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免税事業者がインボイス制度開始までに考えておくこと/今知っておきたいインボイス制度③

この記事は三重県名張市の産業支援機関でセミナーをする内容を出しているのですが、いろいろと反響をいただいた結果、セミナー自体誰でも参加できるようになりました。

本来は名張市の事業者向けのセミナーですが、オンライン開催となったことからなんと全国どこからでも参加OK。しかも無料。みんな聞いてくれたらいいねん。
知らぬ間にかけあっていた紹介者の鷲尾さんと、担当者の峰さん素敵。

9月22日10時-12時ですが、できれば申し込みは今週中にしてあげてください。

タイミングが合わない方は、またうちでもセミナーしようかなと思うのでまたお声がけください!

さて前回は、ざっくりとインボイスを理解していただく話でした。

まだ読んでいない方はこちらへ。今回はこの続きで、この辺りを理解していないと難しいかもしれないので、ご確認いただければ。

免税事業者とインボイス制度

インボイス制度=「仕入税額控除の要件が変わる」と前回の記事で書きましたが、それによっていろんな影響があります。免税事業者がその一つ。

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個人事業主やフリーランス、パラレルワーカーなどで、年間の売上が1,000万円ない場合などは、消費税を請求していても納税を免除されている免税事業者は数多くいます。


ちなみに2015年時点で、免税事業者は513万者と言われており、それに対して課税事業者が310万者ということですね。個人を中心に免税事業者めちゃくちゃ多いです。

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平成28年度与党税制改正大綱概要資料 参考資料②-2(軽減税率制度関係参考資料)

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その免税事業者は、インボイス発行事業者に登録できず、インボイスが発行できません。


どうして免税事業者がインボイス発行事業者になれないのか

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いろいろな考えがあり、ここではその議論をしませんが、どういうことかの説明はしておきます。

免税事業者は消費税を預かっても納税していないので、理論上は消費者が払った消費税が部分的に税務署に納税されていないことになります。

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なかなか消費税申告という作業は小規模な事業者には簡単なものではなく、特に小規模な事業者の事務負担は大きい。だから免税点制度というものが設けられています。

これは日本だけではなく諸外国にも同じような制度は存在します。でも消費者からすると不満ですよね。

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インボイス制度が始まると、免税事業者はインボイスが発行できないため、仕入をする側の企業は免税事業者との取引を嫌がるようになることが予想されます。免税事業者というだけで取引から排除されかねない、という問題ですね。

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そうなると現状、個人で創業した場合などは消費税の課税対象となる売上が1000万円を超える翌々年から消費税の納付をするのが一般的であったものが、

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インボイスを発行しないと企業との仕事がしにくくなるため、売上が少なくても1年目から消費税申告をする=課税事業者を選択する事業者が多くを占めるようになるかもしれません。

インボイス発行事業者になるかどうかは任意とはいえ、その事業者がインボイス発行事業者かどうかは国税庁のHPなどで公表されるので、周知の事実となります。


免税事業者が課税事業者となり、インボイス発行事業者に登録するには

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今まで免税事業者が課税事業者を選択する場合、開業1年目など特殊な場合を除き、その年度が始まる前に選択届出書を提出する必要がありましたが、今回は膨大な数の事業者が影響を受けるため、経過措置があります。

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免税事業者が、令和5年度10月1日のインボイス制度開始からインボイス発行事業者になるために登録申請をすれば、自動的に令和5年度10月1日から課税事業者となります。選択届出書を別途提出する必要はありませんし、令和5年度は3か月分の消費税申告だけになります。

あえて令和5年度が始まる前に選択届出書を出さない方がよい、というケースが多いかもしれませんね。

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じゃあ免税事業者は取引してもらえないかもしれないから、インボイス発行事業者に登録申請した方がいいか。それは一概にはいえません。

事業の相手がインボイスを必要としないような消費者ばかりなら、インボイスの交付が必要なく、免税事業者のままでも問題ないことが考えられます。

当然ケースによりますが、パッと思いつくのは子供の習い事教室や理美容室、医療における自由診療などでしょうか。そのあたり、消費者が中心の事業であるならば、お客さんがインボイスを必要とするかどうかをもう一度検討する必要はありそうです。


簡易課税制度の選択は令和5年12月31日までに、別途選択届出書の提出を

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今回、かなり用語が難しかったりしたので、大分疲れているかもしれませんが、簡易課税制度に関する話もとても重要な話。

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消費税は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納税する仕組みだということを前回までに説明しました。

その消費税を差し引くことを仕入税額控除といい、インボイス制度はこの部分の改正になります。

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この差し引く消費税。10%の消費税があったり、8%軽減税率の対象があったり、消費税が課されないものがあったり、正確に計算しようと思うと区分がとても大変です。

特に軽減税率制度が始まってからはとてもとても大変。

そこで、課税売上高が5000万円以下の場合には、課税売上高から一定割合を仕入とみなして控除する、という簡易課税制度を選択できるようになっています。支払った消費税の集計や取引先からインボイスをもらって保存するといったことも不要になります。

ただし、これは選択によっては消費税に損得が生じる制度になります。一度税理士に相談するのがよいかもしれませんね。

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この簡易課税制度の選択は、通常の場合適用しようとする事業年度が始まる前に出さないといけません

令和5年分に関しては、その年の12月31日までの後出しでいいよ、というのが今回の特例です。

確定申告のときまでではないので、そこは注意ですね。

おわりに

今回かなりボリュームがあり、最後まで読むのも大変だったかと思いますが、インボイス制度の問題点といえばこの免税事業者の話から派生するものがほとんどです。

なので、これを理解しておくと、制度の全体像も分かりやすくなると思います!

【今知っておきたいインボイス制度①~⑥】
インボイスを知るその前に。消費税の基本的な仕組み
ざっくり知りたい。インボイス概要
③免税事業者がインボイス制度開始までに考えておくこと ※今ココ!
何をどう書く?インボイスの記載事項
売手側から見るインボイス制度理解のポイント
買手側から見るインボイス制度理解のポイント

※令和3年9月現在の法令・通知情報であり、「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-(パンフレット)(令和3年7月)」の内容に基づき一般にわかりやすく解説したものです。
正確な情報はこちらをご参照ください。



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