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LTVを高めるたった一つの方法 Part5

LTVのお話5回目は、具体的に顧客にとっての「取引コスト」をいかに引き下げるか、という点について考えてみたいと思います。例によって、独断と偏見に満ちた内容のため、もしかしたら業界関係者の皆様に怒られるかもです。


はじめに・・・

まず、皆さんの置かれている状況によって、様相はだいぶかわります。

前提として、今回は、本質的価値(製品やサービスそのもの、または品揃えや価格決定権)をコントロールする権限が無く、プロモーション等のコミュニケーション面しか、いじれない場合を前提としています。

この場合、もし、あなたが圧倒的なブランド力や、明らかに競争優位な商品やサービスのマーケティングを担当しているのであれば、ラッキーです。恐らく大概の施策は、何をやっても当たります。そんなあなたは既に勝ち組です。

逆に、どう考えてもブランド力や、本質的な価値、で明らかに競合他社よりも劣る製品やサービスのマーケティングを担当しているのであれば、すいません。おそらくよっぽどのウルトラCが無い限り、どんなにマーケティング・コミュニケーションを頑張っても、現状維持がいいところかもしれません。

競合他社と戦えるような製品・サービスを保有している場合、または、本質的価値に優れているのに、うまく世の中にそれを伝えられていない場合には、マーケターのやれる事は多いです。取引コストの低減策が、そのまま競争優位に繋がる可能性も大きいかと思います。

何が言いたいかというと、全体のマーケティングの中で、プロモーションやコミュニケーションの与える影響は限定的であり、8割がたは製品やサービスそのものの「本質的価値」で勝負が決まってしまう、という現実が前提にあります(残念ながら・・・)

取引コスト削減のアプローチ方法

Part1で書いた通り、顧客の取引コストには以下の3種類が存在します。

・探索コスト
商品検索の容易さ、レコメンド等のマッチング精度、購入判断のしやすさ(レビューとか)など
・交渉コスト
クーポン、ポイント制度、決済手段、配送日数、受け取り手段、チャット相談など
・監視コスト
ブランディング(信頼性)、出品者評価、EC事業者自体に対する口コミや評判など

そしてこれらの取引コストは「繰り返し利用してもらう事(慣れてもらう)」で、全て下がっていきます。LTVの向上を考える上で、「顧客リテンション」が最も重要である理由の一つがここにあります。

よって、LTVを目的とした場合、基本的なアプローチは以下の2つになります。

① まず、利用にあたって「不満」を発生させない。
→ここ使いずらいなー、何とかなんないかなー、とか、とにかく「体験上」の不満を発生させない。
→正直、アマゾンにはどうやっても勝てないので「卓越する」必要は無いと思います。

② ユーザーの再利用を「サポート」する
→前提として、決して「うざがられ」てはなりません。なので、お客様を無理に「リピート」させる事は逆効果、という事を知る必要があります。
→ユーザーが再利用する「動機」がある場合に、それを「サポート」する形で、アプローチを行う必要があります。いわゆる「オファーとタイミングの最適化」です。

利用にあたって「不満」を発生させない

LTVを考えた場合に、実は一番重要なのがこのポイントになります。何故なら不満を抱えた状態では、どんなにその後の「再利用サポート」アプローチを行ったとしても、常に「マイナスの状態」を引きずる事になり、ユーザーに「他社スイッチ」を行う動機を与えてしまいます。

不満を発生させない為のアプローチとして、特に重要度が高いと思われるのが、Webサイト自体の「体感速度」です。

・ Webサイト自体の「表示速度」
・ Webサイトの「検索速度」

Webサイトの体感速度は全ての「体験」に影響を与えます。新規ユーザーにも既存ユーザーにも影響を与え、なおかつ「慣れ」ません。よって、取引コストの削減を狙うのであれば、最も優先度が高いのは「速度」の向上です。

