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【承認率95%以上】社長決裁の正しい通し方 〜前編〜

Facebookとかで投稿したら思った以上に反響がありましたので、これまで大企業の中とかで数千万円レベルの「社長決裁」を何度も通してきた経験をメソッド化してみました。前編・後編・闘争編の三回に分けてお届けします。


はじめに

こんにちは、Repro株式会社CMOの中澤です。Web担当者フォーラムで「デジマはつらいよ」の原作も書いてたりします。

ご存知の方も多いかと思うのですが、これまでデジタルマーケやDXの推進責任者として、多くの企業に携わってきました。

その中には、従業員5000名を超えるような大企業もあったのですが、やはり企業というモノは、ある一定以上のインパクトある施策を行おうとすると、「決裁」というモノは避けては通れない道でして・・。

僕の経歴についてはコチラで→

部長以上ともなればなおさら。決裁者は社長や経営陣となってきますし、ステークホルダーも多くなってきますので、直接の上司である「部長決裁を貰う」時とかとは、違うテクニックや心構えが必要になってきます。

どんなに素敵な戦略や顧客体験を描いたところで、それを実現できなければ何の意味もありません。そしてマーケ部長やDX推進責任者にとって、決裁はその実現にあたり避けては通れないイベントです。

なので、「決裁を通す技術」はある程度の役職者にとっては必須の技能であり、イケてるビジネスマンたるもの、その能力に磨きをかけていく事も大事なことなのでは無いかと、僕は考えています。

あんまりこういうこと書くと、叱られちゃうかもしれないのですが、直近いた企業の中でも、自分はたぶん一番多くの金額と回数、決裁を通してきたと思うのですが、決済通過率「95%」という驚異的な成功率を誇っていました。

なぜ、高い成功率で決裁承認を獲得できてきたのか。今回はこれまでの実務経験の中で培った、そのノウハウについて書いていきたいと思います。

今回の内容は、マーケ部長の方や、DX推進責任者の方が経営陣への決裁をどう通すのか、という視点で書いてます。

なので、社長をされている方とかには、あまり読んで欲しくないです・・手の内がバレてしまいますので。。。

決裁で最も大事なのは「正しく判断してもらう」事

まず最初に、「決裁」そのものの意味を正しく整理しておきたいのですが、決裁とは

決裁 = 長たる者が、部下の差し出した案の採否を決めること

です。

「案を通す」事が決裁の目的なのではなく「案の採否」を判断してもらう事が、決裁という行為の意味であり目的です。この前提がとても大事です。

なので、長たる方が案の採否を判断するためには、その長が「正しい判断を行える状態」が前提になければいけません。そして決裁を受ける側は「正しく判断してもらえる状況を作る」責任があります。

この「正しく判断してもらえる状況を作る」というのが、部内の決裁とかであれば比較的容易なのですが、経営レベルの決裁を受ける際には一気にハードルが上がります。

その要因が「日常的なコミュニケーションの量」と「見ている風景の違い」にあります。

日常的にコミュニケーションを取っている部内であれば、お互いの情報レベルや、その背景にある課題感についてもある程度共通認識が取れていたりするモノです。

よって、前提情報をある程度はしょったりしても、比較的正しい判断がされやすいと思いますが、経営レベルの決裁となるとそうはいきません。

経営者や経営陣は、多岐にわたる分野における意思決定を日々行っており、各部門の状況についても、それほどリッチな情報を持っていないのが普通です。

もちろん、戦略上の課題やKPIなどの共通認識は取れているかとは思いますが、決裁における判断を正しく行うという観点からは、情報の量にも質にも大きな格差があるモノです。

また、経営陣の見ている風景と、我々の見えている風景は異なります。

視野の広さ、時間軸の長さ、課題設定のあり様といったモノに大きな隔たりがあるということを前提に立つ事が重要です。

決裁者と決裁申請者を隔てる壁

決裁者と決裁申請者の間を大きく隔てる壁には、以下のようなモノがあるのではないかと、経験上考えています。

① 情報格差
② 検討レベルの差
③ 視野や視点の差

情報格差は、そのものズバリ、申請者と決裁者の間で持っている、情報の量と質の違いの事です。特に経営陣との間では情報格差は拡大します。

当然、判断は、持っている情報に基づいて行う事になりますので、この差を埋めておかないと、正しい判断に結びつきません。

検討レベルの差は、その結論に至るまでに行ってきた検討内容や深さの差です。当然、決裁者は申請者と同レベルにはその課題を検討してきていませんし、検討している課題の領域や深さが異なります。

視野や視点の差は、ちょっとわかりにくいかと思いますが、要は視座の高さや、見ている時間軸の長さに起因します。あとで詳しく説明します。

経営陣と決裁申請者の情報格差

まず「情報格差」についてですが、これはわかりやすいと思います。

そもそも、その案件を立案するに至った「背景」となる情報、検討中に得た情報、その全てにおいて経営陣との間には情報格差が存在します。

特に意識しなければいけないのが、自部門のメンバーにとっては「当たり前」の事、自部門の関わる業界では「常識である」事が、経営陣にとっては「当たり前」でも「常識」でも無いという点です。

