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#04 現場で覚えた人気フォント10 前編

こんにちは。グラフィックデザイナーの安村シンです。

今日は4月10日、フォントの日!ということで
私がデザイン業界に入ってから現場で覚えた、よく使うなと感じた人気フォント10種類をご紹介します。
この記事は前編ということで、和文フォントの5種類を紹介していきます。
(後編の欧文フォント5種類はコチラ

それではさっそく、王道中の王道から紹介していきます。

1.「A1明朝」

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日本語フォントのなかでも、おそらく圧倒的人気を誇る王道書体です。

「モリサワ 」という超大手フォントメーカーからリリースされ、モリサワ最初期から愛され続けているというロングセラーフォント。

明朝体の中でも特徴的なのは、毛筆の風合いが残る「オールドスタイル」であること。そして何より印刷した時のにじみ(墨だまり)が再現されていることです。
昨今のデジタル時代においても、人の温かみを感じさせることのできる、やさしいフォントです。

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(そんな中にも凛とした印象があり、たいへん美しいですね。)


近年でも使用例は絶えず、大ヒット映画「君の名は。」のタイトルロゴにも使われ、デザインファンの間で話題になりました。

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ちなみに、新海誠監督の最新作『天気の子』でも、タイトルロゴには「A1明朝」が使用されていました。

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そんな大人気のフォントですが、じつはA1明朝には弱点があります。
なんと、太さが1種類しかないのです。

多くのフォントは、フォントファミリーと呼ばれる2〜6段階ほどの太さ違いバージョンが存在するのですが、A1明朝にはファミリーが存在しません。

そのため、現場で使うときには、塗りに加えて「線フチ」を加えることで太らせることが多いです。

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(↑線フチをつければ勝てる!)

このようにして、弱点を補ってまで使いたくなるフォント。
それが「A1明朝」です。


2.「リュウミン」

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リュウミンは、シュッとした印象の明朝体です。
金属活字に由来するシュッとした形状に対して、縦線・横線の先端や、とめの部分(ウロコ)には柔らかさがあるという、絶妙なバランスが特徴です。

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そんなリュウミンは、タイトルロゴでの使用ケースがよく見られます。

特に小説やライトノベルの分野では、一時期は流行りと思えるほど多用されていて、それがドラマ化・映画化などした際にはテレビでもよく見かけました。

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(こんな感じのロゴを見かけたら、リュウミンかもしれません)


またリュウミンはロゴだけでなく、市販書籍の本文書体としても非常によく使用されるフォントです。
本を読むのが好きな方なら、日常的に慣れ親しんでいる書体ということになりますね。

この「リュウミン」は、Adobe Fontsの中にも入っています。ここだと太さは1種類だけですが、小説の本文風のデザインをするときなどにも、役に立ってくれそうです。


3.「A1ゴシック」

こちらは2017年に登場した、比較的新しいフォント
圧倒的人気をほこる「A1明朝」の骨格を参照してつくられました。
A1明朝と同じくすこし墨たまりのあるゴシック体です。

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ゴシック体ならではの安定感のある太さと、墨だまりの優しさで、芯がありつつ丸っこい印象です。

この優しい印象が好印象であることと、LからBまで4種類の太さ(ウエイト)があることも合わり、とても使いやすいフォントです。

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(近年、街中で本当によく見かけます。)

あまりに流行りすぎて、逆に避けてしまうほどの人気フォント。
落ち着いた頃に、また使い始めたいと思います。(謎の宣言)


4.「新ゴ」

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新ゴは、比較的カタめなデザインをする時に重宝するフォントです。
新ゴシック〜といった言葉の略称ではなく、「新ゴ」が正式名称となっています。

こちらは説明書の注意書き、栄養成分表示など、裏面情報などでも非常によく使われます。高い視認性、クセの少なさが、ひっかかりのない情報伝達に向いているのでしょう。
ちなみに、この「新ゴ」で「期 間 限 定」などと入力すれば、割引の王道表現をカンタンに再現することができます。

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(みたことあるやつだ)

また、新ゴよりも視認性を向上させた「UD新ゴ」も同じく人気です。
UDはユニバーサルデザインの略で、濁点などが小さくても読みやすいように調整されています。

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(右のほうが、小さくなっても読みやすいのです)

もし今度ジュースを飲む機会があれば、裏側のちいさい文字を見てみてください。高確率で新ゴと出会えます!


5.「フォーク」


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(食器のほうとは関係ありません。)

これまた、よく見かける書体。商品ロゴなどにもよく使われます。
明朝体よりもキチキチしすぎず、ゴシック体よりもクセを出したい、といった中間の領域にあるデザインをするとき大活躍します。

これはなんとなくですが、
病院・歯科医院・士業の方などの事務所ロゴにもよく使われているイメージがあります。

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(街中でよく見た気がする)

デザインは、おしゃれ、かっこいい、かわいい、きれいだけではありません。
フォークというフォントは、例えるなら
決して高級スーツではないけれど、ビシッと決めたスーツ姿といったイメージ。
多くのビジネスシーンで、ちょうど良いフォーマルさを演出することができます。

ハイブランド向けではあまり見かけませんが、消費者の生活に密着した企業、中小企業などに好まれるフォントではないでしょうか。


おわりに

以上、現場で覚えた5つの和文フォントの紹介でした。

今回紹介した5つのフォントは、形状を覚えれば街中で「フォント探し」が出来るようになるくらい、よく使われているフォントだと思います。

時代により、業界によって、よく使われるフォントは少しずつ異なります。
(「あのフォントはどうした!」「これは紹介しないの?」という声が聞こえてくるようです。)
ですが、今回紹介したフォントたちは、これからも高い頻度で使われ続ける、ということは確信しています。

後編の欧文フォント5種類の紹介記事はコチラです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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