているのであれば、その可能性も否定できませんが、店舗の来店客数には複数の要因が複雑に絡み合っているはずです。

よって、店舗来店客数低下の要因として検索順位の低下を直接的に結びつけるのは、論理の飛躍があると言えます。

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どのようにして真因を見つけるのか?

正しい課題設定ができたとして、具体的にはどのようにして「真因」を見つければ良いのでしょうか?

その具体的な方法が、「垂直方法の要因分解」「水平方向の共通因子の特定」です。

ここでは具体的な事例として、以下のコンビニエンスストアを想定して、解説していきます。

コンビニエンスストアA店
・高速道路の出口から繋がる、環状道路の脇に立地。高速道路の出口からは約1Kmの距離にある。
・駐車場スペースは普通自動車5台、トラックが止まれるスペース1台分
・2ヶ月前から売上が急に減少し、原因を究明中。

先にこの事例の答えを言ってしまうと、今回の要因は「同じ環状道路の高速出口からより近い場所に競合のコンビニができて、トラックの深夜ドライバーの来訪が減り売上が減少した」なのですが、真因遡及を図にすると、こちらのようになります。

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垂直方向の要因分解

垂直方向の要因分解とは、発生している課題(今回の事例では売上高の減少)の要因として考えられる事を、「因数分解」していく方法です。

この時の手法として「So Why分析」を使います。その課題が発生したのは「なぜなのか?」という問いを行い、その要因が見えたら、さらにその要因が発生する原因は「なぜなのか?」と問いを繰り返す手法です。

トヨタ自動車ではこれを5回繰り返す「なぜなぜ5回」という手法として定着しており、トヨタ生産方式を構成する代表的な手法となっています。

要因分解を行う際に最も簡単な方法は、「四則演算」で分解していく方法です。課題を足し算、引き算、掛け算、割り算で分解する事で、効率よく、漏れもダブリもない状態に分解しやすくなります。
この、「漏れもダブりもない状態」のことを、「MECE」と呼びます。

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水平方向の共通因子の特定

垂直方向の要因分解ができたら、今度は、その分解された要素に共通する「共通因子」を特定します

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共通因子の特定を探す方法として、統計解析手法である「因子分析」などを使う方法も考えられますが、全ての可能性となる変数や事象をデータとして保有している事は稀なため、実際には人間の「洞察力」に頼る事となります。

発見した共通因子が本当に「真因」なのかどうかは「So What分析」を用います。「So Why」の時とは逆に、この真因を解決したら要因分解した課題が本当に解決するのか、また、それらを解決したら本来解決したい課題(売上)が解決するのかを、確認します。

確認が取れたら、その共通因子は「真因」と考えて良いと思います。

真因遡及の実践を支える二つの能力

この真因遡及ですが「言うは易し行うは難し」の典型のようなモノでして、実際にいい感じに真因遡及を行えるようになるには、それなりの経験と能力を要します。

そこで重要になる基礎的な能力が「論理的思考」「抽象化スキル」です。

論理的思考とは、一言でいえば「筋道が立っている状態を作れる思考法」、または「モノゴトを正しく分解できたり、分類したりする能力」とも言えるかもしれません。

明確な定義をしようとするとノート2冊分になるので、Wikipediaで調べるか、こちらの書籍を参考にしてください。
世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく (日本語) 単行本 – 2007/6/28

ただ、ポイントはモノゴトをMECEに分解するという点が基本になるので、日常的に「なんでも分類してみる」トレーニングをする事で鍛えられます。

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もう一つが「抽象化スキル」です。

こちらは「論理的思考」以上に説明が難しいのですが、一言で言えば「個別的・具体的な事柄を一般的な概念へ昇華させること」。もっと平たく言えば、「モノゴトに共通する因子を見つけるスキル」です。

これを実践する際のテクニックが「つまりどういう事?」です。

いろんな個別事象を見て、「これってつまりどういう事だろう?」と考え、「つまりこういう事だよね」と結論づける習慣を作る事で、この能力が高まると考えられます。

このスキルがものすごく優れている人として、パッと思いつくのがお笑い芸人の「ねづっち」です。

彼の得意とする「謎かけ」は、まさにこの抽象化スキル、モノゴトの共通因子を見つける、というテクニックを芸のレベルまで昇華させたものと言えます。

実際「謎かけ」は、この抽象化スキルのトレーニングに結構使えるんじゃないかと、個人的には考えています。

【牛丼】とかけて【海】とときます。
その心は・・・・どちらも『なみ(波・並み)がある』でしょう。

【洋食】とかけて【丸】とときます。
その心は・・・・どちらも『はし(箸・端)がありません

【プロボクサー】とかけて【食物アレルギー】とときます。
その心は・・・・どちらも『げんりょう(減量・原料)が気になります』

実際の抽象化スキルはもっと高度な概念ですし、それだけで書籍が出てるくらいなのですが、自分としては、まあ、こんな捉え方で良いんじゃないかなと思ってます。

ぜひ皆さんも「謎かけ」で楽しくスキルを磨いてみてはどうでしょう?

最後に

今回は書くのにめっちゃ時間がかかりました。真因遡及を説明するのは難しいですね。正直、ちゃんと解説できたかあまり自信がありません。

自分の考えるマーケター育成論(教育論)は、「体幹」「コアスキル」「テクニック」の三層に分かれているのですが、真因遡及は「コアスキル」の層にあたるお話です。

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他のコアスキルに関するお話も、同じシリーズで書いていますので、ご興味がありましたらぜひ。

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