#05 現場で覚えた人気フォント10 後編
こんにちは。グラフィックデザイナーの安村シンです。
今回は、私が現場で覚えた、人気の欧文フォントを紹介をします。
前編では日本語用の「和文フォント」について書きましたので、
今回は欧文フォント編として5つの書体を紹介して行きます。
1.Helvetica
初めは「世界で最も人気のフォント」とまで言われるHelvetica。ヘルベチカと読みます。
ニンテンドーでいえばマリオみたいな、フォント界を代表する存在です。
Helveticaは本当に万能で、スタンダードな形状をしているので
スポーツ系のエネルギッシュなイメージから、
洗練されたスタイリッシュなイメージまで、自由自在です。
陰影のないwebデザイン、いわゆるフラットデザインでもHelveticaの細いウェイトのものが好まれて使われていました。(厳密にはHelvetica Neueという派生フォント)
■ Helveticaは愛されフォント
またHelveticaは、名だたる企業・ブランドにも愛されていて、
TOYOTA、OLYMPUS、FrancFranc...これこそ挙げ始めたらキリがないほどです。
歴史も長く、本当によく見かけるフォントです。
王道すぎてあえて使わない人もいるかもしれません。(私です)
王道を知り、邪道へ走るのもまた一興です。(なんのことやら)
2.FUTURA
Futuraとは、「未来」を意味するラテン語。
文字というよりもはや図形!?というほどに、幾何学的(ジオメトリック)な形状をしているのが特長です。
丸と四角だけで出来ていそうな印象です(言い過ぎ)
(↑フォント名についてる英文には、とくに意味はありません)
このFuturaは、デザイン教育の基礎を作ったと言える「バウハウス」という学校で非常勤講師を務めた「パウル・レナー」によって、1920年代に作られました。
なんと今から100年近く前のフォント!
ルイ・ヴィトン、Supreme(シュプリーム)、フォルクスワーゲンといった先端を行くブランド・企業でも使用され、先ほどのHelveticaに負けず劣らず、こちらも見たことがない人はいないだろうと思われるフォントです。
(↑フォルクスワーゲンのロゴは、先日さらにリニューアルされて話題になりました。ロゴタイプが見当たらないのですが、おそらくFuturaではなさそうです。2020年4月現在)
■ Futuraはハイブランド感
Futuraの力はすごいです。例えばルイヴィトンの例のように、細めのウェイトでスッと一文入れるだけで、手軽にハイブランド感が演出できます。
(↑わぁすごい。服屋なら値札がついてなさそうな感じです)
もちろん、あくまで雰囲気だけなので、中身が伴わないデザインだけの高級感を演出すると逆効果になりますので、使い所には注意が必要です。
また、制作中に「デザインに英文を足してアクセントを加えたい」という時にも活躍しますし、そもそも名前自体を英語に変えて、スタイリッシュな見え方を優先したい!というときにも猛威を奮ってくれます。
この「Futura」については、まだまだ語るべきことがたくさんありますので
後日、より詳しい記事を別途書きたいと思っています。
おそらく日本のデザイナーに人気の欧文フォント、トップ3に入るのではと思っています。
3.Century Gothic
「えっ、Futuraじゃん」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
それもそのはず。Futuraのように図形的なフォントを「ジオメトリック(幾何学的)サンセリフ体」と呼び、Century Gothicもその1つだからです。
いわゆる塩顔男子、醤油顔男子みたいなものです。(ちょっと違う)
(↑見比べても似てます。「The quick〜」はaからzまでを含む、有名な例文)
さて、そんな塩顔フォントなCentury Gothicは、1991年にアメリカのMonotype社からリリースされました。Futuraが1920年代なのを考えると、相当新しいフォントに感じますね。
あえてFuturaとの差を探してみます。
「c」や「j」の形状で比べると分かりやすそうです。
Century Gothicの「c」は、線の進行方向に対して水平に切ったような終わり方ですね。一方でFuturaの「c」は、縦がスパッと切られたような形状をしています。
「j」については下のピョンとした部分がある・ないで分かれます。
そういった意味では、Century Gothicのほうが視認性が高いと言えるでしょう。
また、大文字・小文字のサイズ比にも注目です。
いわゆる「x-height(エックスハイト)」と呼ばれる、小文字「x」の高さを見比べると、Century Gothicはかなり大文字とサイズが近いことが分かります。
これも含めて、小さい文字サイズで表示したときも読みやすい。
そんな「Century Gothic」はMicrosoft Officeをインストールすると一緒に入手できることもあり、手軽さからも広く使われているようです。
Futuraではシュッとしすぎる…といった場面でFuturaの代替として使われるケースも多々あり、なかなかやり手なフォントです。
4.Optima
Optimaは、これまで挙げた3つのフォントとおなじ「サンセリフ体」の1つです。セリフ体(明朝体)のような「うろこ」がない書体のことをサンセリフ体と呼びます。
「うろこ」がない代わりに、このOptimaは独特の「膨らみ」のようなものがあります。
Helveticaと比べてみれば一目瞭然。
全ての線に、太さの強弱がついています。
このようなフォントは珍しく、ほかに似たものがほとんどありません。
化粧品や女性誌、ブランドロゴなどで大変好まれていて、GODIVA、LUMINEなどでも使われているフォントです。
そしてなんと...
ありがたいことに、このOptimaはMacに最初から入っている書体の1つなのです。
こんないい書体が、最初から入ってるなんて!
いい時代です。(ありがたや)
5.Trajan
最後は「Trajan」を紹介します。
発音の都合により、トラジャン、トレイジャン、などと表記されます。
この書体は、これまで紹介したフォントの中でも一番長い歴史を持つ、格調高いフォントです。
その起源は、なんと今から2000年ほど前。
ローマ帝国の皇帝トラヤヌスの記念柱に使われたのが始まりです。
(↑画像はwikipediaのパブリックドメインより)
そんな果てしない歴史をもつ「Trajan」ですが、
現代でも映画のポスターでめちゃめちゃ使われています。
「タイタニック」「THIS IS IT」「ロード・オブ・ザ・リング」…
挙げ始めたらキリがありませんね。
もちろん、なんちゃって映画ポスターを作るときにも便利です。
伝統を演出する必要があるケースでは、非常に強いフォントだと感じています。
文字自体にパワーがありすぎるので、逆にうかつに使うことも出来ないのですが。
生活の中でも、海外の映画を見ようかな〜と思ったときなど、ぜひ英字タイトルを見てみてください。ひょっとしたら「Trajan」が使われているかもしれません。
おわりに
いかがでしたか?
見覚えのあるフォントがほとんどだったかもしれませんし、見たことあるけど意識したことはない、というものも多かったかもしれません。
「この世の全てのデザインは、誰かが作っている」ということが
改めて実感できるような、つよつよフォント達の紹介でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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