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アーロン家との交流


       その後、クリスマスでも彼らからディナーのお誘いがあった。僕らは折角のお誘いだったので和服で訪問することにした。僕はセント・ローレンスカレッジにも着て行った紺色の和服で由美は黄色柄の浴衣だった。この時期に浴衣は寒いけど、由美の着物は浴衣しか持参しなかったので取り敢えずこれを着て行こうということになった。浴衣と言ってもきちんとした銀座の和服屋さんで春先に購入したもので、一見立派な和服に見えた。僕らが到着すると、アーロン、ジェニー、ジェイク、それにジェイクの妹で4歳のリリーが笑顔と驚きの表情で僕らを迎え入れてくれた。和服を目の当たりにするのは初めてらしく、

「Yumi!You are gorgeous!(由美、とっても素敵!)」と、ジェニーが目を丸くして言った。

ジェニーもアーロンも正装だった。アーロンは白のドレスシャツにドットの入ったグリーンのネクタイをして普段より男前だったが、特にジェニーの肩の出た黒のオフショルダーパーティードレスは素敵だった。この日はアーロンからだけではなく、ジェニーやジェイクから日本文化について質問攻めにあった。

「日本人はいつから和服を着ないようになったんですか?」

「神社って武道と関係あるんですか?」

「日本の君主はどんな人なんですか?」など、日本の歴史や文化を知らないとスムーズに答えられないことも聞かれて、英語教員だった僕は再度その不甲斐なさを実感してしまった。でも、それ以外の話題で楽しく歓談することが出来たり、ジェイクが自分の部屋とジェイクとリリーの寝室も案内してくれたりと、楽しいクリスマスをアーロン家で楽しめて、僕らはとても嬉しかった。最後には皆で仲良く記念撮影もした。

     その後も僕と由美は、日本の実家から届いた即席の味噌汁を飲んでもらおうと思って再度アーロン家を訪問した。この時は即席赤だし味噌汁だった。アーロン、ジェニー、ジェイクは「Yummy!(美味しい!)」と言ってくれたが、妹のジェニーだけ微妙な顔をしていた。

    また、僕はアーロンからビリヤードの誘いをもらって、アーロン家近くのビリヤード場でアーロンと対戦した。アーロンのビリヤードは自分のキュー(ビリヤードの棒)を持っているくらいで、プロ級に上手で僕は5戦5敗だった。それでも対戦中とても盛り上がって楽しかった。

   アーロン家との交流は、こんな状況の中で僕らの気分を温かくしてくれて本当に有難かった。

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