短編小説【初心者同士】3/3
澄んだ青空を見上げれば、抱くのは安心感。春風に揺れる木々の香りを嗅げば、思い浮かぶのは平穏。それこそ神崎隼人の願いであり、唯一の時間だった。誰にも邪魔されないひと時なんて、手に入れることが難しいこの時代。その難関を突破した隼人にとって、この芝生の上は貴重な拠り所であった。
柔らかい芝生の上に仰向けになると、一気に視界を埋め尽くすのは透き通った空。大海を泳ぐわた雲は右から左へ流れていき、小さな演奏会を開く草木はひたすら聴衆にメロディーを奏でている。特等席に寝そべる隼人は瞼