見出し画像

「そうか、嬉しいのか!...『いのちの車窓から2』星野源...」心に浮かんできた言葉(032)

こんにちは「てると大吉」です。空気はこんなにもさっと入れ替るのだ。季節の移り変わりを肌で感じています。

さて、先日*『いのちの車窓から2』を読み、「食卓」というタイトルのエッセイが心にとまりました。

2021年の今年、結婚し家庭を持った。
同じ家で暮らし始め、妻が作ってくれた晩ご飯を食べていた時だ。
何だか、しばらく忘れていたあの感覚がブワッと溢れてきた。
動きたい。猛烈に動きたい。抑えろ。しかし抑えようと思えば思うほど、衝動は膨れあがり、貧乏ゆすりが激しくなり焦った。
これまでのことを伝えるべきか、隠すべきか。しかしこれからずっと一緒に暮らすのだから、一か八か、伝えてみるのもありなのではないか。
僕は箸を置いて妻に言った。
「あのさ」
「うん?」
「実は・・・子供の頃から、こうやってご飯食べてると、なんか動きたくなるんだよ」
「おお」
「えっと、なんていうか・・・立ち上がりたくなるっていうか」
「うーん。なんでかね?」
「・・・嬉しくてさ」
「あ、嬉しいんだ。いいね」
・・・あれ?
嬉しかったのか。  149頁~150頁

*『いのちの車窓から2』 著者 星野源 発行 株式会社KADOKAWA  2024.9.30

著者は、子供の頃から落ち着きがなく、人との距離が近くて、「動きたい」という謎の感情を抑えることに苦心していたそうです。それは食事の時にも現れ、我慢はストレスになっていたといいます。

そんな著者が結婚して、新しい食卓での一場面。
誰にも相談できなかったこと。「なんか動きたくなる」こと。「なんで?」と尋ねられることで、はじめて言語化してみる。そして著者は「嬉しい」という言葉に出会えたのですね。そうか嬉しいのかって。嬉しいから動きたくなるんだって。

このやりとりがなぜか心にとまりました。妻の返しのおかげなのだと思うのですが・・・。ひとつひとつのやりとりが素敵です。

同じことは僕たちにもあるのかもしれません。誰しもこれはいけないと思い込んで、抑えていることがあるのでは・・・。相手は誰であれ、素直になることは意外な喜びをつれてきてくれるのかもしれません。
そして、このエッセイ、結びも素敵です。僕にはお二人の笑顔が浮かんできます。

一緒に暮らす人がいて、その人が作った晩ご飯を食べることができて、凄く美味しくて、凄く嬉しかった。ずっと悪いことだと思って我慢してきたことは、悪いことじゃなかった。
「嬉しそう」
そう言って妻は笑った。  151頁~152頁

『いのちの車窓から2』同上

お二人が共演されたドラマが浮かんでくることも、いたしかたないですかね。晩ご飯は何だったのだろうなんて、無粋な想像はやめておきましょう。

今週も読んでいただきありがとうございます。どうぞ寒暖差にも気をつけて、健やかな一週間をお過ごしください。ー2024.10.21ー

いいなと思ったら応援しよう!