Issue #06 | 奨学金制度
地域・社会の課題を考える「Issue」。
今回のテーマは、「奨学金制度」です。
およそ2人に1人の学生が利用している日本学生支援機構の奨学金。
奨学金制度の成り立ちや実態、制度の課題についてリディラバジャーナルの特集記事から考えてみました。
☑︎奨学金制度の成り立ち
国として奨学金制度がスタートしたのは1943年。戦時中のことでした。
この時の背景にあったのは、戦死者増により顕在化した戦争遺児の問題。戦意高揚の観点もあり戦争遺児が経済的困難を抱え高等教育を受けられないという事態はよろしくないというのが誕生の理由といいます。
その後、1990年代に入ると公立・私立大学が増加。それに伴い大学進学者数も増加するなか奨学金に対する需要が高まり、成績・収入条件が緩和され、事実上、誰でも借りることが可能な奨学金制度がスタート。現在に至ります。
☑︎奨学金制度の課題
時代の要請を受け制度変更と拡大を続けてきた奨学金制度ですが、1990年代中頃〜2000年代初頭にかけての就職氷河期で非正規雇用が急増。“奨学金を返したくても返せない”という問題が出てきます。
バブル崩壊からの失われた20年。一世帯あたりの平均年収は1994年のピーク(664.2万円)から減少をたどり直近の2018年で552.3万円と約110万円下落。一方の学費は、国公立大学・私立大学ともに1.3倍強増加。と親が子の学費を負担することが一層困難になってきています。(家族負担主義(家族責任主義)の限界。)
こうした時代の流れにより一層、奨学金に頼らざるを得ない構図となってきたものの、先述のような経済状況下、高等教育を受ければ確実に職を収入を得られるということはなく、“奨学金を返したくても返せない”という問題が一層、深刻化しているわけです。
【所見 -あり方を考える-】
貧困の連鎖への対応策として、政府は2018年より低所得世帯を対象に給付型奨学金制度をスタート。“奨学金を返したくても返せない”という問題への対応を進めています。
家族負担主義(家族責任主義)の限界がいわれる中、世帯の所得を基準に考えられる施策。奨学金という借金を背負うのは親ではなく子であることを考えるとこの対策の方向性には疑問を抱きます。(子の将来の経済状況は親の経済状況では窺えないのではないか。)
大学を卒業しても、不安定な経済状況下、安定した収入を得られる保証はありません。借金を背負うマイナスからのスタート。毎月の返済金額は平均16,880円、返済期間は平均14.7年。22歳で大学を卒業して借金を完済するのが40歳弱。結婚・出産がリスクと見られてしまう実態が潜んでいるのが実態なわけです。
その一方、可能性を感じる国立教育政策研究所の試算が。
「便益―費用=3,546,944円」と公的投資以上に公財政に貢献があるのだと。
大学生の授業料総額は消費税1%の税収規模とほぼ同額であるといいます。
これからの日本経済を担う若者たちを社会が支える高等教育無償化は社会的インパクトあるアプローチと考えます。
(国まかせにするのではなく地方自治体単位での奨学金制度や地元大学や他地域大学研究室の誘致と地域課題解決に向けた共創を通じたソーシャルインパクトボンド(SIB)のような仕組みも大いに検討の余地があるように感じています。)
―地域・社会が、暖かく子どもたちを育むことができる社会の実現を―
<参考文献>
▷リディラバジャーナル
・intro【奨学金制度】返せないのは自己責任ですか?
https://journal.ridilover.jp/topics/41
・no.1奨学金問題とは何なのか?
https://journal.ridilover.jp/issues/237?journal_user=journal_user_7243&journal_token=20220826152050Kg8BwXEYktPW6chn1U
・no.7 給付型奨学金制度創設はハッピーエンドか?
https://journal.ridilover.jp/issues/243?journal_user=journal_user_7243&journal_token=20220826154833xfc3p75Fb8rgjdnemo
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