#08 フォントのはなし「Helvetica」編
こんにちは。グラフィックデザイナーの安村シンです。
今回は、欧文フォントの王様「Helvetica」(ヘルベチカ)を紹介します。
とてもベーシックで有名なフォントです。
王道を知り、そこから離れて行くのもまた一興。
ぜひとも欧文フォントの王道を、いちど通ってみましょう。
1.「ヘルベチカ」は、世界のスタンダード
ヘルベチカは、1957年生まれのフォントです。
現在、世界で最も使用される書体の一つと言われています。
特徴は、といいますと。
どちらかというと「特徴がないことが特徴」と言えそうです。
(↑ヘルベチカです。The quick〜はaからzまで全て使えるベンリな例文。)
このフォントは「サンセリフ体」の標準的な形をしていて、
クセが強すぎるわけでもなければ、無個性すぎるわけでもない。
だけど、文字を並べるとカチッと決まる、そんな王道の貫禄があります。
まるで、ゲーム界で言うところの、スーパーマリオみたいだと私は感じています。
知らない人はいないし、現代にも影響を与え続けていて、かつ今でも活躍している。その世界のスタンダードといえる存在です。
2.Apple社にも愛用される「Helvetica Neue」
Helveticaは、Macのシステムフォントに採用されたこともあります。(Finderでも使われる書体のこと)
有名なエピソードですが、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズがMacの元祖といえるPC「マッキントッシュ」を制作しているとき、大学時代のカリグラフィの授業を思い出して美しいタイポグラフィを内蔵したという逸話があります。
そんなタイポグラフィ(文字の扱い方)にこだわりのあるMacで採用されたのが、ヘルベチカの派生フォント「Helvetica Neue(ヘルベチカ ノイエ)」です。
(↑さあ、違いがわかるでしょうか・・・)
かなりよく見てみないと分からないレベルです。
「c」の形状が、ややふくらみを持っているのが「Helvetica Neue」。
また、Jの形状もカーブが穏やかになっています。
(↑もしこれが見分けられたら、もはやフォントの達人です)
このヘルベチカ ノイエは、Macには標準搭載されているため入手ハードルも低いため、それも多くのファンを生む要因になっているに違いありません。
個人的には、細長いコンデンスドがお気に入りです。
3.派生フォント、SF(San Francisco)
Macのシステムフォントに選ばれた「Helvetica Neue」は、2015年のiOS9リリースのタイミングで「SF(San Francisco)」というフォントに変更になりました。
(Helvetica Neueと、印象はかなり近いです。)
こちらは、その前のフォント「Helvetica Neue」の弱点である「小さいサイズで表示した時に見辛い」ことを改善したフォントです。
それまでよりずっと小さな画面となった、アップルウォッチのディスプレイに最適化する目的で生まれたフォントのようです。
今もしMacを使っている方がいらっしゃいましたら、画面左上を見てみてください。「Safari」や「FireFox」「Google Chrome」といった英語に「San Francisco」が使われているはずです。
4.身近なところにヘルベチカ
ヘルベチカは、身近なところでも使用例が絶えません。
きっと誰もが知っているような有名な企業、ブランドでも使われています。
「Helvetica」を採用しているものを、
手元のフォントでサッとトレースしてみました。
(↑あれもこれも、そのようです。)
また、じぶんの手元にもHelveticaを使った例が続々と出てきたので、ここに載せておきます。
(↑Rollbahnはお気に入りのノートです。PANTONEは「Helvetica Neue」を使用しているとの噂)
5.書籍化もしているフォント
身の回りにまで広がるヘルベチカ人気。
それだけにおさまらず、なんと書籍化までしているという情報もゲットしました。
いざ探してみると、たしかに。
ど真ん中な書籍がありました。
おそらく作例集かな?と思われます。
書店では滅多に見かけませんが、いつか機会があれば手にとってみたい一冊です。
6.まさかの映画化
なんと、ヘルベチカは映画にもなっているようです。
(嘘みたいな話ですが、今日はエイプリルフールではありません。)
こちらはどうやらドキュメンタリー形式の映画で、デザイナーやアーティストを始め、カルチャー誌編集長からファッションリーダーまで、様々な人のインタビューが満載とのうわさです。
よもや、愛が深すぎて映画まで出来てしまうとは。
まことに恐ろしい、フォントのはなしです。
7.まさかまさかの漫画化も
これまた、まさかの展開です。
ヘルベチカはなんと漫画化もしています。
タイトルもそのまま、「となりのヘルベチカ」です。
(まさに、そのまんまですね。)
この本は、デザイン知識のない主人公がフォントの世界に迷い込み、擬人化された欧文フォントたちが通う学園へ行く・・・という4コマ漫画です。
ここで「ヘルベチカ」は、そのガイド役に抜擢されています。
(やはりキング)
おわりに
以上が、「Helvetica」にまつわるフォントのはなしでした。
王道で大人気のフォントなだけに、本当にいろんなところに登場します。
人気すぎて「逆にちょっと距離を置こうかな・・・」なんて人も現れるくらいです。これを読んでるデザイナーさんの中にも、なんとなく避けている方がいらっしゃるかもしれません。(私のように)
ですが、やっぱり王道フォント 。
ぜひこの機会に、見直してみてもらえたら幸いです。
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