浸り


 よく行く飲み屋のカウンターにはたくさんのステッカーが貼ってある。
 日本酒を一合頼みながら目の前の小さなかき氷のシールを眺める。しばらくするとパイナップル頭の店長が日本酒の瓶と半合入るグラスを持参してくる。
「一合でお願いしたんですが」
 ああ、すみません。と枡を持参してくる。私の好きな雄町という酒米で作った酒だ。
 酒を口にしながら、私は目の前のかき氷のシールを眺める。
 何かを悩んだ時、いつも何かに見入りながら考えこむことにしている私。目線を逸らさない方が、入ってくる情報が一定で考えが安定する気がするのだ。
 好きな酒、これからの仕事、キャリア、努力と結果、それから昔の恥や、出会った人間。
 ーー小さい頃、公園に家族で行くと、そこにはかき氷屋が停車していた。そこで食べたいと子供共で騒いで、買ってもらったかき氷。
 その氷は私を形作っているのか。氷のように構成要素となり得ないもの、それこそが小さい頃は大きなウェートを占めていた。

 これから、いろいろなことがあるかも知れない。しかし、血肉となることが、私の今に準拠するのだろうか

 やはり、雄町は酸味を感じた。

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