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短編小説【初心者同士】1/3


 はじめに

 思いつきでササッと書いた小説です。どうか軽い気持ちでお読みください。
(もしかしたら後々手直しするかもしれません)


〜隼人の場合〜


 俺は神崎隼人、今年の春に入学したばかりの高校一年生。顔良し、頭良し、運動神経良しの、自他ともに認める学校一の人気者だ。

 入学式では俺の噂を聞きつけた先輩女子達が大勢駆けつけ、入学してからというもの一ヶ月経ってもIDやプレゼント攻撃は止まず、「人集まる所にもれなく神崎あり」と言われるほど。「バスケ部に入部する」と噂が広がればバスケ部にマネージャー申し込みが殺到、「バレー部に入部する」と噂が立てばバレー部にマネージャー申し込みが殺到。お陰でどの部活からも門前払い。端からそんな気もない俺は悠々と帰宅部を選択。……ホント、迷惑な話だ。



「なぁ、神崎って二年の花村先輩と付き合ってるってほんと?」

 そろそろクラスメイトの顔と名前が一致してきた頃。教室でまったりと一人でランチしていたら、それまで特に会話もしたことがなかった奴から急にそんなことを訊かれた。

「この前の放課後、水泳部の部室で二人きりだったってマジ?ていうか、何してたん?」

 おいおい、露骨に訊いてくるな。というか花村って誰だよ。水泳部の部室ってどこだよ。俺が知らねぇことを何でいかにも真実みたいに訊いてくんだよ。

「……それ誰から聞いた?」
「え?二年の先輩。それと花村先輩本人」

 ……うわぁ、最悪。もうホント勘弁。これ系の嫌がらせ、もう何回目?保育園の時からこんなのばっかり。人って成長しないのか?

「……俺は知らない」
「いやいや、知らないってなんだよ」
「本人が言ってるんだからそうなんじゃない?」
「うっわぁ、マジか。すげぇな、去年のミスだろ?」
「へぇー、そうなんだ。知らなかった」
「知らなかったって、自分の彼女のことじゃん」
「ちなみに花村って先輩のことも知らない」
「……は?」

 さて、最後の唐揚げも食ったことだし、空気の悪い教室からいなくなるとするか。弁当箱を片付けた俺は、あっけらかんとした顔の奴とその他クラスメイト達を放って、さっさとその場を後にした。



 生まれた時から顔良し、保育園の時から頭良し、小学生の時から運動神経良しの俺。結果、生まれてこの方ホント碌なことがない。羨ましい?鼻にかけてる?まじでふざけんな!


 ここは校舎裏、周囲を木で囲んだひっそりとした場所。昼飯後はここの芝生に寝転がってうたた寝するのが日課。人っ子一人いない場所を探してようやく見つけた俺の憩いの場だ。

 ……やっぱり一人が一番いい。心が落ち着く。一人でいれば好奇もない、嫉妬もない、敵意もない。ふと瞼を開けば爽やかな青空。……うん、いいひと時だ。


 俺の周りに人が集まると、いいことなんて一つもなかった。それは女だけじゃない、男も同じ。酷くなったのは中学生になってからだったな。「今まで何人と付き合った?」、「何回キスしたことある?」、「ずばり経験人数は?」。どいつもこいつも下世話な話ばっかりしやがって。

 付き合った人数?キスした回数?経験人数?

 はっ、どれもこれも無いわ!



「……恋愛なんて、ガキの頃から人間にウンザリしてる俺にできるわけないじゃん……」

 ……でも本当は、そんな人がこの世に一人くらいいるんじゃないかって、心のどこかで期待してる俺がいる。

 ……ホントにほんのわずかだけど。




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【文章】=【異次元の世界】。どうかあなた様にピッタリの世界が見つかりますように……。