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LTVを高めるたった一つの方法 最終回

LTVのお話、最終回です。これまで色々書いてきましたが、やはりマーケターも本質的価値にアプローチする事が大事と思っています。そしてその一歩として「マーケティング・サービス作らない?」という内容を書きたいなと思います。


LTV向上には本質的価値の向上が必要

前回、Part5で書いた通り、マーケティングコミュニケーション等による「取引コストの削減」は、ユーザーの全体としての「体験価値」に与える影響はそれ程大きくは無いというのが現実です。

アマゾンは確かに卓越したマーケティングコミュニケーションを実現していますが、それも、あらゆる商品が揃う、合理的お得な価格設定である、Primeという素晴らしいサービスがあるという前提で、その価値を発揮しています。

ここら辺は、Part1で詳しく書いてるので、そちらをご参照ください。

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しかし、多くのマーケティング担当者が、企業の中で「製品そのもの」や「品揃え」「価格」といった、本質的価値部分に権限を持たず、プロモーションやコミュニケーション部分のみを、その職務の範疇に限定されている、という状況もあるかと思います。

では、我々は、一番の本丸である「本質的価値」部分に、アプローチする事はできないのでしょうか?

マーケティングサービスで本質的価値を作り出す

これまではマーケターが直接的に本質的価値を生み出すのは難しかったかもしれません。しかし、デジタル化の推進により、その状況は変わりつつあります。

まさに、デジタルトランスフォーメーションを、我々、デジタルマーケター自身が推進する事により、本丸の「体験価値」を創造可能な状態がやってきたと考えています。

マーケティングサービスにより、本質的価値を生み出すとは、どういう事なのでしょうか?

その具体的な事例を見てみましょう。

平安保険の事例

有名な事例の一つが、ビービットの藤井さんの著書「アフターデジタル」で紹介されている「平安保険」の事例です。

平安保険は中国の「保険」の会社で、2018年の時価総額で中国国内3位、Forbsの成長企業ランキングでも8位と、まさに急成長している会社です。しかしその歴史は意外に古く、1988年創業と、結構なレガシー企業です。

成長の原動力は様々ですが、その中でもとりわけ重要な役目を果たしたのが、「グッドドクター」という、アプリによるサービスの登場です。

このアプリは無料アプリなのですが、以下のサービスが提供され、中国の特殊な事情から、一般市民から多くの支持を受け、3億人近いユーザーが利用しています。

快速問診:オンライン上問診サービス。病院に行くべきか、何科が良いかがわかる。
探医生:実際に掛かった人のクチコミや評価を見ながらドクター単位で予約受診。
閃電購薬:処方薬のEC。
健康商城:サプリや処方不要の漢方薬のEC。
健康頭條:健康に関する様々なヘッドラインをチェックできる。

詳細はコチラの記事が詳しいので、ぜひ読んでみてください。(https://trillionsmiles.com/future/good-doctor/

中国は病院の数は多いものの、クオリティのバラツキが酷く、消費者との情報非対称性から、大病院に患者が集中してしまうという事情があるそうで、このアプリの登場により、真面目な開業医と、困っている患者さんを結びつける事ができるようになり、社会問題すら解決する事に役立っています。(相当内容端折ってます、すいません)

そして、平安保険はこのアプリにより、アプリを通じたダイレクトな収益(EC等)は副次的な収益として、本丸となる保険営業員との情報・サービス連携により、リアルな体験も含めた、総合的な体験価値を提供する事で、保険事業の収益を向上させています。

グッドドクターというアプリ自体は、無料の「マーケティング・サービス」であり、まさに、マーケティングがサービスそのものを生み出して、本質的価値を向上させて好例では無いでしょうか?

国内の事例

国内事例としては、ショップスタッフをメディア化した、「BEAMS公式サイト」なども、本質的価値の事例として挙げられるかと思います。

小売業としては、「製品そのものの価値、品揃え、価格」が本質的価値の構成要素となりますが、何よりも「実際に使用(着用)し利用した際の満足度」こそが、最も重要な「本質的価値」となります。

そして、ファッションの場合、「使用した場合の満足度」を大きく左右するのが、「コーディネート」です。自分の満足するコーディネートに合わせられる商品を見つけられた時に、この満足度は向上するはずです。

そこでBEAMSが取り組んだのが、「ショップ店員そのものをメディア化する」事で、自分にあったコーディネートを発見しやすくしています(全然違う狙いだったらゴメンなさい→矢嶋さん)

また、「会いに行けるアイドル」のように、ショップに行けば、直接その店員さんと会話や相談できる「リアル体験」が、デジタル体験と一体となって体験価値を創出している点も、平安保険の例同様に、素晴らしいなと感じます。


