ハラスメントに「言い返す」力〜専門家の本で検証してみた〜その3
前回は3つのハラスメントの実例を挙げたので、今回はドナハラ、人格否定とメモリーハック、ネガティビティバイアスや集団圧力について書きたいと思います。
ではさっそく、新人パートのハルさんに登場してもらいましょう。
ケースその2〜怒鳴るハラスメント〜
レジ打ちをしていたハルさん。
お客さんが持ってきた商品が破損していたので「少々お待ちください」、そう言って新しい商品を取りに行こうとしました。
すると突然、隣でレジを打っていた先輩パートのカリタさんが声を張り上げました。
「ダメ!絶対にレジを離れないで!」
急に大声を出されたのでハルさんもお客さんもびっくり。
どういうわけか先輩カリタさんはことあるごとに大声で注意します。
レジカゴが山積みになっているのを見つけては大声。
売り場で品出しをしているとスピードが遅いといっては大声。
周りにいるお客さんが驚いて振り返ってもお構いなしです。
その度に、「はい」「すいません」と言いながら指示に従っていたのですが、何をやっても強い口調で文句を言われるので、だんだん顔を合わせるのがイヤになってきました……
怒った態度で相手を威嚇する「怒鳴るハラスメント」、こういう先輩がいたらどうすればいいのでしょう。
専門家の意見を参考にすると、八つ当たりだと思って気にしないのが一番。後は、褒める、逆に「教えてください」と聞きにいく。悪意はないので、そういう人と割り切るのが得策かもしれません。
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ケースその3〜人格否定、メモリーハック、集団圧力、ネガティビティバイアス
社員のコトコさんと揉めてからしばらくして、再び事件が起こりました。
「3個買ったはずの商品が、家に帰ったら2個しかなかった」とお客さんから問い合わせの電話があり、レジを打ったハルさんが呼ばれました。
ハル
「いや、レジを通し忘れるってことはないと思うんですけど……カゴの中には何も残ってなかったし。なぜだろう、おかしいなあ」
社員コトコ
「そこはまず「すいません」じゃないんですか?」
ハル
「え?」
社員コトコ
「本当に反省しませんよね。挨拶もしないし」
ハル
「挨拶はしてるはずですけど……」
社員コトコ
「でも、実際に、挨拶がないと言ってる人たちがいるんです。そういう態度だから、ハルさんには安心して仕事を任せられない、お客さんからクレームがくるってみんな言ってますよ」
ハル
「(驚いた顔で)みんな?みんなって誰ですか?」
社員コトコ
「それは言えませんけど。私は色々話を聞いてるんで」
ハル
「私と一緒に仕事をしているのはフジミさんとカリタさんしかいませんよね。カリタさんに嫌われてるのはわかるけど、フジミさんにそんなことを言われてるとは……」
社員コトコ
「フジミさんは優しいからあなたのことを庇ってるんですよ。とにかくお客さんがお店に来られるので一緒に謝ってください!」
ハル
「あの、その前にビデオで確認してもらってもいいですか?お客さんの勘違いってこともあるし」
社員コトコ
「どうしてすぐ人のせいにするんですか?自分が悪いとは思わないんですか?」
ハル
「本当に私のミスなら謝りますけど。その前に事実確認をお願いするのは間違ってますか?なんでも自分が悪いと謝ってたらメンタルがもたないので、すいませんけどお願いします」
社員コトコ
「それなら店長に言ってください」
その後、防犯ビデオから、お客さんのカゴには最初から2個しか入ってなかったことが確認され、お客さんの勘違いだったことがわかりました。
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ということで検証していきたいと思います。
今回のことからわかるように、新人ハルさんもなかなかに図太いです。それなりに揉まれてきているので、一筋縄ではいきません。
その結果、社員コトコさんも必死に攻撃を仕掛けています。
まずは「反省しない」というセリフですが、これは人格(性格)に対する攻撃になります。ハルさんにも頑固なところがあるので、ある程度は言われても仕方がないでしょう。
次に「挨拶がない」というのは、双方の記憶が矛盾しています。これがメモリーハックです。
自分は「挨拶した」と記憶していても相手は「してない」という、ここに記憶の改ざんがあります。過去を証明しようにも証拠がないので、証明できない場合は引き下がるしかありません。
そして「仕事を任せられない、お客さんからクレームがくる」というフレーズ。ネガティブな結果を予測して圧力をかけているので、これは明らかにネガティビティバイアスです。
悪いことが起こる方に意識をフォーカスさせれば心理的にも不安になります。
そして「みんな言ってますよ」と集団圧力をかけ、孤立している感じを強調し、さらに言い返せない心理状態に追いやっています。
ここまでやられれば、大抵の人は気力も無くなり何も言い返せなくなるでしょう。
それなのに落ち込むどころか「みんなって誰ですか?」と言い返してしまったハルさん。実は、思わず怒りが湧いてきたのです。
それはフジミさんに対する憤りです。さも味方のように励ましながら、陰では悪口を言っていたことを知り、不信感が芽生えました。「私を礼儀知らずの非常識人間のように言っておいて、優しいとかありえないっ」と憤慨。
そこから一気に反撃に出ています。
ミスしたと決めつけられたことに対し、「ビデオで確認してください」とお願いしたことはハルさん自身の経験から出たことです。以前働いていた職場では、カスハラからスタッフを守るために、まずはビデオで事実確認をすることになっていました。
言い方は今ひとつですが、相手を非難せず「自分のメンタル」を理由にしている点は💮。相手の行動を責めず、「私はこういう気持ちだ、こう感じる」という自分の気持ちを理由にしています。
とにかく、身を守るためには何よりも証拠です。販売の場合はスマホを持ち込めないことも多いので、ボイスレコーダーを忍ばせておくのもありかも。相手が容赦ない場合は、それなりの対策が必要だと思います。
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模範的な回答例
ここからは、相手を刺激せず穏便に言い返す理想的な答えを作成していきたいと思います。
本を参考にして、とにかく最初は謝罪。それから要求、ご迷惑をおかけしますという気持ちを込めて。
「3個買ったはずの商品が、家に帰ったら2個しかなかった」とお客さんから電話があった。レジを打ったのは自分。この場合、上司に対するは返答は、
こんな感じでしょうか。
咄嗟にこんなことが言えるかどうかはわかりませんが、かなりの余裕が必要なのは確かです。
とにかく冷静に、動揺しない。これがポイントかもしれません。
次回は、素直に謝罪の言葉が出るようになる秘訣についてです。
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