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デジタルマーケターはDX推進担当になれるのか?

アフターデジタルの世界において、企業の中で最も重要な役割の一つと言える「DX推進担当」。果たしてデジタルマーケターはその中心的な役割を担う事ができるのでしょうか?今回も独断と偏見に基づいて、考えてみたいと思います。

デジタルトランスフォーメーションの定義とその目的

デジタルトランスフォーメーション(以降、DX)とは、そもそも何でしょうか? 経済産業省はレポートの中で次のように定義しています。

「デジタル技術の活用によって企業のビジネスモデルを変革し、新たなデジタル時代にも十分に勝ち残れるように、自社の競争力を高めていくこと」

5G、IOT、クラウド、AIといった、先端技術(デジタル技術)の利活用が急速に進展し、従来の産業構造を根底からくつがえす破壊的なイノベーション、「デジタル・ディスラプション」なサービスが次々と産まれていく世界においては、全ての企業が、DXを推進して行かざるを得ない、そのような状態に今まさにあると言えます。

DXの推進は企業に何をもたらすのでしょうか? ただ単にデジタル化により、ビジネスの効率を向上させたり、既存事業の付加価値を向上させる事に止まらず、その本質は、「デジタルを用いた、新たな顧客体験および価値の創造」すなわち、「デジタル技術を前提とした、新たな利益や価値を生み出すビジネスモデルの創出・進化」にあると考えられます。

DX推進担当に求められる要件とは?

DXの推進において求められる人材要件とはどのようなものでしょうか?
DXの本質が新たなビジネスモデルの創出・進化にあるという前提に立てば、単にデジタルに精通しているだけの人材ではその要件を満たしません。
令和元年5月17日発表の情報処理推進機構のレポートでは、DX推進人材を以下のように定義しています。

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この中で、DX推進の中核を担うのが、「プロデューサー」と「ビジネスデザイナー」です。この両名については、外部業務委託(コンサルタント会社等)で担う事は難しく、社内のメンバーで構成する必要があります。

ビジネスデザイナーに求められる人材要件

新たなビジネスモデルやサービスを具体的に企画し、初期の推進をドライブする役割を担います。プロデューサーをプロジェクトオーナーとして、実際のプロジェクトをマネジメントしていく事になります。(既存事業の高付加価値化や高度化も含みます)

DX推進組織によっては、分野別に複数名必要になるケースがあります。必要な人材要件は以下のようになると考えられます。

① 新規ビジネスやサービスの創出に関わった経験
② 自社ビジネスや自社顧客に対し精通している事
③ 社内キーマンとの強い繋がり
④ 高い挑戦意欲、新しい事に対する高い受容性

実際にビジネスをデザインし、ドライブしていく役割から考えて、所謂、社内の若手ナンバーワンや、中堅のエース人材がベストであると考えます。

DXにおける新規ビジネスやサービスの創出は、多くの場合、自社の持つ競争優位な資産や、コアコピタンスをベースにしたモノになる可能性があり、また現業とのシナジー、または逆に「戦略的陳腐化」をはかるモノになるため、ビジネスデザイナーで結果を出すには、社外からの中途採用人材には難しく、社内からの登用や抜擢の人事になると思います。

プロデューサーに求められる人材要件

経営者の片腕となって、企業全体のDXを推進していく役割を担います。
企業全体そして組織文化レベルの変革を推進する立場であり、新たな付加価値を持つビジネスやサービスの創出を、ハンドリングしていくというミッションからも、相当にハードルの高い人材要件となります。具体的には以下の能力を有する必要があると考えます。

① デジタル技術及びデータ、デジタルの持つ特性に精通している事
② マーケティングに精通している事(4Pのレベル)
③ 新規ビジネスや新規サービスの創出経験がある事
④ 高いマネジメント力がある事(推進メンバーに対して)
⑤ 高いコミュニケーション能力と調整力
⑥ 現場力・現業力

⑤については、その企業において、既に皆に一目置かれているような役員が担当となった場合には、あまり問題となりませんが、①〜④については、かなり専門的な能力や経験が要求される事から、多くの企業において、プロデューサーの役割は、外部からのヘッドハンティング人材が担う、というケースが発生すると思います。

特に、DX推進を開始した企業が、「業務の効率化による生産性の改善」といったテーマから、よりDXの本質である、「新たな価値の創出」「現業の根本的な改革」といったレベルを進めていくためには、外部からの登用をより積極的に考えていく必要があるでしょう。

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市場的に不足するDX推進プロデューサー

プロデューサーを探す際に問題になるのが、①〜⑥の要素をバランス良く保有している人材が市場的にも少ない点です。少なくとも、DX推進組織のメンバーに対して的確な指示を出し、評価を行えるだけの知識と経験が必要になるため、マーケティング・IT・UXといった分野での知見は必要です。

特にマーケティングは、単なるプロモーション経験では無く、より戦略的なレベルのマーケティングマネジメントの経験値が必要となるでしょう。

加えて最大のハードルが、「新規ビジネスや新規サービス」の創出経験です。マーケティング、IT、UX等に加え、この要件を満たすとなると、更に経験者は少なくなってくるかと思います。

要件を満たす人材を外部から確保しようとした場合、最も確率が高いのは、「新規事業開発担当」や「ITベンチャー系の経営経験者」といった方達になってくるかもしれません。

コンサルティングファーム出身者も要件に近いかと思いますが、重要な要件として、「⑥」の現場力・現業力が無いと、最も泥臭いフェーズである、現場浸透や運用改善、また現場組織メンバーと意思疎通、といった点で挫折しがちです。

最後に、外部人材を投入した際の最大の壁が、変革に対する既存組織の抵抗、組織文化の壁となります。よって、プロデューサーには「チェンジエージェント」としての役割と、それに耐える忍耐力が要求されます。これについては別途こちらに詳しく記載してますので、ご興味があればどうぞ。

デジタルマーケターはDX推進担当になれるのか?

単なるプロモーション担当や責任者、という意味でのデジタルマーケターであれば、DX推進組織において果たせる役割は「限定的なモノ」にならざるを得ないと思います。

また、CMO経験者レベルであっても、無から有を生み出す「新規ビジネス開発」や「新規サービス創出」の経験が無ければ、「プロデューサー」の役割は果たせないのでは無いかと考えます。

ただ、デジタルデータに最も精通し、デジタルが作り出す顧客体験に対し、最も知見を有す人材の一つが、デジタルマーケターである事を考えると、プロモーションの枠に止まらず、「インサイト・バリュープロポジション・バリュープロセス」全体へとその活動を広げていく事で、DX推進のコア人材としての要件を満たしていくのではないでしょうか。

DX推進人材の不足が、日本のDX推進の大きなボトルネックの一つである事は、こちらの経産省のアンケートからも見てとれます。我々デジタルマーケターが、明日のDX推進人材となっていく事で、日本のDXがより進んでいく事と思います。

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