無名のスーパースター
こんにちは、きのこの山派代表の結城りんねです。
今日は僕の中学生時代のお話を。
以前どこかでお話しした気がしますが、僕の地元はいくつか歴史的建造物的なのがあって、通学路に観光客がいるのが日常だったんです。
彼らとのふれあいは当時の僕にとってそれなりに刺激的で、中学生という難しい時期をより鮮やかで爽やかなものにしてくれたような気がしています。
その日の僕は部活を終えて帰路についていたんですが、なんとなく毎日の通学路に飽きてしまい、いつもは通らない川沿いの道を帰ることにしました。
その川というのが一応観光スポットのひとつになってて、それに沿う道はいわゆる観光客ロードのようなものだったんです。
当時の僕は(今もですが)観光客の方に道を尋ねられるのがすごく苦手で、意図的にその道を避けていました。
そんな事情がありながらもその道を選択した。その背景には、あるいは日々に感じている行き詰まりのようなものがあったのか。その停滞感を解消するきっかけのようなものを希求していたのでしょうか。
きっと違います。
で、その川沿いを歩いていると、なかなかの光景を目の当たりにすることに。
僕が出くわしたのは外国人観光客の大群。参勤交代並みの大行列です。
おそらく何かツアーの集団だったんでしょうね。
その行列は川沿いを歩き進めていて、ちょうど僕とすれ違うように進んでいました。
覚悟していたとはいえ、ここまでの勢力は想定外でさすがに圧倒されてしまいました。
しかもその行列以外にその道を歩いていたのは僕一人。
あまりのアウェー感にいたたまれない僕。
しかし一度進むと決めた道。
ここでやめては男が廃ると歩みを進めました。
そのときです。
その大行列を構成する先頭の観光客が僕の存在に気付き、満面の笑みを浮かべて僕に手を振り、何語か分からない言葉で挨拶をしてくれました。
驚きのあまり咄嗟には返答できないでいる僕。
そんな僕を待たずして、次はその後ろを歩く観光客がまたしても満点のスマイルで僕に挨拶を。
そこからはもうノンストップ。
ざっと100人は超えていただろう行列を成す観光客が次々に僕に手を振り挨拶をし始めました。
その様はまるで伝言ゲーム。
さも当たり前のように。ディズニーランドでミッキーに手を振るように。そこまでいいものではないけど。
前の方が唐突に挨拶をし始めたので、後ろの方は「一体何がいるんだ?」というような顔で前方を窺い始めます。
次第に僕は何かすごい人になってしまったのではないかと錯覚し始めます。
ミッキーではなくてもウォルトディズニーではあるのかもしれないと。
しかし、観光客たちの表情を見ていると、笑顔で挨拶をしてくれる人と、?が浮かんだままの顔で挨拶をしてくれる人がいて。
後半にいくにつれて後者の割合が増えていくのを見ているとなんとも言えない気持ちに。
絶対中盤辺りから、「誰やこいつ」と思いながら挨拶してる人がいるはず。
俺も自分が何者なんかわからんくなってきたわ。
そんな気持ちをぐっとこらえて僕はその観光客からの挨拶すべてに控えめな笑顔、そして手を振るなどして応えきりました。
そこにはそれなりの達成感さえあったような気がしてます。
こうしてハリウッドスターの来日出待ちのような儀式が終わりました。
なお、そこにいるすべての人間がそのスターが何者なのかわかっていませんでした。
以前の観光客エピソードでもそうだったけど、外国人観光客の方はどうしてそんなにも現地の中学生に興味津々なんでしょうね。
まああれだけ大勢の人に好意的な反応されるのは、悪い気はしませんがね。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしかしたらその頃の僕は多くの人から注目を浴びたいという欲望をどこか深いところに隠し持っていたのかもしれません。
それを神様が粋な計らいで満たしてくれたと。
だとしたら立ち直れません。恥ずかしすぎて。
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