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【恋愛小説】緋色に堕ちた婚約者 〜prologue〜


〔あらすじ〕

 子爵令嬢レティシア、十四歳。彼女には幼い頃に決められた婚約者がいる。お相手は侯爵令息エルウィン。彼は二歳上の紳士で、彼女をお姫様のように扱ってくれた。
 その頃のレティシアは疑いもしなかった。彼は自分を想ってくれているのだと。自分とずっと一緒にいてくれるのだと。

 エルウィンが首都のアカデミーに入学して数ヵ月。レティシアはとあるお茶会に参加していた。優雅なひと時を過ごす中、彼女はそこで衝撃の事実を耳にした。
「あのブラームス侯爵令息にどうやら春が訪れたらしいですわよ」

 崩れゆく日常、浮上した疑惑。その日を境に、レティシアは他の女性に堕ちてしまった婚約者との未来に疑念を抱くようになった。



[約430字]



〔本編〕



〜prologue〜




 初恋とは、恐ろしいくらいに鮮やかで、眩く、そして濁りを知らないものだ。


 私――レティシア・プライムの初恋は、四歳の時。相手は二歳上の男の子。陽光に照らされて輝く、薄茶色のふわりとした髪。常に柔らかく三日月型に象った、碧色の目。侯爵子息らしく洗練された、立ち居振る舞いと笑顔。

 顔合わせという名の初対面の場。彼は幼子である私に対して片膝をつき、一人前のレディーとして丁寧に扱ってくれた。我が子爵邸の中庭にある噴水前、二人の周囲をきらきらと舞う水飛沫。それはまるで、私達の未来を光の粒が祝福してくれているかのような、素敵な幻想に包まれた出逢いだった。

「はじめまして、レティシア嬢。僕の名前はエルウィン・ブラームス。――君の婚約者だよ」

 今でも忘れられない、ほのかに赤みを帯びた、幼さの残る彼の笑顔。あの時の私達は確かに、濁りのないまっさらな想いをお互いに抱き合っていた。それはきっと現実になるのだと信じていた。


 そう、それはもう、幼き頃に置いてきた過去の思い出――。








〔続きはコチラから〕



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愛世(趣味:小説書き)
【文章】=【異次元の世界】。どうかあなた様にピッタリの世界が見つかりますように……。