#07 デザイナー目線で、白印刷のはなし
こんにちは。グラフィックデザイナーの安村シンです。
世の中には、いろんな印刷技術があります。
デザイナーは日夜、その技術を駆使して様々な効果を演出しています。
今回は、その工夫のうちのひとつ、「白印刷」を紹介していきます。
1.下地づくりの白印刷。「白引き」
私たちが生活の中で手にする「デザイン」は、多くが「印刷」されたものです。
印刷は様々な素材に行われ、紙やアルミ、透明プラなど…挙げていけばキリがないほどの種類が存在します。
さて、素材にもともと色がついている場合、色を印刷したらどうなるでしょう。
通常の印刷の場合なら、素材の色との掛け算となり、「より濃く」出てしまいます。
(↑柴犬が素材の色になじみ、沈んでしまいました)
こんな時に活躍するのが「白印刷」です。
あらかじめ白を印刷(白引き)することで、素材の色にひっぱられない下地を作ることができます。
(↑柴犬が綺麗に出てきました。よかった)
下地作りに効果を発揮する白印刷。
他にもまだまだ、いろんな使い道があります。
2.素材を活かす。「オシャレ白」
白印刷の魅力は、下地を作る白引きだけではありません。
もし、下地の色味がある程度濃いものなら、白印刷のみで文字や図形を見せることも可能です。
(↑白印刷に対応するプリンパさんのサンプル。クラフト地が生きる白印刷)
例えばクラフト紙に白で文字を印刷すれば「9割に紙の質感を残す」などといったことも可能です。全面に色を乗せた場合と比べてよりシンプルで飾り気のない、だけどしゃれた見え方が実現できたりします。
白印刷とは離れますが、
クラフト紙といえば以前、ロッテの「THEチョコレート」という商品を見て感心しました。デザインは、全面クラフト紙の質感にカカオのイラストが箔押しされているもの。
よく見てみると、こちらは「普通の紙に、クラフト地を印刷していた」のです。
おそらく、これが全国に流通させる商品だから、耐久性の面の配慮してコート紙をベースにしたようです。
クラフト紙はふつう、表面がコーティングされていないので湿気などにも影響を受けやすく、食品のパッケージとしてはやや弱い素材なのです。
3.中身をみせる技。「窓見せ」
白引きは「窓見せ」という技法にも使われます。
食べ物などを思い浮かべて頂くと想像しやすいのですが、
例えばコンビニでシュークリームやドーナツを買おう!と思ったとき、中身が半分見えてるパッケージを手に取ったことはありませんか?
これこそが、透明素材に白引きの成せる「窓見せ」の技なのです。
(↑よく見かけますね)
これにより、消費者は「事前に中身を知ることができる」ので
安心して商品を購入することができます。
そんなふうに、安心を呼ぶ「白引き」の技。
素材を変えれば、また違った効果が現れます。
4.キラキラ素材への白引き
白引きの身近な例をもうひとつだけ紹介します。
さて、ここにアルミ缶のジュースが2本あります。
(↑お酒です)
左のものは「ゴールド」な見た目をしていて、めちゃめちゃ光を反射します。
(キラキラ)
キラキラしている理由は、「アルミ素材」の上に黄色を刷っているからです。
逆に右の缶は…
(not キラキラ)
こちらは同じアルミ缶なのにキラキラしていません。おそらく「全面に白引き」をしており、あまり光を反射しません。
どちらも素材は同じなのに「印刷の処理により質感が変化する」という、印刷の面白い側面です。
これは紙でも同じで、キラッキラのシールがあるとすれば
台紙がキラキラしていて、だいじな要素には白が引かれていたりします。
(↑以前制作したまるちゃんシールは、イラスト部分に白を引いています)
このように、素材と印刷の掛け合わせにより、いろんな質感をコントロールすること。それが紙や印刷の魔力のうちの、ひとつなのです。
おわりに
白印刷のお話、いかがだったでしょうか。
このような特殊印刷をするとき、デザイナーの頭のなかは
「この素材に、この印刷をしたらこうなるぞ」と妄想を膨らませています。
その時間はとても楽しく、そして無限に広がる世界です。
私たちの身の回りには、見回してみればいろんな「白印刷」が存在しています。
世の中の「デザイン」をみて、「これはどうやって作っているのか?」と考え続けること。これこそが「デザイナー目線」の正体なのかもしれません。
(それっぽくまとめてみました)
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