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その他の事例

その他にも、デジタル化と、アプリという自由度の高いプラットフォームを得た事により、近年、本来の本質的価値に、デジタルを用いた体験価値を「マーケティングサービス」として組み合わせる事で、全体の体験価値を向上させる取り組みが、急速に増えてきています。

・スターバックスの「「Mobile Order & Pay(モバイルオーダー&ペイ)」
→スピードという体験価値を提供
・ウオルマートの「オンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)」
→配送に代わる体験価値を提供
・ZOZOスーツ
→上手くいきませんでしたが・・・

ウーバーや、メルカリ、様々なD2Cブランドなど、デジタルを前提として立ち上がった、新興企業においては、本質的価値の中核が「体験そのもの」であり、そこを出発点としてサービスを構築していけます。

しかし、既に既存事業があり、しかも、その既存事業そのものの価値を転換する、または新たな価値を本質的価値のレベルの付加する、というのは、想像以上に困難です。(組織の壁、意識の壁、それまでの成功法則と常識の壁が存在します)

しかし、今後は、こういったサービスの事例がどんどん出てくると思います。まさに「デジタルトランスフォーメーション」ですね。

IDOMで僕がやりたかった事

手前みそなのですが、自分が所属するIDOMにおいて、僕がやりたかった事も、この、「マーケティング・サービス」そのものを産み出し、直接的にユーザーの体験価値を向上させるという事でした。

その一つとして、昨年9月にリリースしたのが、ガリバーオートです。

ガリバーオートは、アプリでクルマの写真を撮り、8問程度の簡単な質問に答えるだけで、クルマの査定金額をAIを使って算出するサービスです。クルマの撮影から価格算出まで「最短3分」で完了し、そのままアプリで、売却申請を行う事まで可能です。

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このサービスを作った背景なのですが、調査によれば、クルマの査定金額は平均して「約21万円」ほど、査定会社によって違う事がわかっているのですが、実際には半分近い方が、新車購入時等に「複数社で査定を行わずに、そのまま売却(下取り)に出してしまう」という実態があり、その背景に、「クルマの査定」が非常にユーザーにとって「負荷」の大きい、作業になっているという事があります。

一社のみで査定する人

クルマの査定の本質的価値は、ズバリ「価格」です。しかし様々なユーザー調査を重ねていくと、実は「価格」以外に、査定も含む売却までの「プロセス」そのもの、つまり「体験」自体も、本質的価値に大きく関わっている事がわかってきました。

査定の嫌な事構成比

ここにマーケティングそのものが、本質的な体験価値を提供できるチャンスがあると思い、作ったのが、ガリバーオートというアプリサービスです。

実際、アプリを通じ、これまであまり弊社に来なかったような顧客層、特にこれまで「クルマの査定」を敬遠してきたようなユーザーが、多く査定を利用してくれています。また、ユーザー様から沢山の「ありがとう」を頂けた事が、何よりも有難いです。

マーケティング・サービスを作ろう!

いま、我々デジタルマーケターは、ユーザーに本質的価値を提供する「マーケティング・サービス」を生み出せる、非常に恵まれた状況にあると思います。

その背景には、何よりもスマートフォンの浸透、そして「アプリ」の存在が大きいです。

アプリの利用数は加速度的に増加しており、そして、アプリという非常に自由なプラットフォームは、これまでの単なるECと異なり、アイディア次第で、いかようにでも新しいサービスを生み出す事が可能です。

開発言語の自由度、UIの自由度、位置情報を含む扱える情報のバラエティ、そして量。そしてプッシュ通知を通じて、ユーザーとのリアルタイム・コミュニケーションを継続的に接点確保する事も可能です。

正直、これまで15年以上、デジタルマーケティングに携わってきて、プロモーションや、メール等のコミュニケーションによるマーケティングが、ユーザーに与える影響力というのは、残念ながら限定的である、という実感を持っています。

ユーザーに、ダイレクトに価値を提供するマーケティング・サービスの創出、そして、その「体験価値」を最大化するという観点で、マーケティング・コミュニケーションを磨いていく事が、より、我々、デジタルマーケターの力を最大化できるのでは無いか?と今は考えています。

なので、みなさん。マーケティング・サービス作りましょう。アプリを立ち上げましょう。

あ、アプリ作ったら、Reproとかの、コミュニケーション・ツールの導入は忘れずに。じゃないと、価値を最大化させる、コミュニケーションの磨き込み(PDCA)が超大変です。

最後に

LTVのお話「全6回」、お付き合い頂きましてありがとうございます。全6話をこちらのマガジンにまとめましたので、よろしければどうぞ。また、今後、LTVやCRMの話を書いた際には、こちらのマガジンに追加していきますので、登録をお願いいたします。



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