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広島お好み焼き屋【皐月】の看板娘のリムは実は竜の姫巫女様でした! 第4話 リムのお家は、広島お好み焼き【皐月】(3)

#創作大賞2023
#お仕事小説部門

 第4話 リムのお家は、広島お好み焼き【皐月】(3)

「あらあら、みなさん、そんなに鼻息荒くどうかしたのかな~?」

 そう、全国一位の店舗数を誇るお好み焼き県こと、広島県を代表する郷土料理──。

 《《広島お好み焼き》》!

 今年の春のG 7サミットでも大変に有名になった平和都市広島市……。

 世界初の原子爆弾投下後の、広島の焼け野原の復興の礎……。

 シンボルの一つでもある広島の味! 郷土料理!

 そう、GHQから手に入れた【メリケン粉】、【小麦粉】をね。

 何とかうまく活用できないか? と。

 安芸は広島の主婦達、ママさん達が焼け野原の広島の街の中で、試行錯誤の上に。

 野菜のくずを使用した簡単に作れ、食べられる栄養価の高い食べ物はないかと思案を重ねる。

 特に戦後日本は敗戦国であり。

 経済破綻をした国内では。

 物資不足の上に大都市は皆、アメリカ軍のB29の無差別空襲により焼け野原状態……。

 そして広島お好み焼きが誕生した広島市の街は。

 世界で最初の核兵器──。原子爆弾の投下により。

 やはり広島市の大半は焼け野原で、尚更何も無い。

 品薄な状態……。

 まあ、そんな状態の中でも広島のママ達は色々と知恵を絞り。

 簡単で作れる栄養価の高い物はないかと思案。

 錯誤して考え出された物が。

 GHQから手に入れた【メリケン粉】を水に溶き。

 熱く熱した鉄板や鍋などに、薄くクレープ状に敷いて焼き。

 安く手に入れた野菜のクズなどを載せて焼き食べた物。

 そして焼け野原の闇市などで、焼きながら販売をした物が。

【広島お好み焼き】の最初であり。

 ルーツなのだと言った逸話がね、あると。

 リムはパパから教えてもらったの。

 でっ、家のパパも、自身で《《広島お好み焼き》》のお店を経営していた御婆さまから、幼い頃に教えてもらったらしいの。

 でも、まあ、もしもリムの説明が少し違うようならごめんなさいね、と。

 リムがみなさんへの謝罪と。

 これまで【広島お好み焼き】の簡易的なルーツと説明をし終えたところで。

 リムが話しをまた元に戻すけれど。

 そんなお好み焼き県の激戦地でね。

 超がつくほどの、元外国国籍の美人のママが女将をする《《広島のお好み焼き屋》》で。

 広島の地方番組だけれど。

 テレビでも紹介され。

 そのテレビを観ていた広島の男性達を虜にした。

 リムの母上が、「ふっ、ふふふっ」と妖艶に微笑みながら。

 常連のお客さまへと。

 それがいくら姉上目当て……。

 漆黒の竜魔王妃レビィアさま命の親衛隊? のお兄さん、おじさん達であろうと。

 母上の大人の色香……。

 天界の神々さえ、北欧神のフレイヤさまか、家の母上さまか、どちらが妖艶、色香が高いか、甲乙つけがたいと唸らせた竜の太后陛下さまだから。

 常連のお客さま達も、女神の微笑みを生で見ればコロリ。

「いいえ、エリカさん何でもありません」

「女将大丈夫です」

「我らはエリカ様の忠義者であり。僕ですから」と。

『へっ、へへへっ。ワン! 僕はお利巧さまでしょう?』と言った感じでね、チンチン──。

 常連のお客さま達は、忠犬ハチ公さまのように大人しくなるから。

 その後母上は、自身の瞳を閉じ、両手を胸元で握り絞め、魔法の呪文──詠唱を呟き始める。

 だから大変に大人しく、良い子なったはずの常連のお客さま達、各自各々が。

 自身の両眼、瞼を大きく開け──。

「な、何?」

「何だ? 何だ?」

「何が起きるんだ?」

「何が起きるの、エリカさん?」

 常連のお客さま達は母上の、何を呟いているのかわからない。

 この世界、日本の言葉ではない桃源郷の。

 それも太古の言葉を使用しながら、魔法の詠唱をブツブツと呟くものだから。

 常連のお客さま達は母上の様子を窺いながら困惑……。

 ワッとまた騒めき始める。

 う~ん、でもね?

