よく行く飲み屋のカウンターにはたくさんのステッカーが貼ってある。 日本酒を一合頼みながら目の前の小さなかき氷のシールを眺める。しばらくするとパイナップル頭の店長が日本酒の瓶と半合入るグラスを持参してくる。 「一合でお願いしたんですが」 ああ、すみません。と枡を持参してくる。私の好きな雄町という酒米で作った酒だ。 酒を口にしながら、私は目の前のかき氷のシールを眺める。 何かを悩んだ時、いつも何かに見入りながら考えこむことにしている私。目線を逸らさない方が、入ってくる情
ある日からアサヒは昇らなくなった。 薄暗い洞窟で気味の悪い目覚め方をすると、木彫りの玩具がいなないていた。深くて長い洞窟はどこへも行けず、逆に言えばどこに行かなくても済む。枝先みたいな別れ道なんてどこまで行ってもないのに、無数の幽霊みたいな架空のイメージが跋扈している。 一ぺん、死んでみろ。生き死になんて尊い話題に口を挟んだのがまずかった。怜悧な神様がきっとこの世界を構築したのだから、私にとってアサヒが昇らない、というのは罰として受け取るのも恐れ多いくらいだ。まるっきり正
「お金を何かに使いたい。一体何に使おうか」漠然とこう思ったのは、仕事の成功に起因した。 大手の車輌販売会社に勤務して4年。ずっとBtoB向きの営業としてやってきたが、いわゆるコンペティションにおいて、今週だけで3社の契約を獲得した。だからパーっと騒いできちんと一段落つけようと思ったのだ。迷っている間に日曜日の夜になる。そして、月曜日は有給を申請してある。 さて、しかし何に使うかは困ったところだ。頻繁に飲み屋には行くから何にも変わらないし、風俗など関わりたくもなく、その中央値と
だいぶ以前のことになってしまうが、かつて私が子供たちと暮らして居た頃のこと。我が家では猫を飼うかどうかの議論になったことがあった。とどのつまり飼わないという結論に行き着いたのだが、その代わり、カブトムシを飼育した。つがいのカブトムシで、近所の大型スーパーマーケットでいくらか安値で売られていたものだ。 カブトムシを飼育してしまえば猫は飼えなくなる。それでもカブトムシを飼うか、
何か読む方の為になる記事をば書けたらと思い思慮を巡らし半刻、お酒の勉強方法をとなるに至りましてございます。というわけで今回はまじめに、ちょっと失敗談をあげながらお酒のお話。 ①純米酒、純米吟醸酒、吟醸酒、純米大吟醸酒、大吟醸酒の違いを説明できますか? ②酒米の特徴が判別できますか ③辛口、甘口はどのようなお酒に多い傾向があるのでしょうか 選択肢のうち、2番は省きます、すみません。なぜなら2番はちょっと難しく、1と3はとても簡単に説明できるからです。 純米酒、純米吟醸
この度は掲題の件についての雑記になります。 最近とにかく書きたい欲が収まらず。雑記にて消化させて頂く運びとなりました。 ご査収のほどよろしくお願いします。 さて、好きなマンガの言葉にこのようなものがあります。「神は決して人間の願いごとなど叶えない。」これは、死別した人間を希求する人に向けられた言葉ですが、そのような「自身で叶えられないこと」これをどう解決するか。それが信仰というもののテーマとして長らくあったのではないかと、私は思うわけでありますが。 その回答として宮本武蔵は
起 ☆賽の河原 ――親より先に亡くなった小児が供養のため石を積み上げている冥土にある河原。 賽の河原と呼ばれる三途の川の岸辺。そこでただ水切りで遊ぶような丸っこい石を積み上げるだけの日々。私の他に、地獄谷みたいなこの場所で、みんなはそれぞれ石を必死に積み上げている。しかし、いくらか積みあがってくると鬼たちはやって来ては取り崩していく。 それでも、みんながみんな泣くことももう忘れている。辛いのは確かだが、石を積み上げる、そのこと以外に私たちにできることはないのだ。