特に表示速度の優先度が高いのには、2つ理由があります。一つは、GoogleでのSEO検索順位に直結する為です。集客の観点からも速度は重要です。

次に、取引コストを削減する為に、レコメンドエンジンや、Web接客ツールなど、様々な「ツール」を導入したくなってくるのですが、基本、ツールを入れれば入れるほど、タグを導入すればする程、速度は落ちる為です。

Webサイトの表示速度については、 Google PageSpeed Insightsが役に立ちます。既に多くのユーザーの「体感標準」がAmazonとなっているため、できれば、Amazonレベルの速度は担保したいところです。

不満をキャッチする為に「有人チャット」を利用する

利用にあたっての「不満」を発生させない為に、もう一つ有効な手法が「有人チャット」を行う事です。ユーザーにとっての行動の障壁は、運営者側が思ってもみないところに潜んでいる事が多いです。

「不満を持った顧客の96%は、企業に対して何も言わない」という格言の通り、ユーザーはその障壁を教えてくれる事は基本、ありません。そのため、これらの「障壁」を運営側がキャッチする事は意外に難しいのです。

この解消の有効な手法として、「機会損失を削減する事を目的とした、有人チャットの活用」があります。

Webサイトの提案力向上を目的とするのではなく、あくまでも、ユーザーの利用をサポートする事を目的に設置する事で、ユーザーは、利用においてぶつかった障壁を「発言」してくれるようになります。

ここで得られた知見を、Webサイト等の改善に役立てる事で、「不満の発生」する箇所を未然に防ぐ事が可能になります。

「機会損失を削減するためのチャット利用法」については、別途、Noteで詳しく書きたいと思います。

ユーザーの再利用をサポートする

単にリピート率を高める、休眠顧客を復活させる、といった「RFM」の視点に立った運用を行うと、案外うまくいきません。なぜならば、RFMは全く顧客側の都合に立った分析手法ではなく、顧客が「再利用したくなる動機」についての情報は与えてくれないためです。

そこで、ユーザー毎の購買傾向や、サイト上での様々な行動情報を元にし、適切なシナリオを描き、ワンツーワンでアプローチする「MAツール」等の出番となるわけですが、、、正直、これらのツールで成果を上げるには、相当の気合いと根性と労力が要求されます。

これらのツールでどうやって成果を上げるのかは、いろんな方が沢山書いてるので、特にここでは触れません。

自分としては、とにかく、「購入頻度が高い」商品やサービスを、徹底的に再利用させる方法が一番効果あるな、と経験上感じています。ゴルフ用品でいえば「服飾品」と「ボール」、ドラッグストアであれば「水」です。

「慣れ」というのは恐ろしいもので、慣性の法則のごとく、高いスイッチングコストを発生させます。なので、とにかく「再利用」させて「慣れ」させて、スイッチングコストを上げて行く事こそ、実は、LTVを考えた上で一番現実的な戦術かなと(賛否両論ありますよねきっと)

再利用を促す為には、これらの商品カテゴリーを「再利用促進カテゴリ」と割り切って、価格優位、もしくは「ポイント付与を厚めに」盛る事で、他社に行く理由をなくす必要があります。

その上で、ユーザー毎の「購買頻度と間隔期間」の分析精度を向上させて、効果的に「MA」によるオファーをはかっていきます。

購買頻度を無理に上げる事は基本できません(こないだ買ったばっかだよ!とユーザーにうざがられます)。「そろそろ切れてきたんじゃない?」みたいなタイミングをうまく測る必要があります。カテゴリと目的を絞る事で、MA自体のシナリオ設計も比較的容易になります。

最後に

取引コストを削減する手法は、他にも、それこそ星の数ほどあります。そしてマーケティグカオスマップに掲載される、数百のデジタル支援系ベンダーも、多くが、この取引コスト削減を支援する領域か、広告の領域です。

正直、勝負の大部分は「本質的価値」で決まってしまうため、「本質的価値」を支援するベンダーや、それらにまつわる「セミナー」等がもっと開催されてしかるべきなのに、、というのが正直な感想です。

次回はいよいよ最終回となります。








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