 常連のお客さま達の喧騒は、そんなに長くは続かない。

 だってリムの母上が魔法の呪文の詠唱を唱え終え。

 自身の閉じている瞼を開け──。

 金色の瞳を輝かせると。

「ん? あれ、俺? 今まで何をしていたんだってけ?」と。

 常連のお客さま達の中からこんな台詞が漏れると。

「う~ん、儂も今の今まで自身がしていたことが思い出せない」

「あっ! 俺もだ!」

「儂も、儂も」

「僕も先ほどまで何をしていたのかが、思い出せないし。何でエリカさんの顔を僕はジィーと見詰め、眺めているんだろう?」

 常連のお客さま達、各自各々が困惑、動揺をしながら台詞を次から、次へと漏らしながら首を傾げ始める。

「みなさん、お好み焼きを食べていたんじゃないの?」

 そんな様子の常連のお客さま達へとリムはね、優しく微笑みかけながら声をかけてあげるの。

「……ん? ああ、そうか、そうだよね。俺はお好み焼きを食べていたんだよね」

「あっ! 儂もだぁ!」

「あっ! 俺も!」

「僕の目の前にも食べかけのお好み焼きと。飲み終えた生ビールのジョッキが置いてあるから、お好み焼きを食べていたんだね……と、言うことは? 僕がエリカさんのことを見詰めていたのは生ビールのお代わりをしようと思っていたに違いない……」と。

 常連のお客さまの一人が独り言のように呟き、終えるとね。

「エリカさん、生ビールのお代わりお願い!」

「あっ! 俺も生ビールのお代わりを女将お願い」

「あっ! 儂も女将たのむよ」

「俺もエリカさん、生ビールのお代わりお願い」と。

 まあ、こんな感じと言うか?

 裏ワザと言うか?