このポイントを見誤ると、決裁会議の場などで、この部分の摺り合わせに多くの時間が取られてしまい、本題の議論に入れず時間切れになってしまう可能性が発生します。

また、「社長は何でこんな事もわかってくれないんだろう」と、憤りだけが残ってしまったりし、決裁を否認された真の原因に思い至らず、2回目も同じ失敗をする事につながります。

予め、経営陣と自分たちとの間には、どのような「情報格差」がありそうかを想像しておき、それを効率よく埋めるアプローチを、事前、及び、決裁会議の本番に織り込んで置く事が重要です。

具体的なテクニックとしてオススメするのが、「喫煙所」や「エレベーター」の中で経営陣をつかまえて、決裁会議の1ヶ月前くらいから少しづつ情報格差を埋めていく方法です。

その際に、「他社の事例」や「記事で読んだ」という名目で、「ちょっと面白い事を聞いたのですが」といった風に、あくまでも自社ではなく、第三者的な情報として、興味を引くような雰囲気で伝えるのがポイントです。

なぜならば、自社の課題や取り組みに関する事は、どうしても「何か判断しなければならないのでは無いか?」など、聞き手となる経営陣を身構えさせてしまうためです。

情報格差を埋める事が目的なので、インプットする際には、できるだけ相手がリラックスし、素直に聞き入れてくれる状態を作る必要があります。

経営陣と決裁申請者の検討レベルの差

経営陣に決裁を受けるような案件は、当然それまでの間に部門の中で、何度も検討を重ねてきた結果としてのアウトプットのはずです。

その中においては、様々な仮説が検討され、保留され、また検討されを繰り返し、おおよそ、経営陣への決裁案件となる段階においては、殆どの検討要素は潰され、様々なケースが想定されきった状態となっていると思います。

決裁で正しい判断を受けるためには、この検討レベルの差を早い段階で埋める必要があります。

その際に大事なのが、これまでの検討結果を、「経営陣がどのような点を意識するか」という視点で整理する事です。

決裁会議の場だけで、この格差を埋められれば良いのですが、検討規模が大きな場合や、複雑な場合には、会議の限られた時間ではこの格差が埋められないケースも出てきます。

このような時にオススメするのが、決裁会議とは別に「相談会」を事前に開催する方法です。

意思決定をもらう「決裁」の場ではなく、経営陣の意見をもらう「相談会」をあえて事前に設定する事で、この格差を埋める時間を十分に確保すると同時に、本番の決裁会の場で、経営陣が「どのような点を気にするのか」を事前に把握します。

これにより、本番の決裁会での時間を、より本質的な議論に集中させ、決裁会の成功率自体を上げる事が可能になります。

経営陣と決裁申請者の視野や視点の差

企業全体の活動をマネジメントする経営陣と、その活動の一部を担う部門メンバーでは、自ずとその視野や視点に差異が生じます。

また経営陣と、部長レベルとでは、持っている情報の広さに差があり、また全社的に見た場合の課題の優先度に対する感覚にも、ズレがあります。

よって、決裁における正しい判断を引き出すには、経営陣と自分との「ピント」を調整しておく事が大事になります。

このピントがずれてしまうと、思わぬ地雷を踏んでしまったり、経営という観点からの優先度が上がらない結果になってしまいます。

決裁における判断の多くはトレードオフの関係にあり、限られた資源をどう分配するのかという意思決定です。

よって、現時点における経営の関心事、他に上がっている決裁案件、といった事に目を配らないと、「そのうち取り組もう」と、判断を保留されたり、引き延ばされる結果にならないとも限りません。

この、経営陣との目線・ピントの調整にオススメのテクニックが「役員秘書と仲良くなっておく」という方法です。または、経営企画室などでも良いかと思います。

要は、社長や経営陣の現在の関心事項や、他決裁事項の状況について、最も情報を持っている協力者を確保するという事です。

この協力者から、これらの情報を引き出し、把握しておく事で、経営陣とのピントを、ある程度補正しておく事が可能です。

もちろん社外への決算発表資料、中期計画、社長の講話といった発言は、もちろん事前チェックし、そこから類推しておく事は基本です。

また、「情報格差」のところで書いた、喫煙所やエレベーターでの立ち話で、「最近、こういう事、結構、全社的課題だと思ってるんすよねー」という感じで、比較的フランクに話せる役員に投げかけて見るのも、効果的です。

何かヒントをくれるかもしれません。

後編に続きます!

ここまで前編では、決裁で重要なのは「正しい判断をしてもらえる状況を作る事」というテーマで書いてきました。そのポイントは以下の3つ。

① 情報格差を埋める
② 検討レベルの差を埋める
③ 視野や視点の差を埋めてピントを合わせる

後編では引き続き、高確率で決裁を通すための方法論、「決裁HACK」について、特に決裁会議での資料、振る舞い、そしてアフターフォローについて書いていきたいと思います。

→ 社長決裁の正しい通し方(後編)はコチラ

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では後編をお楽しみに!


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