見出し画像

#06 デザイナー目線で、紙のはなし。

こんにちは。グラフィックデザイナーの安村シンです。
今日のテーマは「デザイナー目線での紙のはなし」です。

普通なら「紙のことは紙屋へ、印刷のことは印刷屋へ」と言いたいところですが、専門家が教えたいことと、デザイナーが知りたいことは、少しずつ違うようにも感じました。

デザイナー目線で紙の世界をみれば、また違った景色が見られるかもしれません。


1.デザインは刷るか、刷らないか

グラフィックデザインには、大きく分けて2つのアウトプット先があります。
データのまま使うか、印刷されるかです。

データのままとは、WEBで表示されたり、TVやサイネージで表示されたりするデザインのことです。

一方で印刷される場合。
紙やアルミ、布、壁、立体…ありとあらゆる素材に対して印刷された最終系も含めて「デザイン」することとなります。

スクリーンショット 2020-04-12 15.40.23

印刷をする場合、素材と印刷の影響を大きく受けて、データの時とはの見え方がガラリと変わります。

素材(例えば紙)の特性を知り、印刷の特性を知ることで
最終系の仕上がりにまで責任を持つ。それがグラフィックデザイナーの仕事です。


2.素材の特性を考えよう

今回はタイトルの通り、紙に印刷する場合を考えます。
デザインをする際、まずは素材の特性について確認します。

■コートかマットか、それ以外か。

スクリーンショット 2020-04-12 13.11.30

私がまず考えるのは、「コートかマットか、それ以外か?」です。
紙の種類はあまりにも多すぎるので、まずはザックリ方向性を決めてから、具体的な紙選びへと向かうのがよいと考えています。

コート紙は、表面が薬品でコーティングされている、光沢の強い紙です。雑誌の中ページなどがイメージしやすいかなと思います。写真を派手に見せたい、色を鮮やかにしたい!という場合はコート紙を選びます。

対してマットコート紙は、薬品のコーティング具合が違うらしく、光沢が抑えられています。あまり派手でない、しっとりした、マットな風合いを目指したいときはマットコート紙を選びます。

それ以外のときは、上記2種では普通すぎるな、と思ったときに検討します。
紙の予算が大きく変わったり、耐久性が変わってきたり。また印刷所で対応していない紙もあったりなど、条件が大きく変動します。

さまざまな条件をクリアした上で、デザインテーマごとに最適なものを選びます。
(そう。「その他」の紙を選び始めると、いきなり大変になるのです。)


■紙サンプルを持つべし

デザイナーが紙にこだわるには、まず紙サンプルを入手する必要があります。

私は学生時代から竹尾さんの紙ショップによく足を運んでいて、いろんな紙を買ってはキンコーズで印刷して、実験をしていました。
フリーになってからは、竹尾さんの紙サンプル帳を購入し、事務所に置いていつでも見られるようにしています。

画像1

ミニサンプルは、1冊あたり200円〜1,000円程度、全部セットで19,140円(2020年4月現在)と、たいへんお値段が張ります。
(実はまだ半分程度しか買い揃えていません)

また平和紙業株式会社さんの紙サンプルも、ご縁があって頂くことができ、大変助かっております。(本当にありがとうございます。)

画像2

これらは紙屋さんから出ている完全に業務用の紙サンプルなので、多くの場合にはここまでは不要です。

いまはネット印刷が数多く存在しており、それぞれの業者さんでもオリジナルの紙サンプルを作られていて、多くが無料で資料請求をすることができます。

なかでもグラフィック社さんなどは、デザイン学生の頃からお世話になっています。紙の取り扱い種類がネット印刷の中で比較的多く、価格も手の届く範囲なので、紙や印刷ビギナーの方には特におすすめです。

サンプルの中には、前述の竹尾さんや平和紙業さんの紙もいくつか入っています。人気のアラベール、ヴァンヌーボ、Mr.B…などの高級紙から、和紙やトレペ、その他特殊紙など様々。

ここからジワジワと知識を広げていく、という方法で紙の知識を増やしていくのもひとつの手です。


3.紙を見極めるトラップ。「加工」もあるよ

冒頭で、マット紙とコート紙の話をしました。

ですが、じつはこれに加えて「ニス加工」「PP加工」などといったトラップがいくつも存在します。

そのトラップにより、例えば「表面が光沢抑えられてる=これはマット紙だ!」という図式が成立せず、実は「コート紙にマットPP加工したもの」だったりするのです。

スクリーンショット 2020-04-12 16.10.22

(頭がこんがらがってきますね。)

だんだん複雑になってきました。
そう、紙ソムリエへの道は、途方もなく遠いのです・・・。

4.おわりに

紙を扱うデザイナーは、大変です。

ですが、1つ1つの印刷の体験、経験値があわさって
「これだ」と思えるものが仕上がった時の喜びもひとしおです。
現物を見たときの感動は、それはもう大きなものとなります。

そんな気持ちで、ぜひ印刷物を見てみてください。
すこし違って見えるかもしれません。


今後は「白印刷や箔押し」など、
ワクワクする特殊印刷を紹介する予定です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

サポート頂いた分は、ビール代として、ひとり打ち上げに有効活用させて頂きます。 がんばれます。ありがとうございます!