 余りよくない方法なのだけれど。

 リム達竜の巫女の主様は、いくら竜神さまだと言っても、まだお子さまだから、直ぐに桁が外れ、ムキになり。

『ガオー! ガオー!』と。

 ゴ〇ラみたいに吠え、咆哮を放つから。

 その処理をリム達、竜の巫女達が聞き分けのない主さまのサポートをこんな感じ……。

 そう我が家の都合の悪いところだけ、お客さま達の記憶を消してしまうの。

 まあ、リムや姉上、伯母上さま達がおこなう事が多いのだけれど。

 リムの母上さまがいる時ならば、太后陛下さまにおねがいをするのが一番いいの。

 だってリムの母上は豊穣と祝福、美を司る、竜の姫巫女さまだけれど。

 特に母上のお得意な分野は、他人の記憶の抹消と操作だから、先ず間違えはないしに上手く。

 この場の騒めき、喧騒を鎮め、鎮静化してくれる。

 だからリムも母上に安心して嘆願ができる。

 でもね、リムや姉上、伯母上さま達がお客さま達の記憶を改善すると偶にね。

『僕は誰? 誰なんでしょう?』

『あなた達は、一体誰ですか?』

『何で未成年者の僕が昼間でもないのに。夜のお好み焼きの店にいるんだろう?』

『こんな場所にお好み焼き屋なんてあったかな?』

『バブ、バブ、バブ。アァ~』と。

 お客さま達の記憶が完全に消滅して、後で戻すのに大変な手間がかかることがあるの。

 いくらリム達が竜の姫巫女……竜の神さまだと言っても完全じゃないのよ。

 世界中に散らばる神さま達もね。

 よく失敗をして、世界中の至るところで厄災を起こしているのは。

 そう言うことなの。

 だから今回は母上のお陰だと思いつつ。

 JKの少女の癖に、扉の方へとモンローウォークで向かっていた姉上へと視線を変え──。

 お互いが目と目が合えばニコリだよ。

 でっ、その後は姉妹で仲良く。

『ホッ!』と胸を撫でおろし、安堵すれば。

 パパの方へと近づき、家の我儘っ子のお尻をポン! と軽く叩き。

 未だにプイ! プイ! と。

 小さな子供のように不貞腐れ、拗ねているパパへとリムは。

『パパ~、少しは反省しなさいよね~。パパ、わかった~?』

 リムは自身の眼を細め、無言でパパのことを叱るの。

 でもね、我が家の主さま、竜神さまはね。

 本当にお子さまみたいだからプイ! 余所見をして───。

 リムと目を合わせないように振る舞うの。

 だからリムは、『いぃ~だ! パパの大バカもの!』と怒声を吐いてやりたい衝動に駆られるのだけれど。

 いつもね、少し間が開けば。

「リム、ごめんな」、

「エリカ、いつもすまない」

「レビィアにもいつも迷惑をかけるからごめんよ」と。

 リム達竜の姫巫女さまの主さまは。

 ちゃんとリム達、竜の姫巫女達へと謝罪をしてくれるの。

 だからリムと母上、姉上の三人は、お互いが目を合わせると。

「クスッ」と微笑み。

「うぅん、パパいいよ」と。

 リムが呟くと。

「いいえ、いいえ。旦那様。別に構いませんよ。私は二階のキッチンへと上がり。夕食の下準備だけしてきますね」と。

 姉上が再度パパへと微笑み、扉を開け──。

 お店の厨房を後にし、二階へと階段を使用しつつ向かい。

 姉上の姿がなくなると。

 リムの母上が「陛下~」と淡く、甘い声音でパパを呼ぶと。

「……ん? 何、エリカ?」と。

 今まで姉上の華奢な背を、自身の瞳で追っていたパパが。

 母上へと顔の向きと、視線を変えると。

〈ブチュ~〉だ。

 ブチュー! と母上がパパの唇へと。

 自身の唇を合わせるから。

「おぉおおおっ!」

「すげぇえええっ!」

「うひょぉおおおっ!」

「いきなりマスターと女将のキスシーンが始まったぁあああっ!」と。

 常連のお客さま達の指定席となりつつある。

 大きな作業鉄板のカウンター席から。

『うひゃ~!』、

『うひょう~!』と歓喜が上がるから。

「ちょっと母上~。パパに何をしているの~」と。

 リムから母上……。

 太后陛下さまへの異議申したてがあがる。

「別にいいじゃない。リム~。わらわと陛下は《《日本の国籍》》上でも夫婦なのだから。別に問題はないでしょう」、

「ふっ、ふふふっ」と。

 我が国の太后陛下さまは、自身の眼を細め、妖艶に薄ら笑いを浮かべながらリムへと。

 自分は貴女と違って、日本国の国籍上でもパパの妃なのだから。

 他人の目があろうとも容赦なくキスができるのよ。

 でも、貴女は、日本の国籍上では義理の娘養女だから出来ないでしょう。

『ふっ、ふふふっ』とあてつけがましく微笑んでくるから。

(キィー! 悔しい! 悔しいな! マジで悔しい!)と。

 リムがお猿さんのように真っ赤な顔で地団駄を踏み!

『キッ、キキ!』となっていると。

「リム様」

「姫様」

「陛下」

「太后様」

「大変の仲の良いところ申し訳御座いません」と。

 大変に悲しく、切ない声音で。

 リムやパパ、母上を呼ぶ台詞が。

 リム達の耳へと聞こえるから。

 リム達は声の主へと視線を変えると。

 母上の政務を助け、手伝ってくれている高級官僚のおじさま達が涙目で呼ぶから。

「あっ!」

「えっ!」

「あら」と。

 リム達三人は仲良く驚嘆を漏らす。

「悪い、皆。俺が大きな声を出して。本当に悪かったよ。あっ、はははっ」と。

 パパが笑い誤魔化しながらおじさま達へと謝罪を入れれば。

「リム、今直ぐ彼らに痛いの、痛いの、飛んでけぇをしてあげなさい」と。

 母上がリムへと「ふっ、ふふふ」と笑いながら嘆願をしてくる。

 高級官僚のおじさま達は、人間達よりも耳が大変によいから、パパの一喝を聞き、耳の中が破損し。

 自身の耳が痛くて仕方がないようだから、涙目になっているのに。

 この二人……。

 パパと母上は笑い誤魔化しながらリムへと嘆願をしてくるから。

 もうこの二人だけは、本当に似た者同士なのだからと思いつつ。

「はぁ、わかりました」と。

 リムはパパと母上の二人へと大きな嘆息を漏らしつつ。了解しましたと告げると。

「おじさま達、いくわね」と告げ。

「痛いの、痛いの。飛んでけ~♪」と。

 魔法の詠唱をリズムよく。

 この後何度も奏で歌えばね。

「あっ!」

「いっ!」

「うっ!」

「おっ!」と。

 おじさま達は、自身の両眼を大きく開けながら。

 各自各々が驚嘆を漏らせば。

「痛いのが、本当に飛んだ」

「飛びました」

「リム姫様ありがとう」

「本当に感謝です」

 リムが高級官僚のおじさま達へと施した治癒の魔法が利いた。

 だから痛みが取れた。

 だから自分達は感謝感激しましたと。

 リムにお礼を告げてくれた。

 でも、本当に悪いのは我が家の大黒柱の竜神さまだから。

「家のパパや母上……。伯母上達がいつも迷惑ばかりかけてごめんね」と。

 高級官僚のおじさま達へと謝罪を入れ。

「今後も懲りずに頑張って、家の一族と民のために尽くし、奉公してね。よろしくおねがいします」

 高級官僚のおじさま達を労いながら嘆願をする。

「リムさま。なんともありがたいお言葉を我等に……」

「我等のような者達に、そんな勿体ないお言葉を……」

「本当に有難う御座います。リム姫さま……」

「我等は、これから先も竜神様の忠義と。民のために尽くす所存で御座います。だからリム姫様、頭を上げてくだされ。お願いします……」

 高級官僚のおじさま達は、頭を下げ嘆願をするリムへと快く。

 今後も我が竜神の一族をサポートしてくれると告げてくれた。

 だからリムはパパのお妃さまらしく。

 自身の胸を撫でおろし、安堵するのだった。

 ◇◇◇

(カクヨム)
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